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第二十九章 導きの先

白い少女の夢を見た翌日。


ユウトたちは再び旅を続けていた。


目的地はない。


正確には、


どこへ向かえばいいのか誰も分からない。


 


「それで本当に大丈夫なの?」


 


ニャオミーが呆れたように聞く。


 


「分からん」


 


ユウトは即答した。


 


「分からんけど、何となくこっちな気がする」


 


「雑!」


 


「でも夢の中でそんな感じだった」


 


「もっと情報なかったの!?」


 


なかった。


 


白い。


 


少女。


 


来て。


 


以上。


 


コハクが苦笑する。


 


「よくそれで旅に出ようと思ったわね」


 


「何とかなる」


 


「根拠は?」


 


「何とかならなかったことあったか?」


 


「いっぱいあるわ」


 


即答された。


 


ユウトは少し考えた。


 


確かにあった。


 


牢屋とか。


 


猫又王国とか。


 


牢屋とか。


 


「あるな」


 


「あるわね」


 


ニャオミーも頷いた。


 


「ごめんって……」


 


まだ引きずっていた。


 


そんなやり取りをしながら街道を進む。


 


昼過ぎ。


 


ルゥがふと足を止めた。


 


「……妙じゃな」


 


全員が立ち止まる。


 


ルゥは森の奥を見ていた。


 


「どうした?」


 


「気配がする」


 


「妖魔?」


 


「違う」


 


ルゥが目を細める。


 


「懐かしい気配じゃ」


 


その言葉にコハクも耳を動かした。


 


「確かに」


 


「何かある」


 


ユウトたちは顔を見合わせる。


 


そして。


 


気配を辿るように森へ入った。


 


木々を抜ける。


 


獣道を進む。


 


さらに奥へ。


 


すると。


 


突然視界が開けた。


 


「おお……」


 


ユウトが思わず声を漏らす。


 


そこには古びた神社があった。


 


崩れた鳥居。


 


苔むした石段。


 


風雨に晒され続けた社。


 


誰も住んでいない。


 


誰も管理していない。


 


それなのに。


 


不思議な存在感だけがあった。


 


まるで。


 


ずっと誰かを待っていたような。


 


「神社……?」


 


ニャオミーが呟く。


 


ルゥは静かに頷いた。


 


「かなり古い」


 


「龍神の里より昔かもしれぬ」


 


「そんなに?」


 


ユウトが驚く。


 


コハクも辺りを見回した。


 


「でも変ね」


 


「何が?」


 


「ここだけ綺麗」


 


言われてみればそうだった。


 


周囲の森は荒れている。


 


だが。


 


神社の敷地だけ妙に整っている。


 


雑草も少ない。


 


石段も崩れていない。


 


誰かが手入れしているようにも見えた。


 


その時だった。


 


たぬぷぅが社の前で立ち止まる。


 


「ん」


 


「どうした?」


 


「こっち」


 


珍しく真面目な顔だった。


 


たぬぷぅは社の裏へ歩いていく。


 


全員が後を追う。


 


そして。


 


社の裏側で。


 


ユウトは足を止めた。


 


「……え?」


 


地面に大きな亀裂が走っていた。


 


自然にできた穴ではない。


 


まるで。


 


地下へ続く階段が露出したような形。


 


暗闇が下へ続いている。


 


奥が見えない。


 


冷たい風だけが吹き上がってくる。


 


ニャオミーが顔を引きつらせた。


 


「帰らない?」


 


「なんで?」


 


「絶対ヤバいから」


 


「分かる」


 


「じゃあ帰ろう」


 


「でも行く」


 


「なんでよ!」


 


ユウトは暗闇を見る。


 


胸の奥がざわついていた。


 


夢を見た時と同じ感覚。


 


呼ばれている。


 


そんな気がした。


 


ルゥも静かに階段を見下ろしていた。


 


「……なるほど」


 


「どうした?」


 


ルゥは小さく笑う。


 


そして。


 


地下の闇を見つめたまま言った。


 


「どうやら当たりを引いたらしい」


 


その言葉と共に。


 


冷たい風が再び吹き上がる。


 


闇の奥で。


 


何かが待っているようだった。

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