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第二十五章 最後の問い

妖魔討伐から数時間後。


猫又王国は慌ただしく動いていた。


負傷者の治療。


建物の修復。


避難した住民たちの誘導。


城の中も騒がしい。


だが。


一番忙しかったのはユウトだった。


「次の人!」


「はい!」


回復魔法が光る。


兵士の傷が塞がる。


歓声が上がる。


また次。


また次。


また次。


「待って」


ユウトが手を上げた。


「ちょっと休ませて」


「頑張れ」


ルゥが即答した。


「鬼か」


「龍じゃ」


「似たようなもんだろ」


コハクが吹き出した。


たぬぷぅは横でお菓子を食べている。


いつも通りだった。


 


その時だった。


 


「ユウト殿」


 


聞き慣れた声がする。


 


振り返る。


 


クグだった。


 


鎧は外している。


 


だが傷はどこにも残っていない。


 


クグは少し不思議そうな顔で自分の腕を見る。


 


「未だに信じられません」


 


「何が?」


 


「本当に治っている」


 


ユウトが笑う。


 


「治したからな」


 


「それが信じられないのです」


 


真顔だった。


 


クグはしばらく黙ったあと。


 


ゆっくり頭を下げた。


 


「改めて」


 


「ありがとうございました」


 


今度は誰も茶化さなかった。


 


クグは本気だった。


 


もしあの時。


 


ユウトがいなければ。


 


自分は死んでいたかもしれない。


 


それくらいの傷だった。


 


ユウトは頭をかく。


 


「だから」


 


「困った時はお互い様だろ」


 


クグが少し笑う。


 


「そうですね」


 


その時だった。


 


部屋の扉が開く。


 


入ってきた兵士が深々と頭を下げた。


 


「ユウト様」


 


「はい?」


 


「陛下がお呼びです」


 


嫌な予感がした。


 


ものすごく嫌な予感がした。


 


「俺だけ?」


 


「はい」


 


「帰っていい?」


 


「駄目です」


 


即答だった。


 


逃げ道はなかった。


 


数分後。


 


王城の応接室。


 


ユウトは緊張しながら座っていた。


 


目の前には王。


 


隣にはクグ。


 


さらにニャオミー。


 


完全に身内会議だった。


 


「なんで俺ここいるの?」


 


やがて王が真面目な顔になる。


 


「ユウト」


 


「はい」


 


「お前は何者だ」


 


部屋が静まり返る。


 


ユウトは瞬きをした。


 


「旅人」


 


「違う」


 


即否定された。


 


「えぇ……」


 


王は腕を組む。


 


「上位種に重傷を負わされた者を一瞬で治した」


 


「そんな治癒術師は聞いたことがない」


 


クグも頷く。


 


「私も知りません」


 


ニャオミーも頷く。


 


「私も知らない」


 


全員に見られる。


 


ユウトは困った。


 


「いや」


 


「俺もよく知らない」


 


本音だった。


 


気付いたら使えた。


 


気付いたら旅していた。


 


気付いたら牢屋に入っていた。


 


最後だけおかしい気がした。


 


王がため息を吐く。


 


「変な男だな」


 


「よく言われます」


 


その時だった。


 


クグが静かに口を開く。


 


「ですが」


 


全員が見る。


 


クグは真っ直ぐ王を見た。


 


「私は認めます」


 


王の眉が動く。


 


クグは続けた。


 


「彼は信頼できます」


 


ユウトが目を丸くした。


 


「クグ?」


 


「少なくとも」


 


クグは小さく笑う。


 


「婚約者候補ではありませんし」


 


沈黙。


 


そして。


 


「だから違うって言ってるだろ!!」


 


ユウトの叫びが響いた。


 


ニャオミーが吹き出す。


 


クグも笑う。


 


王まで少し口元を緩めた。


 


そして。


 


王は娘へ視線を向ける。


 


「では聞こう」


 


ニャオミーの表情が変わる。


 


王の目は真剣だった。


 


「ルミナリア」


 


本名で呼ばれる。


 


「お前はどうしたい」


 


部屋が静まり返った。


 


それは。


 


ずっと避け続けていた問いだった。


 


ニャオミーはゆっくり拳を握る。


 


そして。


 


静かに顔を上げた。


 


ようやく。


 


本当の話をする時が来たのだった。

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