第二十四章 共闘
大型妖魔が咆哮した。
空気が震える。
兵士たちが思わず後ずさる。
上位種。
それもかなり強い個体だった。
クグが剣を構える。
その隣にユウトが立つ。
「回復は任せろ」
「お願いします」
短いやり取りだった。
だが。
それだけで十分だった。
妖魔が跳ぶ。
速い。
先ほどクグを吹き飛ばした突進だ。
しかし。
今度は違った。
クグが踏み込む。
銀色の剣が閃く。
ガギィン!!
鋭い音が響いた。
妖魔の爪を受け流す。
そのまま横へ流れるように回り込む。
斬撃。
妖魔の肩が裂ける。
だが浅い。
外殻が硬い。
「硬っ!」
クグが舌打ちする。
妖魔が尻尾を振るう。
建物ごと吹き飛ばしそうな一撃。
クグは飛び退く。
だが。
避け切れない。
掠った。
腕から血が流れる。
その瞬間。
白い光が包み込んだ。
傷が消える。
クグが目を見開く。
「もう治った!?」
ユウトが親指を立てる。
「遠慮なく行け!」
「無茶苦茶ですね!」
言いながら。
クグは笑っていた。
こんな回復術師は初めてだった。
普通なら。
傷を恐れる。
体力を温存する。
だが。
後ろにユウトがいる。
それだけで。
思い切り戦える。
クグは再び踏み込んだ。
斬る。
斬る。
斬る。
妖魔の外殻が少しずつ砕けていく。
だが。
妖魔もただでは終わらない。
怒り狂ったように咆哮する。
妖気が膨れ上がる。
兵士たちの顔色が変わった。
「まずい!」
「来るぞ!」
次の瞬間。
妖魔の身体から黒い衝撃波が放たれた。
ドォォォン!!
周囲が吹き飛ぶ。
兵士たちが転がる。
建物の壁が砕ける。
クグも弾き飛ばされた。
「クグ!」
ニャオミーの叫び声が響く。
クグは受け身を取る。
だが。
今度は妖魔が追撃してきた。
巨大な爪が迫る。
速い。
避けられない。
その時だった。
目の前へ炎が走る。
轟音。
妖魔が弾き飛ばされた。
「何っ!?」
そこへルゥが降り立つ。
髪がふわりと揺れる。
「一人で格好つけるでない」
ルゥが笑う。
反対側からコハクも飛び込んだ。
「私たちもいるわよ」
風が吹く。
妖魔の身体が大きくよろめく。
ユウトが笑った。
「総力戦だ!」
妖魔が怒り狂う。
しかし。
今度は一人ではない。
クグ。
ルゥ。
コハク。
ユウト。
そして。
槍を持ったニャオミー。
「私も戦う!」
クグが目を丸くする。
「ルミナリア!?」
「今はニャオミー!」
槍を構える。
瞳は真剣だった。
妖魔が飛びかかる。
その瞬間。
クグが叫んだ。
「今です!!」
全員が動く。
ルゥの炎が妖魔を焼く。
コハクの術が動きを止める。
ニャオミーの槍が外殻を砕く。
クグが踏み込む。
そして。
ユウトの回復魔法が仲間たちを支えていた。
力が重なる。
妖魔の外殻が砕ける。
大きな隙が生まれた。
クグが踏み込む。
全力だった。
これで終わらせる。
剣へ魔力が集まる。
銀色の光が走る。
「はあああああああああ!!」
一閃。
巨大な斬撃が妖魔を貫いた。
静寂。
そして。
ズンッ。
妖魔がゆっくり崩れ落ちる。
完全な決着だった。
数秒の沈黙。
やがて。
大歓声が上がった。
「勝った!!」
「クグ様だ!!」
「助かった!!」
兵士たちが叫ぶ。
住民たちが涙を流す。
クグは大きく息を吐いた。
そして。
振り返る。
視線の先にはユウト。
クグはゆっくり頭を下げた。
「ありがとうございました」
今度は。
心からだった。
ユウトは少し照れ臭そうに頭をかく。
「おう」
「困った時はお互い様だろ」
クグの目が少しだけ見開かれる。
その言葉を聞いていた王もまた。
静かにユウトを見つめていた。
治癒魔法。
勇気。
そして人を助けようとする心。
王の中で。
何かが少しずつ変わり始めていた。




