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第二十三章 守る者

ガン!!


ガン!!


ガン!!


警鐘が城中へ響き渡る。


地下牢の空気が張り詰めた。


クグが顔を上げる。


「妖魔……」


次の瞬間。


外から兵士が駆け込んできた。


「クグ様!!」


息を切らしている。


「西門が突破されました!」


「数は!?」


「確認できているだけで二十以上!」


クグの表情が険しくなる。


ただ事ではなかった。


猫又王国ほどの大国で、西門が破られるなど滅多にない。


兵士はさらに叫ぶ。


「避難が間に合っていません!」


クグは即座に踵を返した。


迷いはなかった。


「私は現場へ向かいます」


そう言って走り出す。


だが。


数歩進んだところで立ち止まった。


振り返る。


牢の中のユウトを見る。


一瞬だけ迷うような顔。


そして。


小さく頭を下げた。


「申し訳ありません」


「え?」


「戻ったら出します」


そう言い残して駆けていった。


「いや今出せよ!!」


叫びは届かなかった。


 


城の外。


西門。


炎が上がっていた。


妖魔たちが暴れている。


狼型。


猿型。


巨大な甲殻を持つ妖魔。


兵士たちが応戦しているが押されていた。


悲鳴と怒号が飛び交い、土煙が空を覆う。


まるで戦場だった。


クグは城壁から飛び降りる。


着地と同時に剣を抜く。


銀色の刃が輝いた。


「退いてください!」


兵士たちが振り向く。


「クグ様!」


妖魔が襲い掛かる。


巨大な爪。


鋭い牙。


だが。


次の瞬間。


斬撃が走った。


ズバンッ!!


妖魔が吹き飛ぶ。


兵士たちが息を呑んだ。


速い。


圧倒的だった。


二体。


三体。


四体。


次々と妖魔が倒れていく。


まるで舞うような剣技だった。


その姿に民衆から歓声が上がる。


「クグ様だ!」


「クグ様が来たぞ!」


「勝てる!」


英雄だった。


皆がそう信じていた。


その時だった。


ドォォォン!!


地面が大きく揺れる。


巨大な影が現れた。


兵士たちの顔色が変わる。


通常種ではない。


大型妖魔だった。


三メートルを超える巨体。


黒い外殻。


赤い瞳。


そして異様な妖気。


「上位種……!?」


クグも表情を変える。


まずい。


その妖気に触れた瞬間、本能が警鐘を鳴らした。


これまで相手にしてきた妖魔とは格が違う。


周囲の兵士たちも思わず後ずさりし、歓声に包まれていた空気が一転して凍り付く。


しかし相手は、そのわずかな動揺すら待ってはくれなかった。


大型妖魔が地面を砕きながら跳躍する。


巨体に似合わぬ速度だった。


視界から消えたと思った次の瞬間には、すでに目の前まで迫っている。


クグは咄嗟に剣を構えた。


受けるしかない。


そう判断した直後――。


バキッ!!


凄まじい衝撃が腕を貫いた。


剣越しに伝わった力は受け流せるものではなく、身体ごと吹き飛ばされる。


城壁へ叩き付けられ、石材が砕け散った。


「クグ様!!」


悲鳴が上がる。


立ち上がる。


だが遅い。


妖魔が再び迫る。


鋭い爪が振り下ろされた。


避けきれない。


ズガァァン!!


土煙が舞う。


兵士たちが絶望する。


誰もが終わったと思った。


だが。


煙の中から人影が現れる。


クグだった。


生きている。


だが。


肩から胸にかけて大きく裂けていた。


血が流れている。


明らかな重傷だった。


それでも。


クグは剣を構える。


膝を震わせながら。


立ち続ける。


「まだ……です」


後ろには避難が終わっていない人々がいる。


誰かを守るために。


だから。


倒れるわけにはいかなかった。


だが。


身体は限界だった。


視界が揺れる。


妖魔が迫る。


兵士たちが叫ぶ。


間に合わない。


誰もがそう思った。


その瞬間。


眩い光が走る。


白い光。


温かな光。


優しい光。


クグの身体を包み込む。


「……え?」


傷が塞がっていく。


裂けた肉が戻る。


流れていた血が止まる。


痛みが消える。


信じられない速度だった。


クグが振り返るとそこには


息を切らしたユウトがいた。


「間に合った……」


ルゥ。


コハク。


たぬぷぅ。


「どうやって出てきた!?」


「鍵開いてた」


「管理ガバガバか!!」


ルゥが呆れたように言う。


「そんなことより戦え」


「そうだった!」


妖魔が咆哮する。


再び襲い掛かる。


だが。


今度のクグは違った。


身体は万全。


剣を握る手にも力が戻っている。


クグは驚いた顔で自分の身体を見る。


そして。


ユウトを見る。


「あなたが……」


ユウトは笑った。


「ほら」


「続きやれよ。お前が1番強いだろ?」


その言葉に。


クグは小さく笑った。


そして剣を構える。


瞳に再び闘志が宿る。


「ありがとうございます」


次の瞬間。


銀色の閃光が駆けた。


猫又王国を守る戦いは。


まだ終わっていなかった。

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