第十五章 ニャオミー先生の旅講座?
王都を出て半日。
街道は緩やかな丘を越え、森沿いの道へ続いていた。
空は青い。
風も気持ちいい。
そして。
「おなかすいた」
たぬぷぅが言った。
「早いな!?」
ユウトが突っ込む。
「朝食べただろ!」
「三時間前」
「十分最近だわ!」
するとニャオミーが笑った。
「じゃあ少し休憩しようか」
「さんせい」
たぬぷぅが即答する。
⸻
街道脇の木陰。
五人は腰を下ろした。
たぬぷぅは早速おやつ袋を広げ始める。
「待て」
ニャオミーが止めた。
「旅では一度に食べちゃダメ」
「なんで?」
「後で困るから」
たぬぷぅが固まる。
重大案件だった。
「旅はね」
ニャオミーが説明する。
「次の町まで何日かかるか計算して食べ物を使うの」
ユウトが頷く。
「あと水も大事」
ニャオミーは近くの小川を見る。
「飲み水は常に確保しておくこと」
「ほう」
「野営するなら風下は避けること」
「へぇ」
「あと荷物は重いものを下へ――」
そこまで言って。
ニャオミーがぴたりと止まった。
「あ」
しまった。
そんな顔だった。
コハクがじっと見る。
「……妙に詳しいわね」
「そ、そう?」
「普通の旅人より詳しい気がするけど」
「き、気のせいだよ!」
露骨だった。
ものすごく露骨だった。
⸻
ルゥが腕を組む。
「確かに詳しいのう」
「だよな」
ユウトも頷く。
「教官みたいだった」
「き、気のせいだって!」
ニャオミーは慌てる。
耳がぴこぴこ動いていた。
怪しい。
ものすごく怪しい。
⸻
その時だった。
ぐぅぅぅぅ。
静かな街道に音が響く。
全員が振り向いた。
音の主は。
ニャオミーだった。
「……」
「……」
数秒の沈黙。
ニャオミーの顔が赤くなる。
「わ、忘れて!」
「お前もか」
ユウトが笑う。
「たぬぷぅのおやつ管理してる場合じゃないじゃん」
「うぅ……」
ニャオミーは耳まで真っ赤になった。
⸻
やがて休憩を終え、
五人は再び街道を歩き始める。
その途中。
遠くに小さな村が見えてきた。
煙が上がっている。
畑もある。
普通の村だ。
……そう見えた。
だが。
「ん?」
コハクが足を止める。
金色の瞳が細くなる。
「どうした?」
ユウトが尋ねる。
コハクは村を見つめたまま答えた。
「……静かね」
風が吹く。
村からは人の声が聞こえない。
家畜の鳴き声も。
子供たちの笑い声も。
何も。
「確かに……」
ルゥも眉をひそめた。
嫌な予感だけが、
静かに胸の奥へ広がっていく。
五人は顔を見合わせた。
そして。
村へ向かって歩き出した。




