表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
18/106

第十四章 黒霞街道へ

朝。


王都の東門は今日も賑わっていた。


巨大な狸の妖怪が荷車を引き、


商人たちが元気な声を張り上げる。


河童の魚屋。


天狗の飛脚。


行き交う妖たちを横目に、


ユウトは大きく伸びをした。


「よし!」


「ついに初遠征だな!」


「遠征というほど大層なものでもないじゃろ」


隣でルゥが欠伸をした。


「王都から村まで二日じゃぞ」


「十分遠いだろ」


「我からすると庭じゃ」


龍神基準はよく分からない。


その横では。


たぬぷぅが大きな荷袋を背負っていた。


よく見ると半分以上がお菓子である。


「なんだその荷物」


「おやつ」


「多い」


コハクが苦笑する。


「旅はおやつが大事」


「そうね」


「肯定するな!?」


ユウトが即座に突っ込む。


そんなやり取りを見ながら、

ニャオミーがくすりと笑う。


「ふふっ」


最初に会った頃より、

ずっと自然な笑顔だった。


フードの奥から覗く猫耳も、

今日は少し機嫌が良さそうだ。


「どうした?」


「ううん」


ニャオミーは首を振る。


「こういうの、ちょっと楽しいなって」


「旅が?」


「うん」


どこか嬉しそうだった。


コハクが腕を組む。


「じゃあ案内よろしく」


「まかせて!」


即答だった。


「黒霞街道なら何回も通ったことあるし!」


「へぇ」


ユウトが感心する。


「旅慣れてるんだな」


「あっ」


ニャオミーが固まる。


しまった。


そんな顔だった。


コハクの目が細くなった。


「妙に詳しいわよね」


「そ、そう?」


「初めて会った時から思ってたけど」


「き、気のせいだよ!」


露骨に目を逸らす。


怪しい。


めちゃくちゃ怪しい。


ルゥがぼそりと呟く。


「怪しいのう」


「怪しいわね」


「怪しいな」


「怪しくない!」


全員一致だった。



こうして。


五人の旅が始まった。


王都を出ると景色は大きく変わる。


石畳は土の街道へ変わり、

遠くには青い山々が連なっていた。


風が気持ちいい。


空も広い。


ユウトは少しだけ胸が高鳴る。


異世界へ来てから色々あった。


妖魔に襲われ。


龍神と出会い。


九尾と知り合い。


まめたぬきを拾い。


猫又が仲間になった。


正直。


今でも意味が分からない。


でも。


悪くない。


むしろ楽しい。


そう思い始めていた。


その時だった。


「助けてくれぇぇぇぇ!!」


遠くから悲鳴が聞こえた。


全員が振り向く。


街道の先。


荷車が止まっていた。


そして。


その周囲を黒い妖魔たちが取り囲んでいる。


「妖魔!?」


ユウトが叫ぶ。


コハクは即座に剣へ手を伸ばした。


「行くわよ!」


ニャオミーは槍を構える。


ルゥの表情からも笑みが消えた。


赤紫の瞳が細くなる。


「……妖魔が街道にまで出ておるのか」


その声は低い。


いつもの気の抜けたものではなかった。


「放ってはおけぬな」



五人は一斉に駆け出した。


妖魔たちは三体。


だが今の彼らなら苦戦する相手ではない。


ニャオミーの槍が風を切る。


「せいっ!」


鋭い一撃が妖魔を吹き飛ばす。


「おおっ!」


ユウトが思わず声を上げる。


「やっぱ強ぇな!」


「えへへ」


褒められて少し照れている。


その横では。


ルゥの紫炎が妖魔を包み込み、


コハクの剣が正確に急所を貫いた。


最後の一体は。


「癒しの手!」


ユウトの光に怯んだところを、


たぬぷぅが木の枝で叩いた。


ぽこん。


妖魔が倒れた。


「今の必要だった!?」


「参加した」


満足そうだった。



戦いが終わる。


商人の男は何度も頭を下げた。


「助かった……本当に助かったよ……」


「最近多いのか?」


ユウトが尋ねる。


すると商人の顔が曇った。


「ああ」


周囲を見回しながら声を潜める。


「最近おかしいんだ」


「おかしい?」


「昔はこんな場所まで妖魔は来なかった」


商人は不安そうに続けた。


「今じゃ街道にも出る」


「村も襲われる」


「まるで何かに追い立てられてるみたいにな……」


風が吹く。


誰も喋らなかった。


コハクの表情が少し険しくなる。


ルゥも静かに空を見上げていた。


白霧山だけじゃない。


異変は確実に広がっている。


その事実だけが、

胸の奥に重く残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ