第十三章 はじめての5人討伐
「つまり」
コハクが腕を組む。
「黒霞街道へ行くためのお金が足りない」
「またお金か……」
ユウトは机へ突っ伏した。
朝。
占い屋の食卓である。
黒霞街道へ向かう。
それは決まった。
白い少女の手掛かりも見つかった。
だが。
旅には金がいる。
食料もいる。
道具もいる。
「それに」
コハクは真顔で言う。
「今のお金じゃ途中で干からびる」
「言い方」
「事実よ」
反論できなかった。
◇
その日。
一同は組合へ来ていた。
依頼掲示板を見上げる。
【薬草採取】
【妖魔討伐】
【荷運び】
【月灯茸採集】
「月灯茸?」
ユウトが首を傾げる。
「夜になると光る茸じゃ」
ルゥが説明した。
「高級食材でもある」
「食べ物!」
たぬぷぅの耳がぴくっと動いた。
「お前絶対そこだけ聞いただろ」
「……食べたい」
「正直だな」
コハクが依頼書を見る。
「採集依頼にしては報酬も悪くない」
「じゃあこれにするか」
こうして。
五人で初めての依頼へ向かうことになった。
◇
目的地は町外れの森だった。
木々の間を歩きながら、ユウトはふと周囲を見回す。
「なんかパーティっぽくなったな」
少し前まで二人だった。
今は五人いる。
ルゥ。
コハク。
たぬぷぅ。
ニャオミー。
そして自分。
「戦力的にはまだ不安だけどね」
コハクが言う。
「うっ」
「回復役しかできない人がいるし」
「ぐっ」
「何も持ってない人がいるし」
「……」
たぬぷぅが目を逸らした。
「おぬしら弱いのう」
ルゥが笑う。
「お前は強すぎるんだよ!」
◇
しばらく進むと。
森の奥で青白い光が見えた。
「あれか」
近づく。
そこには茸が生えていた。
傘の部分が淡く発光している。
「綺麗……」
ニャオミーが目を丸くした。
「これが月灯茸じゃ」
ルゥが得意げに言う。
「へぇ」
ユウトも少し感動する。
異世界っぽい。
かなり。
◇
しかし。
ガサッ。
茂みが揺れた。
「っ!」
コハクが即座に剣へ手をかける。
次の瞬間。
飛び出してきたのは猪みたいな妖魔だった。
「ギャアアア!!」
「出たぁ!?」
ユウトが叫ぶ。
「採集依頼なのに!?」
「街の外だから当たり前でしょ!」
コハクが斬り込む。
同時に。
シュッ!
銀色の槍が走った。
ニャオミーだった。
軽やかに踏み込み。
妖魔の脇腹を正確に突く。
「はぁっ!」
妖魔が吹き飛ぶ。
「おお!?」
ユウトが目を丸くする。
速い。
想像以上だ。
さらにルゥの炎が飛ぶ。
コハクが押さえる。
ニャオミーが仕留める。
見事な連携だった。
「強っ」
「へへへ」
ニャオミーが少し照れた。
◇
依頼は無事達成した。
大量の月灯茸を回収し、町へ戻る。
報酬を受け取った瞬間。
ユウトは思わず声を上げた。
「おお!」
銀貨が増えている。
「これなら旅の準備できるな」
「まず武具ね」
コハクが言った。
◇
武具店。
壁には様々な武器が並んでいた。
ユウトは完全に目を輝かせている。
「異世界だ……」
「今さら?」
コハクが呆れる。
「まずユウト」
ルゥが杖を差し出した。
「回復役は杖じゃ」
「おぉ」
受け取る。
少しだけ冒険者っぽい。
ちょっと嬉しい。
◇
その時だった。
「……これ」
たぬぷぅが足を止めた。
視線の先。
そこには小さな弓があった。
初心者用の軽い弓。
「使いたいのか?」
たぬぷぅはこくりと頷く。
「みんな戦う」
小さな声。
「わたしも頑張る」
ユウトは少し驚いた。
食べることしか考えていないと思っていた。
でも違うらしい。
「いいんじゃない?」
ニャオミーが笑う。
「私が教えますよ!」
「教えられるの?」
「えっ」
固まるニャオミー。
「……たぶん」
「たぶんかよ」
◇
その夜。
占い屋。
机の上には旅支度が並んでいた。
新しい杖。
たぬぷぅの弓。
保存食。
水筒。
地図。
「いよいよじゃな」
ルゥが言う。
コハクも頷いた。
「明日出発」
黒霞街道。
白い少女の手掛かり。
そしてまだ見ぬ異変。
ユウトは荷物を見つめる。
少しだけ不安だった。
でも。
それ以上に楽しみだった。
「よし」
立ち上がる。
「行こう」
窓の外で風鈴が鳴る。
ちりん。
静かな夜だった。
だがその先には。
きっと新しい出会いと冒険が待っている。




