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第六章 後編 初クエスト【白霧山で水晶石を採取せよ!】

6章中編と内容がダブってしまっていたので修正しています。

たぬぷぅの身体が宙へ投げ出される。


その先には、岩喰らいの巨大な爪。


「触るなァッ!!」


コハクが叫んだ。


普段の冷静な表情はどこにもない。


金色の瞳には、焦りと恐怖が浮かんでいた。


「コハク!?」


ユウトが目を見開く。


ルゥも驚いた顔で振り返った。


コハクは歯を食いしばる。


だが距離が遠い。


間に合わない。


その光景を、彼女は何度も見ていた。


何度も。


何度も。


何度も。


避けられなかった未来。


「……見えてたのよ」


コハクが震える声で呟く。


「え?」


「この子が傷つく未来が」


空気が止まった。


ルゥの目が細くなる。


「未来視か」


コハクは小さく頷いた。


「最近、この辺り……おかしいの」


岩喰らいを睨みながら続ける。


「本来出ないはずの妖魔が現れ始めてる」


「だから確認しに来た」


その視線がたぬぷぅへ向く。


「でも何度視ても……」


声が震える。


「この子が傷つく未来ばっかりだった」


たぬぷぅは状況が分かっていないのか、きょとんとしていた。


「……わたし?」


「そう」


コハクは苦しそうに目を伏せる。


「だから守ろうと思った」


その瞬間だった。


たぬぷぅの身体がさらに落下する。


巨大な爪が迫る。


未来と同じ。


また間に合わない。


コハクは地面を蹴った。


だが遠い。


届かない。


その時。


「たぬぷぅ!!」


ユウトが飛び出した。


考えるより先に身体が動いていた。


守らなきゃ。


ただ、それだけだった。


届かない。


そう思った瞬間――。


ぶわっ――……。


白い光が溢れる。


空間が歪む。


世界が一瞬だけ引き伸ばされたような感覚。


次の瞬間。


ユウトの身体は、ありえない場所にいた。


「……え?」


気づけば。


たぬぷぅを抱きかかえている。


岩喰らいの爪が数センチ横を通り過ぎた。


ズガァァァン!!


地面が砕け散る。


静寂。


誰も動けなかった。


ルゥが目を見開いている。


コハクも息を呑んだ。


ユウト自身が一番混乱していた。


「な、何が起きた……?」


「知らねぇよ!!」


思わず自分で叫ぶ。


その瞬間。


ルゥが声を張り上げた。


「今じゃ!!」


轟ッ!!


紫炎が炸裂する。


岩喰らいが怯んだ。


同時にコハクが飛び出す。


「はぁぁぁッ!!」


銀色の刃が閃く。


一直線に妖魔の胸を貫いた。


ビキビキ、と亀裂が走る。


そして――。


ズゥゥゥン……。


巨体が崩れ落ちた。


静かな霧だけが残る。


しばらく誰も動かなかった。


やがて。


「……終わった?」


ユウトが呟く。


「終わったのじゃ……」


ルゥがその場へへたり込んだ。


たぬぷぅはユウトの腕の中で首を傾げる。


「……たすかった?」


「ギリギリな!!」


ようやく緊張が切れた。


その場に笑いが漏れる。


だが。


コハクだけは笑っていなかった。


ただ静かにユウトを見ている。


未来では。


たぬぷぅは傷ついていた。


血を流していた。


でも今は違う。


傷一つない。


未来が変わった。


確かに変わった。


「……なんで」


小さく漏れる。


未来は変わらない。


ずっとそう思っていた。


けれど。


目の前の少年は、それを覆した。


ユウトは首を傾げている。


相変わらず何も分かっていない顔だ。


それなのに。


(あの男……一体……)


コハクの胸だけがざわついていた。


     ◇


下山する頃には、空は夕焼け色に染まっていた。


「いやぁ……死ぬかと思った……」


ユウトがぐったり呟く。


「初心者向けとはなんだったのじゃ」


ルゥも疲れ切った顔で歩いている。


「……おなかすいた」


たぬぷぅだけは通常運転だった。


「お前メンタル強すぎるだろ」


思わずツッコミが飛ぶ。


そんな三人の後ろを歩きながら、コハクは静かに目を細めた。


未来は変わらない。


そう信じていた。


でも今日。


確かに変わった。


夕焼けの中。


たぬぷぅと団子の話で盛り上がるユウトを見る。


どこにでもいそうな少年。


けれど。


未来を変えた少年。


「……何者なの」


その呟きは、夕暮れの風の中へ静かに溶けていった。

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