↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

第七話 白雨の時節


 CDショップへと急いだ春馬《はるま》は、茉琴《まこと》の安全を確認すると、疲労の回復に努めようと地面に寝転んだ。


「ちょっと!大丈夫!?」


 茉琴の心配する声が聞こえるが、荒い呼吸が返答を遮る。

落ち着くまで待ってくれているが、それでも先にやるべきことがあった。

春馬は重い身体を起こし、茉琴に尋ねる。


「はぁ、はぁ。茉琴さん、携帯ありますか?」


「あるけど。なんで?春馬も持ってるでしょ?」


「それが、ふぅ…。さっきの戦闘で壊されちゃって。」


「はあ!?また襲われたの!??」


 おおかた予想はしていたと思うが、それでも事実で言われると重みが変わる。

だから茉琴は驚いたのだろう。


「…そうです。だからまず、応援を呼ばないと。

相手が桁違いに強かった。僕では対応しきれない。」


「わかった。持ってくる!」


 茉琴は慌ててバックヤードに行き、ロッカーから取り出して持ってきた。

受け取ったあと、すぐに晴明《せいめい》に電話をかける。

2コールのあと、電話が繋がった。


「どうした?茉琴。何かあったか?」


「晴明さん、僕です。北条《ほうじょう》です。」


「…!春馬か!?何かあったのか!?」


「はい、また襲撃されました。敵が強すぎて、僕では対応しきれません。

すぐにCDショップまで来れませんか?」


「今も追われてるのか?」


「分かりません。まだ攻撃されてないのを見るに、戦ってた相手は巻けた可能性はありますが、組織的に動いてる感じがしたので別働隊がいるかも。」


「わかった!すぐ向かう!!

……太一《たいち》!飯食ってる場合か!!」


 遠くから太一の「何?どしたの??」と、素っ頓狂な声が聞こえてくる。

しかし晴明に、「春馬が襲われたからすぐ向かうぞ!」と叱られていた。


「春馬!何があるかわからない。

だから、繋げたままにしておけ!分かったな?」


「はい。分かりました。」


 その後、数分で晴明たちはCDショップに着いた。


_____________


「春馬!大丈夫か!?」


晴明が慌てた様子で確認してくる。


「大丈夫です。折れた右腕と肋骨も、茉琴さんに治療してもらいました。その他は軽傷です。」


「そうか、とりあえずはよかった。太一!」


「ああ!わかってらあ!」


 晴明の掛け声で、太一は水柱を立て、建物の屋上へ登っていく。

そして、少し経ったあと降りてきた。


「あたりを見回したが、それらしき奴はいなかった。もう安全かもな。」


「そうか。だが、昨日の今日で襲ってきた奴らだ。警戒は解かずにいよう。」


「そうだな。水張っとくわ。」


「そうしてくれ。」


 太一は水を撒きに再び離席したが、すぐに撒き終え戻ってくる。

太一が戻ってきた頃に、晴明が事の経緯を尋ねてくる。


「何があった?」


その時には春馬も呼吸を整え終えており、疲労も少し回復していた。

なので、冷静に整理した内容を伝える。


「昨日の件で考えすぎたので、朝方過ぎに、リフレッシュしようと秋葉原に行ったんです。

目的はなかったんですけど、外の空気を吸いたくて。

でも、昼まで歩きっぱなしだったので、少し疲れたから帰ろうとした時に、襲われました。」


「なるほどな。それで?何が目的だったんだ?

昨日のやつと同じか?」


「はい。そいつらからも、鹿野さんから何か聞いてないかって言われました。」


「でも、知らなかったんじゃねえのか?」


「そうなんですけど、敵が言ってきたことに引っかかって、急いで茉琴さんのところに戻って来たんです。」


「ちょっと待て、話が飛んだぞ。敵に何を言われたんだ?」


 晴明が普通の疑問を投げかける。

しかし、その話を聞いた途端、太一と晴明の顔色が変わる。


「敵が、12月16日のあの日。地下で鹿野さんと会った時に、何か聞かなかったかって…。」


「……なるほど、そういうことか。

その時、茉琴も一緒に居たから、危険だと思って戻って来たんだな?」


 晴明の疑問に春馬は頷いて答える。

だが、二人の表情は以前、険しいままだった。


「まずいな…。敵はかなり、頭が切れるみたいだ。」


「…どういうこと?」


二人の意見がまるでわからない茉琴は問い掛けた。


「もし仮に、春馬が情報を持っていなくても、茉琴は知ってるかもしれない。

だが相手は、茉琴が本当に情報を知っているかまでは知らなかったんだろう。

だから、あえて春馬にヒントだけ与えて、春馬が茉琴の元に行けば、あの時茉琴も『何か知ってるんじゃないか?』、という情報を確定させられる。」


 春馬は晴明の話を聞いて、血の気が引いていく。

しかし、当人の茉琴はまだピンと来ていないようだった。


「……?なんでそうなるの?」


「春馬。戦った相手、強かったんだろ?」


「はい。僕じゃ相手にならなかったです。

それに、手加減して遊ばれてました。」


「ってことだ。つまり、相手は春馬から情報を聞き出そうとしているように見せかけて、時間を稼いでたってわけだ。

そこで春馬に、鹿野と会った時というヒントを与えて、会ったことを思い出させる。

ここまでは相手さんも知ってる事実だろう。

しかし、問題はその後、相手は茉琴まで鹿野と会った場所に居たかどうかは、おそらく程度でしか知らなかったんだろうってことだ。」


 茉琴はようやく理解したのか、驚いた表情をする。


「……!?なるほど!

時間稼ぎされてると思わされてて、そのあと私も鹿野と会ったことを思い出した。

だから、春馬は私が危険だと思って来ちゃったわけか!!」


「そういうことだ。」


「やられたな…。」


 春馬は自分の大きなミスに、落ち込んだ気持ちを立ち直れずにいた。

すると、茉琴は明るく春馬に声を掛ける。


「まあまあ、大丈夫だって!

私も鹿野から何にも聞かされてないし、思い当たるものもないからさ。聞かれたって言いっこないもん!

だから、そんなに落ち込むなよ!!」


 慰めてくれているが、春馬の気は晴れなかった。

そんな姿を見て、太一も晴明もフォローしてくれる。


「今回は相手が一枚上手だっただけだ。それに、現時点で俺も太一もいる。

危険度は少ないさ。」


「そうだぞ、春馬くん!俺たちは強いからな!それに、落ち込んでたって仕方ないだろ?

次のことについて考えようぜ?なっ?」


 三人の慰めの甲斐あってか、春馬は少しだけ前向きになれた。

そんな春馬を置いて、太一と晴明は今後について話し始める。


「これからは単独行動もリスクが高いな。

なるべく、俺か太一のどちらかは付いていた方がいい。」


その後、晴明は「どうする?」と太一に問い掛ける。


「俺が茉琴に付く。戦闘力と応用力を考えれば、俺の能力の方が相性がいい。

それに、春馬と晴明が組んだ方が、撤退戦術も使いやすいし、そのあと俺たちと合流もしやすい。」


「そうだな、そうしよう。

春馬にはワープさせる数が増えるから、自然と負担も増えてしまうが…。」


「大丈夫です!自分のミスは、自分で取り返します!!」


「心意気はいいが、取り返す必要はない。

その前のめりな姿勢が、時に判断を狂わすからな。」


「すみません。ちょっとまだ動揺してて…。」


「あんま気負うなよ?誰だってミスぐらいするって。」


「すみません…。」


 春馬の落ち込みようを見た三人は、「これ以上はやめておこう。」と思い、茉琴の仕事が終わるまで一緒にいた。

警戒はしていたが、その後襲撃されることはなかった。


 そして終業時間が来たので、茉琴は閉店作業を始める。

「警戒は一人で十分!それより、とっとと終わらせた方が、警戒する人数が増えるでしょ!」と言って、太一と春馬を働かせたが、茉琴はサボりたいだけだった…。


 閉店作業を終えた四人は、晴明の家で夕ご飯を食べた。

食べ終えたあと、茉琴を除いた三人で、交代しながら夜襲に備えて警戒していたものの、やはり襲撃は来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。