第四話 拾う足跡、歪む人影。
家へ続く道とは別ルートに変更してみるが、それでもついてくる人がいる。
鳴った足音は聞き違いではなかった。
——やはり、尾行されてる。
春馬は、相手に悟られないように歩調は変えず、視線だけ動かして周囲を見渡す。
すると、少し先の曲がり角に道路反射鏡があることに気づいた。
あれを使って、追ってきているのか目視で確認しよう。
そう決めると曲がり角まで進み、曲がった先で歩みを止めずに振り返る。
鏡を確認すると、そこにはフードを被った男性らしき人影が一つあった。
「確定だな。」
確認を終えたあと、春馬は全速力で走りだす。
走り出す足音を聞いて、フードの男も舌打ちをしつつ慌てて後を追う。
春馬の後ろ姿を捉えたフードの男は、再び曲がり角を曲がった春馬を追いかけたが、曲がった先は古いアパートの裏路地になっており、死角が多く見失った。
「くそ!どこいった!?」
フードの男が辺りを見渡すが、いくら探しても見当たらない。
俯いてため息を吐いたあと、諦めようと思っていた時、後ろから声が掛かる。
「何で後をつけてきたんですか?」
気を抜いていたのか、フードの男は大きく驚いた。
驚きと同時に、声のした方向へと振り向きながら距離を取る。
想定していた行動ではなかったため、春馬も内心で驚いた。
——動きが早い!
ただのストーカーかと思ってたけど、驚いた動きが普通の反応じゃなかった。
普通なら、驚かされると振り返るだけのはず。
なのに僕から目を切らず、反射的に距離を取った?
ということは……。
その動きと判断を見て、春馬の警戒心は急激に跳ね上がった。
たが、だからといって動くわけにはいかない。
こちらが気づいたことを、悟らせてはダメだ。
「あの、何かご用でもありましたか?」
「脅かしやがって!」
「いやいや、怖いのはこちらですよ。
あなたがずっとついてくるんですもん。」
「同じ方向だっただけだろ。」
「へぇ〜、普段の帰り道から変更したのに、同じ方向だったのも偶然ってことですか?」
フードの男はバツが悪そうにする。
少しの沈黙のあと、何かを考え込んでいたが、観念したのか白状し始めた。
「ああ、そうだよ。
あんたをつけてきたんだ。用があったからな。」
「……用とはなんですか?」
「お前、鹿野って奴と仲良かったんだろ?
じゃあ、そいつから何か聞いてないかと思ってよ。」
鹿野さんの知り合いか?
いや、でも僕が現役の時は、こんな背格好の人は見たことがない。
だから、少なくとも対策課の人間ではない可能性が高い。
法律上、異能者は覚醒後、政府機関及び異能対策課への報告義務がある。
表立って動いている異能者なら、対策課と無関係ってことは考えにくい。
もしも対策課と関係があるなら、鹿野さんとも関係性があるかもしれないが、あの人の性格で対策課ではない外部の異能者——つまり異能犯罪者とつるむとは考えにくい。
それに、そもそも何について聞かれているのかすらわからない。
「なんの話をしてるんですか?」
「あ?なんも心当たりがないのか?」
フードの男は、「こいつだと思ったんだが…違ったのか?」と、頭を掻きながらぶつぶつ呟くが、やがて向き直り口を開く。
「お前が知ってるはずだ!絶対にな。」
知っていると言われても、春馬は何も思い当たらなかった。
「そう言われても……。」
「そうか、言いたくないってか。
なら、教えてくれるまで甚振るしかないな。」
「いや、待って下さい!本当に何も——」
返答しようとするが、フードの男は気にも留めず攻撃を仕掛けてくる。
「なんで異能犯罪者ってのは、こうも話を聞かないのかな!」
「お前が喋れば、話聞いてやるよ!」
周りには、古くなり空き家も多いとはいえ、まだ人が住んでいる家もあった。
こんなところで戦ったら、敷地内まで被害が及びかねない。
また呼び出しを受けるのは勘弁だ!
せめて、もう少し開けた場所へ行きたいな。
……とりあえず場所を移すか。
春馬は逃げるように移動を始めた。
フードの男は、春馬の思惑通りついてきてくれる。
春馬は、少し開けた場所まで来ると立ち止まり、フードの男に向き直った。
「なんだ?追いかけっこはやめか?」
「そうだな。案外弱そうだから、戦ってみようと思ったんだ。」
「はっ、そうかよ。
なら、確かめてみろよ!」
挑発に乗ってきたフードの男は、突き出した右腕から"何か"を飛ばしてきた。
飛来物を瞬間移動で避け、そのまま首を巡らせる。
すると、着弾した壁には針のようなものが突き刺さっていた。
針か?それとも棘か…。
過去に一度、同じタイプの異能犯を対処したことがある。
その経験から、おそらくどちらかだろう。
それでも、開けた場所とはいえ、こんな住宅地の真ん中で戦闘をするのは、流れ弾で被害が出てもおかしくない。
速攻で終わらせるか、逃げるかだが。
春馬は、次の行動の考えを巡らせようとするが、フードの男はそんな時間をくれる訳はなく、追撃してくる。
「知ってることを吐け!そうしたら見逃してやる!!」
「いきなり攻撃してくる人の言葉を、はいそうですか。って、信じられる訳ないだろ!」
「じゃあ、わかった。」
フードの男は言葉と共に手を止めた。
その後、何もせず無防備に立っている。
何なんだよこいつ!やりづらいな〜。
そんなに聞かれたって……。
心の中で愚痴を零していると、ふと一つ案が浮かぶ。
このままじゃ帰してくれなそうだし、本物っぽい偽情報を出して、言いくるめられないかな?
相手は僕が、絶対に何か知ってるって思ってるらしいし、それが本当かを今ここで確かめる手段もないはずだ。
だから、一度やってみる価値はあるんじゃないか?
でも、いきなり開示すると嘘っぽいし、少し出し渋ったふりして教えてみるか。
まあ、嘘っぽいというか嘘だけど……。
「本当に、教えたらこのまま見逃してくれるのか?」
「ああ、見逃してやるよ。
ここで逃したところで、お前程度ならいつでも殺せそうだしな。」
「はははっ。戦闘向きじゃないっていう意味では、確かにサポートタイプだけど。」
春馬は愛想笑いしながらも、「見くびられたもんだな。」と思うが、「油断してくれるに越したことはない。」と、自分に言い聞かせた。
そして、再び情報を整理し始める。
口ぶりからして、僕のことも多少知ってそうだな。
異能の情報を得ようともせず、僕の瞬間移動の能力を分かった動きもしてるし。
それにしても、言動含め何か引っ掛かるんだよな〜。
「おい、情報をよこせ。」
フードの男は、左手を差し出して急かしてくる。
だが、春馬は心理戦に持ち込むため、その提案には乗らない。
「口だけなら誰でも言えるからな。
だから、おいそれと喋ることはできない!」
啖呵を切ったあと、次は春馬から仕掛ける。
こっそりと小さなワープゲートを開き、得物を手にしていた。
瞬間移動で間合いをあっという間に詰め、突き出した左腕に獲物で一閃する。
当たる直前で金属音がすると同時に、切り払った勢いは逆方向へと戻される。
フードの男の左腕から、無数の針が展開していたのだ。
「くそっ。そう簡単にはいかないか。」
春馬は好戦的な態度を取る。
もちろんブラフだ。
しかし、相手はそれでも効いたのか、苛立ちを見せていた。
「少し歩み寄ってやったら、すぐこれだ!」
両腕を突き出したあと、全身から針を生み出し、四方八方に発射した。
今回の攻撃も、数回にわたり瞬間移動で回避する。
しかし、先程までの一方向の攻撃とは違い、無作為に放たれた円錐の物体はあちこちに刺さった。
春馬は周囲へ視線を移す。
針が刺さっているのは壁や地面だけで、住宅には届いていなかった。
よかった、住宅には当たってないみたいだ。
一方向なら誘導して、ある程度攻撃の着弾点を制御できるが、全方位だとそうはいかないからな。
次が来ると身構えたが、追撃が来ない。
フードの男を見ると、少し息が荒くなり立ち止まっていた。
ん?追撃が来ない?
呼吸が荒そうに見えるが、疲れたのか?
僕の体力消費と同じ、即時型の代償なのか?
でも、異能使用後だからって断定は——
……いや、待て。
もしかして、連発に制限があるのか?
さっきの前方に飛ばしてた針も、連続して飛ばしてこなかった。
それとも、誘ってるのか?
しかし、相手は動く気配がない。
春馬は警戒を解かないまま、状況を整理する。
代償によるものかもしれないが、能力行使に制限があると仮定すれば、能力がまだ成長してないとも取れる。
僕の異能も、初めの方は数回も飛べなかったし。
それに、次の準備すらしない感じを見るに、まだ覚醒したてで慣れてない感じか?
もしそうなら、さっきの違和感にも納得感が増すんだけど。
あるいは、本当に隙を見せてるだけか。
まぁだとしても、遠慮なくいけるな。
この前ので少し勘を取り戻したから、多少の無理でも対応できる感触はある。
……飛び込むか。
覚悟を決めると異能を発動する。
春馬は敵の休息を待ってあげるほど、お人好しでもなければ、まだ余裕もない。
すかさず瞬間移動し、首元に斬りかかる。
フードの男は慌てて仰け反り、回避を試みる。
少し額を掠ったが、致命打にはならなかった。
だが、その拍子にフードが外れた。
春馬は顔を確認すると驚きを隠せなかった。
嘘だろ!?お店に来たお客さんじゃないか!!
チラチラ見られてると思ってたけど、あの時から僕を狙ってたのか!?
ということは、偶然じゃない。
初めから僕が狙いだったってわけか。
それなら、僕の情報を事前に知っていたのにも説明がつく。
でも、動きそのものはどこか…経験不足の素人に見える。
その割には堂々と接触してきた。
計画性がないやつは突っ込んでくるだけだが、この青年は待ち伏せしてる時点で違う。
情報の知り具合や、計画性がある部分とない部分があるのを見るに、誰かに指示された尖兵か何かか?
まだ他に協力者がいるとか?
それに、異能の"使い方"だけうまいのも妙だ。
それが逆に、歪さを出してる。
誰かに教えられて使い方だけ訓練したのか?
まずいな……。
春馬は少ない情報からある仮説を立てた。
未熟な青年が事前に情報を持っており、尾行や戦闘まで仕掛けてくる。
ということは、『"背後に組織的な後ろ盾がある"ということなんじゃないか?』と。
これは、悠長にしてられないな。
回りくどい駆け引きはやめだ!
先に相手を落ち着かせてから、情報を吐いて反応を見よう。
そう決めて行動しようとするが、青年は額の傷から垂れる血を手の平で拭い、先程よりもさらに苛立ちを見せた。
その後、手についた血を乱暴に払い、怒りの言葉を春馬にぶつける。
「痛ってぇーな!くそが!!」
「まあまあ、落ち着こうよ。ねっ?」
「切りつけておいて何が落ち着こうだ!あぁ!??
ふざけてんじゃねーぞ!」
「至って真面目なんだけどな〜、なんて…。」
「もう関係ねぇ。ぶっ殺してやる!!」
青年は怒りに飲まれて走りながら、針を飛ばしてくる。
春馬は避けるが、攻撃はもう見境なかった。
あちこちに針が刺さり、壁にはひびが入って、今にも崩れそうになっていた。
このままじゃ被害が出てしまう!
どうにか落ち着かせないと。
考えた末、一か八か、相手の攻撃をわざと受ける選択をする。
飛んできた針の先端——鋭利な部分だけを、小さなワープゲートを開いて潜らせる。
そしてすぐに閉じ、切り落とすように平面にした。
ほんの一瞬での出来事。
しかし、それは数々の経験を積み重ねたからこそ、成功させられるような技術だった。
その直後、安全になった針を攻撃として受けた。
先端部が平面になったとはいえ、もろに受けた攻撃はかなりの痛みを伴う。
吸った空気が漏れ、後方へ吹き飛ばされる。
攻撃が直撃したことで気分を良くしたのか、青年の口元が緩む。
春馬は先程の怒りが、少し収まったようにも見えた。
「調子乗ってるからそうなるんだ!
わかったか?俺の凄さが!!」
「確かに、君のことを見誤ってたみたいだ。」
「なら、早いところ情報を吐け!知ってること全部だ!!」
「わかった。言えば見逃してくれるんだな?」
「チャンスをやったのに今更何言ってんだ?
でもまぁ、見下ろすと気分が良くなったからな。
ふっ、情報次第だな。」
鼻で笑う青年を眼前で捉えつつ、膝をつき弱ったふりをする。
春馬は少しの間沈黙し、やがて口を開いた。
「本部の連中は、裏でこそこそやってたらしい。
それが何か、何をしてるかまでは教えてくれなかった。
本当だ!その時には、鹿野さんも幹部候補というより、ほとんど幹部みたいな立場だったから、守秘義務で教えてくれなかったんだろう。
真面目な人だったし。」
「そうか……でも、肝心な何かがわからなけりゃ話にならねーな。」
「わかった!わかったよ!!……教えるよ。」
「初めから言え!出し渋りやがって!!」
「人体実験をしてたんだ。
他人の異能を、別の人間に移し替える実験。
しかも、異能は死んだら消えちゃうから、生きたままやってたんだ……。」
異能対策課の前身組織が、人体実験を行っていたのは本当だ。
でもそれは、人外が現れる前の話で、もう十数年も昔のことだ。
だが、当時はバレた上に隠蔽工作さえも露呈し、世間からの批判が殺到した。
そこから人体実験はタブーになった。
それがまた、近年になって行っていたとなると、かなりの大スクープと言える。
まあもちろん、僕がでっち上げた嘘だけどね。
でも、真っ向からは否定しにくいはずだ。
規模はとても小さくても、今でもそういった類の事件がごく稀に起きることはある。
しかし、青年は疑り深いのか追及をやめない。
「……証拠がないだろ?」
「そりゃないさ。あったらもう、週刊誌なりに売ってお金にしてるからね。
でもそうしなかったのは、上層部に消されるかもしれないし、リスクが高いからだ。
それなら、ダンマリ決め込んだ方がずっと得だ。」
「……。」
「それに、君のような異能犯罪者に情報を漏らしても、そのことで僕を消しにくるメリットはないだろうしね。」
そう言ってみたものの、メリットがないわけではない。
戦闘を行ったあとのため、能力情報を持ってるだけで殺される要因にはなり得るし、口封じで殺されることもある。
それだけ、異能戦において能力含め情報というものは、生死を分けるものなのだ。
「ふん、まあいい。
確かに、人体実験をしてるなんて表には言えねぇし、証拠を出すような馬鹿もいないだろうしな。」
その言葉を最後に、青年は春馬の方を向いたまま、後ろ歩きで歩き出す。
おそらく、背を見せると攻撃されるかもしれないと思っているのだろう。
しかし、春馬は弱ったふりをしたまま座り込み、痛がるそぶりを見せて、立ち上がろうともしなかった。
青年が曲がり角を曲がり、姿が見えなくなってからも、数分間警戒を解かずに弱ったふりを続ける。
やがて、戻ってくる気配がなさそうだと判断し、春馬は警戒を解いた。
「ふう、良かった。騙されてくれた。
まさかあんなに上手くいくとは……。
上手くいきすぎて、警戒心がなかなか解けなかったよ。」
独り言を言いながら、弱ったふりをやめる。
でもやっぱり、素人だったんだろうな〜。
若そうに見えたし、あの子多分……学生だろ?
覚醒したばかりのところを、悪い奴に利用されたのかもしれないな。
でも、その道に進むと決めたのは彼だから、そのあとは自分で更生の意思を示すしかない。
そういう意思を持つ人や、助けを求める人しか、僕らは助けられない。
……それが、対策課の規則でもある。
春馬は立ち上がり、ズボンについた汚れを叩き落とすと、思い出したかのように帰路についた。
その間、一応晴明には、襲撃された旨を伝えることにした。
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曲がり角を曲がってダッシュで駆け出したあと、大通りへ出た青年。
荒い呼吸のまま、震える手を眺めた。
「ははっ!異能戦ってこんな感じなのか…。
もっとやばいのを想像してたが、案外上手くいくもんだな!」
戦闘から少し時間が経っていたが、興奮を抑えられなかった。
そう、青年は今回が初めての実戦だったのである。
しかし、それでも上手くいったのは、春馬がサポートよりの能力だったこと。
春馬の目的が対処ではなかったため、手加減していたこと。
この二つに起因する。
「これで、俺も正式メンバー入りだ!
早く、ボスに報告しに行こう!!」
曲がり角の時とは違い、期待を秘めた軽やかな足取りで、会議をしていた廃墟へと向かった。
_____________
とある廃墟の一室。
春馬との戦闘から数時間が経っていたが、ボスも会議に出席していた数人の構成員も、廃墟に残っていた。
「ボ、ボス!俺、情報手に入れてきましたよ!!」
「誰だ?こいつ??」
チンピラ風の男が睨みつける。
青年はその圧に負けそうになるが、グッと堪えて、ボスと呼んでいる童顔な女性へ向き直った。
「へぇ〜、情報持ってきたんだ?
でも、なんで情報を集めてるって知ってるの?」
「いや、それは、その……すいません。盗み聞きしてました。
すいませんでした!!!」
「別にいいよ。それで?
どんな情報持ってきたの?」
「それが——」
青年は、春馬から聞いた情報をボスに伝えた。
「そうなんだ、それは凄いね。」
ボスに『凄い』と言われた青年は、胸が熱くなるのを感じる。
『これで、俺も組織に入れる!』
そんな期待でいっぱいいっぱいになっていた。
あまりにも想いが溢れてきたのか、青年は組織に加入できるかをボスに尋ねる。
「ボ、ボス!これで俺も、Vile Squallに入れ——」
話の途中で、言葉が途切れる。
青年の口や喉が腫れていき、やがて膨れ上がったのだ。
それが、徐々に全身に伝播していく。
青年が、これ以上膨れ上がらなくなった時、ボスは指で銃の形を作り一言。
「バンッ!」
その掛け声と共に、膨れ上がった青年は弾けた。
四方八方にビチャビチャと音を立てて、肉片が飛び散る。
飛んだ肉片が、一人掛けソファに座る大柄な男に掛かった。
「うわっ!きったねぇーー!!
ボス!いきなりやるなよ!!掛かったじゃねーか!」
「きゃははは、ごめんね!でも似合ってるよ?」
「どこがだよ……。」
部屋には大柄な男の文句と、ボスの甲高い笑い声、それに青年だった肉片が満ちていた。
青年が入ってきた時以降、静かにしていたチンピラ風の男が、肉片を蹴り飛ばしながら言葉を吐き捨てる。
「くだらねぇ嘘に引っかかりやがって!雑魚が!」
「そうだね。
それに……こいつのせいで、計画を前倒しにしなくちゃいけなくなった。最悪だ。」
「ボス、顔と言葉が合ってないぜ。」
チンピラ風の男が指摘する。
ボスは「そう?」とだけ答えて、地面に置いてある、スタンド式の割れた姿見の前に立つ。
そこには、薄ら笑みを浮かべた童顔の女性が映っていた。
「何はともあれ、やっと俺の番か。」
肉片を払い終えた大柄な男は立ち上がり、携帯で連絡を入れながら、どこかへ向かった。




