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番外編 螢と夏乃と定食処。


2013年7月18日


 螢《けい》は夏乃《なつの》と朝から合流し、水族館で遊んだあと、夏乃がどのグッズを買うか悩んでいた。

買うものを決め購入する頃には、お昼を過ぎていたため、遅めの昼食を食べに定食処《ていしょくどころ》へ向かった。


「いらっしゃいませー!何名様ですか?」


「二人です。」


「かしこまりました。奥のお席へどうぞ〜!」


 店員さんに案内された席へと向かい、荷物を置いたあと二人とも椅子に腰掛けた。


「ふぅ〜。やっと座れたー!ごめんね?グッズ買うのに時間かかっちゃって。」


「うんうん、大丈夫。俺も色んなもの見れて楽しかったし。」


「それなら良かった!」


「……それよりも、彼氏は大丈夫なのか?

いつもそうだが、俺と会うの普通嫌だろ。」


「ん〜?だって螢とは顔見知りじゃん!

大学時代に乗り込んできたし。」


「まあ、そうだけど。」


「それに、『あの人だったらいいよ。大切な友達なんでしょ?』って言ってくれてたから。」


「ふっ、あいつがカッコつけてるだけだろ。」


「それはあるかもね〜。」


 夏乃はメニューを見ながら微笑んだ。


「螢はもう食べるの決めた?」


「ああ。このチキン南蛮定食にする。」


「いいねー!私もそれと生姜焼き定食で悩んだんだよ〜。」


「俺のを分けてやるから、生姜焼き定食にしな。」


「ホントッ!?ありがとう。」


 夏乃は満足そうな笑みを浮かべ、螢に返した。

その後、螢は店員さんに声を掛け注文を伝える。

数分後、螢の定食が先にやってきた。


「チキン南蛮定食の方〜?」


「はい。」


「お待たせしました、こちらチキン南蛮定食になります。

ごゆっくりどうぞ〜。」


 定食を置いて店員さんは立ち去っていく。

だが、定食が来たのにもかかわらず手をつけない螢に、夏乃は声を掛ける。


「先に食べてていいよ?」


「いや、待ってるよ。」


「いつものやつ?」


「うん。

ご馳走様のタイミングは人それぞれだから、せめて二人しかいない時ぐらいは、一緒にいただきますってしたいんだ。」


「ふふっ。前にも聞いたけど、変なの〜。」


「変でいいんだよ。」


 夏乃の笑顔に釣られて螢も微笑んだ。

そうして『長いこと待つかもしれない。』と思ったが、その後数分で生姜焼き定食が届き、案外早く一緒に「いただきます」ができた。


「では、いただきます!」


「いただきます。」


 二人は黙々と食べ始める。

ご飯を食べる時、二人は意外と喋らない。

水族館であんなに喋り倒していた夏乃も、静かに黙食している。

夏乃が「チキン南蛮一個ちょうだい!」と言うと、螢は二個あげた。

それを見た夏乃は、生姜焼きを三切れあげた。

 そんなやり取りをしつつご飯を食べ進めていると、夏乃は螢の方をチラッと見る。

すると、もう食べ終えていた。


「ごめん、もうちょっと掛かるかも。」


「大丈夫だ。ゆっくり食べな、喉に詰まらせるぞ。」


「うん、ありがとっ。」


 螢は夏乃の食べる姿を静かに見つめる。

その姿を目に焼き付けていると、ポケットの携帯が震えた。

螢は机の下で夏乃に見えないように確認する。

そこには、「非番隊員も至急、応援に向かわれたし。場所は——」と書かれていた。

螢は思わず、少し眉を顰《ひそ》める。

螢の表情変化に気づいた夏乃は、螢に尋ねる。


「どうしたの?仕事??」


 応援要請だったが螢は無視しようとしていた。

なぜなら、夏乃との時間を邪魔されたくなかったからだ。

でも、夏乃が螢の異変に気づいたため、仕方なく軽い嘘を交えながら返答した。


「いや、違うよ。

でも電話が来たから、ちょっと出てくるわ。

待っててくれ。すぐ戻る。」


 そう告げると、店員さんに一声掛けてから、店の外へ出た。


「ちっ!夏乃との時間を邪魔しやがって。

お前ら人外に構ってる時間なんてないんだよ。

それに、自分らの持ち場ぐらい、自分らでなんとかしろ!人手が足りないからって非番まで呼びつけやがって。

代休もくれないくせによ。」


 螢はお店の方を振り返り、夏乃から見えない位置かを確認する。


「——加速。」


 その一言とともに、現場へ向かった。


_____________


 夏乃がご飯を終えてほんの数分が経った頃、螢が戻ってきた。


「ふぅ……お待たせ。食べ終わったあと待ったか?」


「うんうん、少ししか経ってないから大丈夫だよ。」


「ごめん、仕事の資料についての連絡だった。」


「そうだったんだ。」


 夏乃は螢を凝視《ぎょうし》する。

螢は、わずか十数分という速さで人外を処理し、汚れた服を予備の同じ服に着替えて戻ってきていた。

その間、かなり動いたので少し汗をかいていたが、お店に入る前に拭《ぬぐ》っていた。

それでも、夏乃が見つめてくるから、バレていないかとヒヤヒヤしていた。

夏乃は螢を見つめたあと、口を開く。


「外暑かったでしょ?」


「あ、ああ。暑かった。」


 夏乃の質問に少しドキッとしたが、夏乃が「なら扇いであげる!」と扇子を取り出し扇ぎ始めてくれた。

その様子だと気づかれていないだろうと思い、螢は落ち着きを取り戻した。


 その後、少し会話をしていると、螢は夏乃に問い掛けた。


「……トイレ行きたいのか?」


 螢の問いに夏乃はキョトンとする。


「ん?……トイレ??」


 夏乃は少し考えたあと、螢の問いに返答した。


「確かにこのあと、ショッピングへ行く予定だったから、今行っておきたいとは思ってたけど……なんでわかったの??」


「行きたそうにしてたから。」


「まさか、そう見えてた?」


「うん。」


「凄い!なんかエスパーみたい!!」


「はははっ!エスパーなんかじゃないさ。

普通に、夏乃が行きたいって顔してただけだよ。」


 そして、夏乃は立ち上がりトイレへ向かった。

螢は目頭を押さえつつ、顔を顰《しか》めながら首を振った。

その後、夏乃が用を足してる間、螢は二人分の会計を済ませた。

番外編を閲覧して下さり、誠にありがとうございます。


次週は本編に戻り、第十九話は10月23日(金)20時に投稿いたします。


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