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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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武道少女の恋の始まり?

 屋上で、小鳥遊さんと佐伯さんが仲良くしているのを見た時、はじめは少し驚いたし、嫌な気持ちもあった。

 佐伯さんが他人の恋愛に首を突っ込んで、無闇に引っかき回してるんじゃないか。アタシはそんな風に思ってたから。

 アタシの中では、佐伯さんは悪党、アタシは……仮面ライダーか赤レンジャーにでもなった気持ちだった。

 だけど、実際に話を聞いてみたら、佐伯さんは内気な小鳥遊さんを、応援していただけだった。

 変わった娘だという噂の通り、口調とか態度とか色々と変わってはいるけど、やってる事自体は、誰かに咎められる謂れは無い事。

 恋の悩みを抱えてる娘の、悩みを軽くしてあげようと、見返りも求めずに助けてあげてる。

 本人は、他人の恋が実るのが楽しいからなんて言ってたけど、それは本当の理由じゃないと思う。

 なんだか、自分の恋を諦めてるというか、達観しているように見えた。

 空手をやってると、時々、そういう人に会う事もある。空手一筋、命も要らぬ名も捨てた、そんなリアル空手バカ一代みたいな人は当然、恋愛なんて考えてない。

 でも、佐伯さんは何かを犠牲にしなきゃならないほど、打ち込んでる物は無いはず。なのに、恋愛が他人事になってる。

 佐伯さんは恋を諦めるような年でもない、アタシと同い年の高校生、思春期真っ盛り。

 だとしたら、考えられるのは心に大きな傷がある場合だ。

 男に酷い事をされたとか、失恋がトラウマになったとかで、自分の恋心を殺したのかもしれない。

 もしかしたら、凄く悲劇的な経緯があるのかもしれない。

 それなのにアタシは、何も知らない癖に佐伯さんに詰め寄って、殴りかかる勢いだった。アタシのバカ、穴があったら入りたい。いっそ埋めてほしい。

 そんな自責の念を膨らませていると、屋上とドアが開く音がした。

 ドアを開けて現れたのは、朝倉君だ。

 佐伯さんに頼んで、この時間に屋上まで来てもらえるように取り次いでもらった。

 規律が厳しい野球部の部員だからなのか、朝倉くんは時間を指定すると、その時間ピッタリに来る。

 一分のズレも無い。空手家として、このブレの無さは見習うべき所があるかもしれない。

「ごめん、待たせちゃったかな」

「ううん、アタシが早く来すぎただけ」

「そう? なら良かった」

 そう言うと、朝倉君はちょっと笑って、アタシの隣に立つ。

 二人で、手すりにもたれかかり、自然と、他愛も無い世間話が始まった。

 こんなふうに、スポーツ論でもなく、勉強の話でもなく、ただの世間話をするのは初めてだ。

 朝倉君は、部活中のキリッとした表情じゃなくて、どこかゆるくて自然な表情で、柔らかい雰囲気を纏っている。

 こういう時の朝倉君は、可愛らしいというか、和む感じだ。

 本当、モテる理由が、これだけ詰まってる男も中々居ないな。なんて考えてしまう。

「佐伯さんって、面白いよね」

 世間話をしていたら、二人の共通の知り合いである、佐伯さんの話になった。

「うん、ちょっと変わった娘だけど、面白くて、優しい娘だと思う」

 佐伯さんの話題になると、二人して笑顔になってしまう。

 朝倉君も、佐伯さんの人となりを分かってるみたいで、その表情が柔らかくなる。

「あ、そう言えば………っ」

「そう言えば……何?」

「な……、なんでもない」

 朝倉君なら、佐伯さんが恋愛を諦めてる理由を知ってるかもしれないと思って、聞き出そうとしたのを寸前で思いとどまった。

 人のプライベートをばら撒くような真似は止めてと言っておいて、アタシが本人に無断で話を聞こうとしてどうするの。

 人として、武道家として、道を外れる訳にはいかない。

 朝倉君は、不思議そうな顔をしながらも、続きを促さないでくれた。気を使わせちゃったかな。

***********

「あ、もうこんな時間」

 他愛もないお喋りをしていると、気づいたら空はすっかり夕暮れに染まっていた。

 屋上ほど、空がよく見える場所は無いのに、全く気がつかなかった。多分、楽しかったんだ。

「ほんとだ、話し込んじゃったね」

「今日はありがとう、朝倉君。すごく楽しかった」

 アタシが手を差し出すと、彼はしっかり握り返してきた。

 試合後の握手と同じ流れで出した手を、きちんと握り返してくれるのは、流石スポーツマンだ。

「橘さん、また今度、会って話しない?」

「うん、絶対ね。そうだ、最近出来たカフェ……なんて名前だっけ?」

「コメット珈琲?」

「それ! 今度そこでお茶しない?」

 こうやって、ただ喋るのもいいけど、お茶と食べ物があったら、会話が弾むはず。

 それに、初めての店なら話題も増えるから、万が一でも会話が途切れない。

「それ、いいね! コメット珈琲で待ち合わせ、了解。楽しみにしてるね」

「うん、楽しみにしてる!」

 二人で屋上の扉をくぐって、それぞれの教室へ戻る。

 あー、楽しかった。ただ喋っただけなのに、どうしてこんなに楽しかったんだろう。スポーツやるときとはまた違う、幸せな疲労感だ。

 コメットに行くのも、楽しみ。

 コメット珈琲と言えば、逆写真詐欺の大盛りサンドイッチとか、大きすぎるデザートが話題の店だから、食べ物系の話題で盛り上がるのも楽しみだ。

 朝倉君と、二人でカフェかぁ…………って、これ、もしかしなくてもデートじゃない?

 アタシは、運動部二人で行くなら、食べ物の量は多い方がいいと思って誘ったんだけど、そこに男女ペアが挟まったら、完全にデートだ。

 立ち止まって、両手で顔を隠す。両手が熱くなるほど、顔が火照っている。

「うーーー……」

 不味い、超不味い。

 デートに着ていくような服なんて、持ってない、というか、何を着ていったらいいのか分からない。

 どうしよう。こんな時に相談出来る人なんて………。

(そうだ!)

 佐伯さん! 佐伯さんに相談しよう。

 他人の恋愛を、助けるのが好きなんだから、アタシ達のデートも助けてくれるはず!

 アタシも助かって、佐伯さんも嬉しい。うん、完璧。そうと決まれば、明日にでも相談しよう。

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