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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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激突!空手少女

 野球部の朝倉翔太には、スポーツをやっている女子には凄く人気があって、スポーツをやっていない女子にも、結構人気があるという、モテモテ男子だ。

 空手部であるアタシ、橘さやかとしては、朝倉君はいい男だとは思う。思うけど、恋愛感情は湧かない。

 空手部の練習中に、朝倉君と会う事は結構ある。

 お互いの練習がどうとか、大会がどうとか、競技は違うけどスポーツ選手同士として、話をして、競技に取り入れる事もある。

 話した感じでは、誠実そうで真面目だし、スポーツマンだからスタイルも良い。

 それで顔も良いんだから、それはモテるだろうなとは思う。

 アタシも、朝倉の事は、スポーツ選手として好きだ。あくまで選手として。重ねて言うけど恋愛感情は無い。

 だからこそ、最近朝倉君が恋愛にかまけてるのが気になる。

 恋愛にうつつを抜かして、部活がおろそかになったりしたら、アタシは多分許せない。

 朝倉と同じクラスの、佐伯佳奈って娘が情報屋を自称して、女の子の情報を渡してるとかなんとか、そんな噂を聞いた。

 女の子の情報を渡すとか、場合によってはプライベートをバラす行為。正直、悪趣味だと思う。

 そういう行為を止めるのは、相手が男の子なら番長、女の子ならアタシみたいな腕自慢の役目。

**********

 バンッ! と机を叩かれ、肩がビクっと震える。

 目の前に居るのは、攻略対象ヒロインの一人、橘さやかちゃんだ。髪はポニーテール、肌は少し日に焼けて小麦色の健康的美しさ。

 キリリと吊り目の、いかにも勝ち気そうな、赤髪の女の子。

 そのさやかちゃんが、教室に入ってくるなり私の前までやってきて、何も言わずに平手を机に叩きつけ、私のことをキッと睨んでいた。

 少なくとも、情報を求めてやってきた訳ではない事は分かる。

 というか、明らかに怒っている。その理由には、なんの心当たりも無いけど、間違いなく私、佐伯佳奈に怒っている。

「あなたが、佐伯佳奈さん?」

「左様ですが……な……なんの御用でしょうか………」

 口調だけはなんとか、情報屋佐伯佳奈を保てたが、心に余裕は全く無い。

 椅子の上で背を反らして、さやかちゃんから少しでも離れようとしながら返事をする。

「朝倉君に、女の子の情報を集めて教えてるって本当?」

「えっ、まあ……そうでございますが……」

 普段の私なら『そりゃあ情報屋でございますから』なんて言って、営業トークを始めるのだけど、今のさやかちゃんにそれをやったら、顔面に鉄拳が飛んできそうな気がする。

「他人のプライベートを、漏らしたりしてないでしょうね」

「と……とんでもない………」

 正直な所、プライベートな情報もステータスオープンのチートで知ってるけど、それを提供したことは無い。

 まだしてない。してなくて良かった。

「私が伝えているのは、どのくらいの距離感が良いかとか、好きな食べ物は何かとか、そういう当たり障りの無い事だけです。それ以上の事は一切言っておりません」

 さやかちゃんは、私の答えを聞きながら、探るような目つきで睨みつけてくる。

 ああ、こんな時に限って、当事者の朝倉くんが居ない。朝倉くんが居れば、私の潔白(と言っていいのか分からないけど)を証明してくれるのに。でも、ギャルゲー主人公って、こういう場面には現れないよなぁ。

「今の話、本当? 嘘だったら承知しないわよ」

「勿論ですとも、こんな事で嘘をついて、橘さんに睨まれでもしたら、寝るにも寝られませんから」

 さやかちゃんの威圧に怯えながら、なんとか答える。

 実際、ヒロインちゃんとの関係に角が立つのは不味い。下手したら、朝倉くんがヒロインちゃんと不仲になるより不味い。

 悪い噂が出回ったら、情報収集のためにチラ見するのも不可能になるかもしれない。

「分かったわ、今回は信じてあげる。だけどもし、嘘をついてたら、タダじゃおかないから」

「え……ええ、肝に銘じておきます」

 さやかちゃんは、ようやく全身に滾らせていた怒気を収めてくれた。けど、その上半身は、更にずずずいっと前に乗り出して、顔と顔との距離が近づく。

「最後に一つ聞くわ。アタシの事、何か朝倉君に言った?」

 言った。なんなら最初に言ったのが、さやかちゃんだった。空手部の橘さやかさんは、朝倉くんに好感を持っているって。押したら多分イケるって。

 ストレートに言ったら、鉄拳制裁が飛んで来かねない。でも嘘は言えないから、フワっとぼかして伝えて、ここは凌ぐしかない。

「あ……ハイ、好意的ではあるだろう的な事は、言いました」

「それだけ?」

「それだけです。特に情報をくれと言われませんでしたので」

 これは、まあ本当だ。さやかちゃんの情報が欲しいと、直接言われた事は一度も無い。

 言われてなくて、正直助かった。

 この性格なのにカワイイ物好きで、それを隠して生きてる事を暴露してたら、私は今頃どうなっていた事やら。

「朝倉君が、最近アタシと話す時楽しそうなのは、それが原因?」

「朝倉くんの内心は分かりませんので、流石にそこまでは………」

 私が返すと、さやかちゃんは突き出していた上半身を戻して、少し考える仕草をした後、ほんのり笑った……ように見えた。

「それもそうね。急に押しかけて悪かったわ、それじゃ」

「は……はい、それでは………」

 なんだか、何もかもを薙ぎ倒す、爆速のブルドーザーみたいな人だった。

 怒らせないように、気をつけよう。

 さやかちゃんの好感度数値が、微妙に上がってた事は、朝倉くんにも伝えない方がいい気がする。

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