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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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退く兄、迫る妹

「あっ、佐伯先輩!」

 朝倉くんの代わりに、デートの下見でもしてやりましょうかと街に出たら、偶然ミキちゃんと出会った。

 いや、正確には後藤兄妹。駆け寄ってくるミキちゃんの後ろから、彼女の兄、後藤ケンジロウが、ゆっくりとこっちに歩いてくる。

 こうやって並べて見ると、ちゃんと兄妹って分かるなぁ。顔もちゃんと似てる、そう思うと、後藤ケンジロウも割とイケメンだな。

 髪型次第では、ガールズサイドで攻略対象やれるんじゃないかな。それは流石に言い過ぎかな。

「おや、ご兄妹で、仲のよい事でございますね」

「ハイ! 映画を見に行きたいって言ったら、連れてってやるって言ってくれたんです」

 あら、意外と家族思い。そういえば、この前はわざわざ清桜高校まで妹を迎えに来てたし、根は良い奴なのかも。

「後藤くんは、妹想いな方なのですね。素敵だと思いますよ」

 私は素直に褒めたつもりだったけど、後藤ケンジロウは微妙な顔をしている。まあ、秘密を握ってる相手が、やたらと褒めてきたら、何か裏が無いかと警戒するのは無理もないか。

「お……おう、大切な家族だからな」

 後藤ケンジロウは、私から目を逸らしながら、頭をガリガリ掻いた。

 嬉しさ照れと警戒と、どこに感情を振ったらいいか分からないという心境が、透けて見える。

 うーむ、ガッツリ脅しをかけたのは、あの場では仕方無かったけど、わだかまりが残るのは、あんまり気持ちの良いものではないなぁ。

「後藤くん、ちょっといいですか。内密にお話したいことが」

「お……、おう?」

 内密と聞いて、後藤ケンジロウはますます警戒を強める。

 まあ、そうだよね。自分の生き恥を握ってる人間が、内密の話なんて言い出したら、警戒しない方がおかしい。

「あ、ミキさん。少しの間、離れていてくれますか。二人だけでお話がしたいのです」

「あ、分かりました! ボク、あっちで待ってますね!」

 ミキちゃんは、素直に私たちから離れて、自販機横のベンチに座って、景色を眺め始めた。別に、目線を向けるなとは言ってないんだけど、そこまで律儀に待ってくれなくてもいいのに。

「それで、話ってなんだよ……」

 ミキちゃんが遠くに行くと同時に、後藤ケンジロウは早速話題を切り出した。

 私は、後藤ケンジロウの肩に腕を回して、小声でも聞こえる距離まで寄せてから、ひそひそ話を始める。

「はい、その事なのですが、あの時言いかけた、中学二年の___

 私がそこまで言うと、後藤ケンジロウはあからさまに動揺した。肩に回した腕に、動揺と緊張が伝わってくる。

___時の話。後藤くんがこれから、真面目に生きると約束してくれるなら、永遠に封印すると約束しようと、そういう提案をしたいのです」

 全部言い終わると、後藤ケンジロウの身体から、露骨に力が抜けた。

 どっちかと言うと、拍子抜けしたって言った方が、正しいかもしれない。

「ど……どういう風の吹き回しだよ」

 うーむ、すんごい警戒されてる。思いっきりぶっ刺したから、怖がられるのも致し方なくはあるのだけど、あのヤンキーがここまでビビるなんて、ちょっと申し訳なくなってきちゃう。

「単純に、わだかまりを残しておきたくないと、そう思っただけでございます。

あの場でした事は、ケンカを収めるために仕方無かった事、故に、ケンカが収まれば、秘密を握っておく必要も無い。とまあ、かくの如き次第で」

「ほ……本当かよ。いや、そうしてくれるならありがてぇけどよ」

 まだまだ、警戒心は解けないみたいだ。まあ、そんなすぐには無理だよね、私も急に全部忘れてくれとは言えないし。

「ミキさんと、仲良くしていく上で、そのお兄さんと険悪な関係なのは、心苦しいですしね」

「そうか………、ありがとよ」

 腕に伝わる緊張感が、少しだけ緩んだ気がした。完全に緩和はしてないけど、それでも、少しだけ警戒を解いてくれたみたい。

 ありがとよの言葉には、自分の秘密を守ってくれる約束に対してだけじゃなくて、妹と仲良くしてくれてありがとう、という意味合いもあるように聴こえた。

「ただし、もう不良には戻らないという条件付きですよ? また、無闇にケンカを売ったりしたら、私は容赦しませんので」

********

 後藤兄妹は、清々しい顔で映画館へと向かって行った。

 はー、良かった良かった。全部丸く収まったし、秘密を握っておく必要も無くなった。

 しかし後藤ケンジロウ、間近で見るとますますイケメンだったな。

 もったいないなー、ガールズサイドに出てくれてたなら、攻略したのに。

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