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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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20/42

ギャルゲー世界の強制力

「ねえ、佐伯さん。伊集院さんって、どんな娘?」

 週末、待ち合わせ場所の駅前で、このみちゃんが私に尋ねてきた。

 このみちゃんとマヤちゃんは、まだ面識が無い。金曜日に、二人を会わせようとしたのだけど、相談を受けた時、このみちゃんはもう帰っちゃってた。

 だから、電話でアポを取ったのだけど、マヤちゃんの人となりが分からないのが、不安だったのかもしれない。

「物腰柔らかで人懐っこくて、とても気さくなお嬢様って所ですね。怒ると印象が変わりますが、基本的には穏やかな方です」

「ふーん……、伊集院さんが怒る事って、どんな事?」

「礼儀を弁えないとか、無作法に振る舞うとか、そういう人に対すると、闘争心が燃えてしまうようですね」

 交差点でぶつかった朝倉くん、ケンカを売ってきた後藤くん、きちんと謝れば収まるけど、相手が引かない限り、マヤちゃんも引かない。

「わたし、怒られないかな? 伊集院さんって、凄いお嬢様なんでしょ? マナーとか、厳しいんじゃないかな」

「平気ですよ、自分で言うのもなんですが?私が怒られないんですから」

「そうそう、アタシだって怒られた事ないし、平気平気」

 実際、マヤちゃんはフレンドリーだし、少しくらいお作法がなってなくても、怒ったりはしないだろう。

 それこそ、後藤ケンジロウみたいにオラオラしてなければ。

「そう? それならいいけど……、でも、お金持ちのお屋敷に行くのは、ちょっと緊張しちゃうかも」

「確かに、それは少々緊張するかもしれませんね」

 お金持ちの、しかもギャルゲーに出てくるお金持ちだ。

 そのお屋敷は、それはそれは豪奢な事だろう。

『日本のどこに、そんな土地があるんだよ』と言いたくなるような、バカでかい屋敷に違いない。

 車で迎えに来てくれるらしいけど、絶対純白のリムジンで来る、間違いない。

 なんて思っていたら、どう考えても日本の交通事情には全く合わない、長〜いリムジンが、私達の前に停車した。ちなみにシルバー、ニアピン賞。

 左ハンドルのリムジンの運転席から、灰色の髪を七三に分けた、背広に蝶ネクタイ、白い手袋、モノクルを付けた執事風の老紳士が降りてくる。

 絶対『爺や』だ。顔無しモブだから名前は無いんだろうけど、マヤちゃんは絶対爺やって呼ぶ。

 爺や(仮)は、運転席のドアから、後ろのドアへと移動して優雅にかつ無駄なく開いた。

「お嬢様、到着いたしました」

「ありがとう、爺や」

 ほらみろ、やっぱり爺やだった。ピタリ賞、100万円。

 爺や(確定)が開けたドアから、マヤちゃんが姿を現す。

 今日のマヤちゃんは、清楚な白のワンピース。制服姿もカワイイけど、可愛らしさに加えて、幼さが増した印象。ついでにヒロイン力も上がってそう。

 マヤちゃんは、落ち着いた雰囲気で、車から降りた……かと思ったら、目をキラキラさせて、さやかちゃんの胸に飛び込んだ。

「さやかさん!」

「わっ!」

 さやかちゃんは、唐突なハグに驚きつつも、優しく抱き留めている。

 うーん、流石イケメン。女子だけどイケメン。

 この辺の勘所は、主人公の朝倉くんよりあるんじゃないかとさえ思える。

 朝倉くんは、多分このみちゃんのハグに『急に何!?』って困惑するような気がする。

 というか、この懐き具合よ。好感度数値にすると、80%くらいはある気がする。

 私には、ヒロインから主人公への数値しか見えないけど、多分そのくらいある。そのくらい無いと、こういう行動はしないはず。

 朝倉くんへの好感度が、20%台だと言うのに、さやかちゃんへの好感度は、80%を超えているというのは、ギャルゲーとしてどうなんだ。

 抱きつくなら、主人公の朝倉くんに……って噂をすればなんとやら……………え!? 

 道の向こうから、朝倉くんと、坊主頭の男子の二人が、ジャージ姿でジョギングしながら、こっちに近づいてくる。

「あ、朝倉くん!」

 私が声をかける前に、このみちゃんが手を振りながら、キラキラ笑顔で頭上にハートを浮かべた。

 さやかちゃんにデレデレなマヤちゃんと、朝倉くんにデレデレなこのみちゃん、お嬢様に注意しようか、でも友達と離れさせるのも忍びないという様子の爺や。

 要素の大渋滞。その上、主人公と非モブの男子の二人組が交差点の向こうから来る。カオス。

「あ、小鳥遊さん。それに、みんな揃ってどうしたの?」

 朝倉くんと連れの男子は、ジョギングのままこっちに来て、足を止めた。

 息も切れてないし、汗すらかいてない、流石野球部。坊主くんも体力あるな、野球部の友達かな。

「お嬢様、この方々は……?」

 爺やと呼ばれた老紳士。テンプレに則るなら、マヤちゃんにマナーなど指導する立場にあって、悪い虫がつかないか見張っている立場なはず。

 そういう人からしてみれば、親しげに話しかけてくる男子は、警戒対象なんだろう。

 マヤちゃんは、さやかちゃんに抱きつくのをようやく止めて、爺やの方に目線を向けた。

「うん、お友達。同じクラスの朝倉翔太さん。こっちの人は、知らない」

 知らないにしても、もう少し言い方は無いんだろうか。坊主くんは顔があるから、非モブネームドだろうに、もうちょっと優しくしてあげてよ。

 そんな言い方すると、こないだの後藤ケンジロウみたいに、怒り出してケンカになったり………ん?

「オレだ、後藤ケンジロウだ。この間は、本当に悪い事をしちまった。すまねえ」

 ああーー! そうだ! 後藤ケンジロウだ!

 金髪リーゼントを全部刈って、黒髪の坊主。服装も長ランじゃなくてジャージだから、印象変わりすぎて分からなかった。

 顔あり非モブ男子が少ないから、ビフォーアフターが結びつくけど、そうじゃない世界だったら、気づけないレベルの変わりよう。

「あ……貴方があの時の……」

 マヤちゃんも、まさかアレとコレが同一人物だとは思わなかったらしく、驚いて目を見開いている。

「この前は本当にすまん。アンタがIJIの嬢さんって事を抜きにして、心から謝らせてくれ。アンタがIJIの嬢さんだからって謝るんじゃねえ、一人の人間に対して、謝るよ」

 坊主頭を下げる後藤くんはあの時のヤンキーからは想像出来ないくらい、普通の男子高校生に見える。

 丸刈り自体は、むしろ体育会系らしい爽やかさまである。

 ここだけ見ると好青年。両さん理論で言うならまだマイナス査定だけど、改心したっぽいし、許してあげてもいいんじゃないかという気がする。

 ところで……。

「どうして、朝倉くんと後藤くんが一緒に居るんですか?」

 朝倉くんと後藤くんは、あの時が初対面、しかも、私が暴露した恥を知ってる一人。普通なら、双方関わりたくないと思いそうなのに、一体どういう風の吹き回しだろう。

「たまたまだよ。後藤君が俺に気づいて、声をかけてくれたから、じゃあ一緒に走ろうって」

「オレも、謝らねえとと思って声をかけたら、一緒に走る事になって、それでこう……」

 朝倉くんは、とんでもないお人好しなのか、もしくは単なるおバカなのか。

 まあ、完璧超人では逆に主人公は出来ないから、少しくらい抜けてた方がいいけど。

「ところで、みんなは何をしに集まってるの?」

 当然の疑問。バカでリムジンが止まってて、女子4人集合してるんだから、そういう疑問が出るのも分かる。

「マヤの家で、お茶会をするの。だからお友達を集めたんだけど………」

 そこでマヤちゃんは、一回言葉を切って、ちらりと爺やの方を見てから、男子二人に目線を戻した。

「今度お茶会をする時、二人は誘ったら来てくれる? 今日は、おもてなしの準備が出来てないけど、来てくれる時は、必ず用意するから」

 おお、いきなり誘ったな。本人に確認取るのが、一番手っ取り早いだろうけど、やっぱり大胆だな。後藤ケンジロウまで誘うとは。

「うん、楽しそうだね。良かったら、ぜひお邪魔させてほしいな」

 朝倉くんは、マヤちゃんの誘いに笑顔で答える。

 ギャルゲー主人公だとしても、女の子の家に招かれるんだから、少しはドギマギしなさいよ。

 ほら、後藤くんは『オレも呼ぶのか?』とか、『いやありがてぇけどよぉ……』とか言ってるぞ。デリカシーという点に限れば、後藤くんの方が上だぞ。

「本当! 絶対誘うから、翔太さんもケンジロウさんも楽しみにしてて!」

「うん」

「お……おう」

 朝倉くんは、素直な笑顔。後藤くんは、誘われた事と、初めて見たカワイイモードのマヤちゃんに、困惑と照れの表情。

「それじゃ! マヤはお茶会するから、行くね!」

「では、我々もこれで失礼いたします。朝倉くんと後藤くんも交えて、お茶会が出来る日を楽しみにしております」

「うん、またね」

「お……おう、またな」

 二人を残して、みんなでリムジンに乗り込む。

「うわ……」

 リムジンに乗るのはもちろん初めて、このみちゃんも、さやかちゃんも、唖然としてる。

 マヤちゃんが「遠慮しないで座って」と言われて、ようやくみんなで座った。

 そういえば、今回も描画範囲外でヒロインが消えなかったのは、なんでだろう?

 というか、情報屋を始めた時、桜子ちゃんが消えちゃった事の方が、珍しい事なのかな?

 もしかすると、間接的にでも、主人公が関与してるイベントなら、描画範囲外でも消えないって事なのかな

 てことは今日、朝倉くんが現れたのは、必然って事?

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