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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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18/42

秘密の主・産業界のヌシ

「なんなのですか、あれ……」

「オートバイです………一応」

「そういう事を、聞いてるのんじゃないと思うよ……」

 ホームルームが終わり、帰る前に朝倉くん、マヤちゃんを交えてお喋りをしている時、外からバカでかい排気音がして、そっちを見たら、学校の正門前にバイクが並んでいるのが見えた。

 いや、あれはバイクとオートバイというより、単車と言った方がいいかもしれない。

 遠くてもよく分かる、ド派手なカラーリングに、ド派手な装飾の単車達。

 そして、特攻服姿の男達。

 はい、どう見ても暴走族です。本当にありがとうございました。

「この前の報復でなければ、いいのですが」

「報復?」

 この前懲らしめた後藤ケンジロウの舎弟か兄貴分か仲間達が、敵討ちに来たとか、そういう理由も考えられる。

 というか、それくらいしか考えられない。

「あのオートバイの主が、この前ケンカになった、後藤くんの仲間達で、彼を懲らしめた私達を、恨んでいるのかもしれません」

「恨んでいたら、何をすると言うの?」

 私の説明に、マヤちゃんが反応して、朝倉くんが補足を付ける。

「例えば、全員で取り囲んで痛めつけるとか、場合によっては、攫って山奥に埋めるとか、海に沈めるとか……」

 朝倉くんが、だいぶハードヤクザ映画で起こりそうな例を上げると、マヤお嬢様は途端に震え上がった。

「そんな怖い話しないで!」

 マヤちゃんは、両手で耳を覆って、やめてやめてと首を横に振る。

 お嬢様にとっても、全くの無縁でもない話だから(身代金誘拐とかあるし)、一応含んでおいてもらいたいのだけど、嫌がる相手に無理強いはしなでおこう。

 まあ、そんなヤクザ映画みたいな事が、ギャルゲーの世界で起こるかと言うと、多分起こら無いのだけど。

「ゴメンゴメン。まあ、狙われるのだとしたら、俺、佐伯さん、橘さんだろうから、伊集院さんが狙われる心配は少ないと思う」

 朝倉くんが謝罪をしながらも、自分の見解を述べると、マヤちゃんは、彼の腕を握って、首を横に振った。

「ダメ、マヤが怪我しなくても、お友達に何かあったら嫌」

 それはそう。私も、朝倉くんがタコ殴りにされてる所なんて、見たくは無い。

 最後の切り札『中学二年の時ーーー!』も、後藤ケンジロウ以外には効かないかもしれない。

 仲間のために義憤に燃えて、殴ってくるタイプの無法者とか、口を聞けぬようにしようとしてくる、バケモノが居るかもしれない。

 なら、警察でも呼ぶしかないか。と思っていたら、パトカーが校門の前まで来た。

 タイミングのよろしい事で。

 パトランプもサイレンもつけてないから、パトロール中に、たまたま見かけただけっぽい。

 タイミングのよろしい事で。

 パトカーから、お巡りさんが降りてきて、単車の軍団と何やら揉めている。

 けど、その揉め方がちょっと変。

 ヤンキー達は、ペコペコ頭を下げてるし、お巡りさんは怒ってる様子も無い。

「なんだろう? 様子が変だね」

 朝倉くんも、私と同じ違和感を覚えたのか、疑問を口にする。

「そうですね。こういう場面、生で見るのは初めてですが、もっと怒鳴り合いになるイメージがあります」

 警察◯◯時みたいな番組だと、ああいうタイプの暴走族は、数を笠に『お巡り何をするものぞ』くらいのノリで威嚇してたりする。

 場合によっては、お巡りさんは警棒を振り回し、倒れた族は足蹴にして制圧、みたいな暴力沙汰になる。

 でも、校門前で繰り広げるられてる光景には、騒擾の気配は無い。和やかですらある。

 あの特攻服の軍団。何をしに来たのか、ステータスオープンで見てやろうか。

 危なそうなら、逃げる算段も立てないとだし。

(ステータスオープン!)

 あ、出ない。てことは、あの中に非モブネームドキャラは居ないのか。てことは後藤ケンジロウも居ないの?

「あら? お巡りさんが、こっちに来るわ」

 お巡りさんが、校舎の方へ歩いてくる。その背中にも、彼らは頭を下げ続けている。

 なんというか、学校に何か確認とか、何かを伝えに行く感じの足取りだ。

 お巡りさんの姿は、校舎の真下まで来て見えなくなり、少ししてパトカーの方へ戻っていく。

「なんだったんでしょう?」

 マヤちゃんが、不思議そうな顔をしているが、答えられる人は居ない。

 朝倉くんが、私に視線を投げてくる。

「これは、情報屋の管轄外でございます」と言ったら、そういうつもりで見てたんじゃないよと、苦笑しながら返された。

 ピンポンパンポーン………

 校内放送の合図が、スピーカーから流れる。このタイミングで校内放送という事は、先程のお巡りさんの用事に関する事だろう。

『一年B組の 朝倉翔太さん 伊集院マヤさん 佐伯佳奈さん 一年 C組の 橘さやかさん 至急 一階職員室まで いらしてください』

「うわ〜……」

 思わず、声が漏れた。

 全員、あの時の関係者だ。てとこは、あの集団は後藤ケンジロウの関係者で間違い無いだろう。

 朝倉くんも、マヤちゃんも、出来れば行きたくないという顔をしてる。

 でも、なんであれ先生が呼んでるんだから、行かなきゃならない。放って逃げて、ヤンキー達が暴れ出そう物なら、それこそヤバいし。

「佐伯さん、伊集院さん、一緒に行こうか……」

「ええ、そうですね。行きたくはありませんが、行くしかないです……」

「うん、マヤも行く……」

 私たちは、観念して職員室へ向かった。

*******

「あなた達、校外でケンカしたんですって?」

 職員室に行くと、学年主任の女先生が、私達に問い質した。

 髪がだいぶ灰色になった、柔和で落ち着いた雰囲気の先生。なお、顔の無いモブだ、ステータスオープンが効けば、上手い言い訳が出来たかもしれないのに。

「はい……」

 朝倉くんが、不承不承と言った感じに、こくんと頷いた。

 ケンカを売ってきたのは相手だし(買ったのはマヤちゃんだけど)、最終的に、暴力行為は最小限(多分)で解決したのだかり、なるべく怒らないであげてほしい。

 とは言っても、ケンカしたのは事実なので、朝倉くんは言い訳をしなかった。

「でもね、今日はその事を咎めるために呼んだんじゃないの」

「え?」

 以外の感に打たれたという感じで、きょとんとした顔の朝倉くん。

 朝倉くん、多分私も同じ気持ち。

 というか先生、それならそうと最初に言ってよ。無駄に緊張しちゃったじゃない。

「学校としても、ちょっとした小競り合いくらい、若気の至りだと思って流したいのよ。でもねぇ………」

 先生は、そこで言葉を切って、窓の外に目線を投げる。

 私達もつられて見ると、そこには相変わらず、ヤンキー、というか暴走族達がたむろしていた。

「あの人達が、どうしても謝りたいんですって。特に、佐伯さんと伊集院さんには、直接謝罪しないと気が済まないらしいわ」

「は……はぁ、左様ですか………」

 特に謝罪したい相手、その中に私が居るのは、まあ分かる。

 後藤ケンジロウの秘密を握っている私に対しては、きっちり筋を通しておかないと、不味いことになると思ったんだろう。

 だけど、なんでマヤちゃん?

 騒動の大元は、確かにマヤちゃんだけれども、謝るならむしろ、怪我をさせた橘さやかちゃんなのでは。

「という訳で、謝罪を受けた上で、追い払ってくれないかしら。もちろん、お巡りさんにも居てもらうし、危険が及ばない配慮はするから」

「わ……分かりました。皆さんも、それで構いませんか?」

*******

 先生に言われて、私達四人は校門の方へと歩いていく。

 近づいて見ると、迫力がある。

 十数台の改造バイクが、並んでいて、そこにバイク以上の人数の特攻服姿の男達が並んでる。そこにパトカーとお巡りさんも居るもんだから、相乗効果で威圧感がマシマシだ。

 やだなー、近寄りたくないなー、こうなると、お巡りさんまで怖く見えてくる。

 私が若干尻込みしていると、朝倉くんが一歩先に出て、先陣を切ってくれた。

 優男だけど、こういう時は男らしくて頼りになる、流石主人公。ヒロイン達の好感度数値、ちょっぴりアップ。

「あっ!」

 暴走族の一人、特攻服じゃなくてツナギを着た、いかにも三下っぽい男が、私達に気づいた。

 慌てて、白い特攻服に、昇り龍と、不動明王と、天上天下唯我独尊の文字を、金色の糸で刺繍した、リーダーっぽい男に報告する。

 茶髪のリーゼントに、素肌に特攻服。腹にはサラシを巻いた、いかにもな見た目。でもモブ、顔の無いモブ、彼の舎弟であろう後藤ケンジロウはネームドだったのに、リーダーはモブ。世知辛い。

 リーダーっぽい男は、三下の報告を受けると、仲間たちに激を飛ばして、ビシッと整列させた。

 全員、後ろで手を組んで、胸を張って、仁王立ち。一応、敵意が無い事を示すつもりなのかな? 威圧感は、増しちゃってるけど。

 その暴走族達に、朝倉くんがゴクリと唾を飲んでから、声をかける。

「俺たちに、なんの用ですか?」

 緊張の一瞬……を感じる暇もなく、リーダーが直角に頭を下げて、号令をかけるかのような声で言った。

「ウチの舎弟が、大変失礼しやした!」

 それに続いて、後ろの十数人も頭を下げて、謝罪の言葉を述べる。

「「「失礼しやした!」」」

 この世界、ギャルゲーだよね? このイベント、原作にもあるの? あるとしたら当時TONAMie、尖りすぎじゃない?

「舎弟のした事とは言え、IJI(アイジェイアイ)グループのご令嬢にケンカを売った事、心からお詫び申し上げやす!!!」

 え、IJIって………あのIJI? さくハイ世界の大企業、IJI?

 世界的家電メーカーで、現実世界で言う所の、◯ニーとか、パ◯ソ◯ックみたいな立ち位置の会社。

 初代さくハイのヒロインには、そこのご令嬢が居たのか。ガールズサイドで、やたら企業名が出てくるのは、そういう事だったのか。

 しかし、情報屋、そんな事も知らんかった。

 マヤちゃんのステータスに、IJIの事書いてあったっけ。無かった気がするけどなぁ。

「それと、佐伯佳奈さん! ありがとうございました!」

「へ?」

 まさかお礼を言われるとは、全く思ってなかったから、思わず変な声が出た。

「天狗になってたケンの野郎の、鼻をへし折ってくれた事、深く感謝しておりやす! アイツ、学校はサボる、ムエタイのジムにも碌にいかねえ、そんな腑抜けた野郎を叩き直してくれた事、本当にありがとうございました!」

「え……あ……はい…………、そ……それは、どういたしまして……」

 不良やってた彼が、真面目になったのは良いことだけど、そのきっかけが私でいいのか、私が彼の生き恥を暴露した事でいいのか、いや、多分ダメだろ。

********

「本日は、急に押しかけちまって、スミマセンでした! それでは!」

 暴走族達は、朝倉くんとさやかちゃんにも詫びを入れた後、それぞれのバイクに跨り(一部は二人乗り)、爆音と共に去っていった。

 お巡りさんは『あいつらヘルメットしとらん、マフラーも改造しとる』とかなんとか言いながら、パトカーに乗って追いかけていった。改造はマフラーどころじゃないと思うんだけど。

「佐伯さん、お手柄だね」

 朝倉くんが、爽やかな笑顔で言ってくる。

 くっ、そういうヒロインに向ける顔をされるとドキッとするんだが。

「お手柄……なのでしょうか? 私がやった事は、正直、嫌がらせでしかないですし、下手したら、彼が更に荒れていた可能性もあります。偶然うまくいっただけにすぎません」

 なんなら、あの場で大暴れを始めて、全員半殺しの目にあっていた可能性もある訳で。今思うと、我ながら無茶をした。

「それでも、後藤くんは反省して、更生しようとしてるんだから、十分お手柄だよ」

 朝倉くんは、私を励ますためか、そう言ってくれるけど、それで納得出来るかと言うと……う〜〜〜ん…………。

 コロンブスが、新ルートでインドを目指したが、それは失敗、全然違う所に辿り着いたけど、それは新大陸の発見という偉業だった。ただし、当初の目的のインド新ルートは、見つけられなかった……みたいな。

 偉業を成し遂げたけど、そのアプローチは間違ってるみたいな。釈然としない事には、変わりない。

「でも! 佐伯さんがいなかったら、アタシはもっと酷いケガをしてたかもしれないし、本当にありがとう。佐伯さんのおかげで助かったんだから」

 さやかちゃんが、そうフォローしてくれる。まあ、それも事実ではある。

「もともとは、マヤのせいで始まった喧嘩で、さやかさんに怪我をさせて、翔太さんも危ない目に合わせて……。それを助けてくれたのは佳奈さんなんだから、もっと堂々としててよ」

 マヤちゃんが、今にも涙を浮かべそうな顔で訴えてくる。

 くっ、こんなカワイイ女の子に、そんな顔されたら、折れない訳にはいかないじゃないか。

 これまでも、そうやって生きてきたから、ヤンキーの危険性に気づかなかったんだろうけど、そりゃそうなるよ。

 このかわいさで、IJIのご令嬢なんて、敵対しようとする人間なんて、それこそ、この前の後藤ケンジロウくらいしか居ないだろうよ。

「分かりました。そこまで言われては、私も素直にお礼を受ける他ありません。ありがとうございます」

 ヒロイン二人と主人公に、これだけ褒められてウジウジしてたら、それこそ情けない。

 私は、三人に向けてお礼を言って、小さく笑った。

 ただ、モブの私に青春イベントがこんなに発生するのは、さすがに多すぎる気がするんだよなぁ。

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