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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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実はガールズサイドの没キャラ

「待ちなさい!」

 さやかちゃんが、朝倉君とマヤちゃん睨んでいるヤンキーの背中に、鋭い声を浴びせる。

「ああん? んだよ。てめーもこいつらの連れか?」

 ヤンキーは、振り返ってさやかちゃんを睨みつけるが、さやかちゃんは怯まなかった。

「アタシは橘さやか。二人の友達。あなたみたいな人は許しておけないの」

 さやかちゃんは、堂々たる仁王立ちでヤンキーと対してる。ヤンキーの背中側では、同じく仁王立ちのマヤちゃん、あなたは下がってなさい、戦えない娘が出しゃばるんじゃありません。

 そして同じく背中側に朝倉君。二人が声を上げるより一足早くに、さやかちゃんが仕掛けた。

「せいっ!」

 空手仕込みのハイキック。大鎌のように振るわれた蹴りが、ヤンキーの頭を掠める。当たったと思ったのに、ヤンキーは当たる寸前で上半身を反らして、その蹴りを回避した。

「お、その蹴りは空手だな」

 ヤンキーが急に、ニヤニヤしだしたと思ったら、ファイティングポーズを取った。

 両肘を肩の辺りまで上げた、ムエタイ式の構えだ。サ◯ットがあんな構えをしてた。

 え、初代のバトルって、こんなに本格的なの? いや、熊とバトルの方がよっぽどだけど、こんな少年誌みたいな展開、ギャルゲーでやるか普通。

「シィッ!」

 ヤンキーが鋭い声と共に、右足を飛ばして、さやかちゃんの腿に蹴る。

 パシンと音高く、打撃音が響く。脚を上げて、蹴りに対する防御をするが、男の蹴りを食らったさやかちゃんは、眉根を寄せた。

「くっ……」

 さやかちゃんが距離を取って、後ろに飛び退く。

 飛び退いた速さを見るに、そんなにダメージは無さそうだけど、マトモにやりあったらマズそう。

 女子が男子にケンカで勝てるとしたら、それは大体、武術の心得の有無なのだろうけど、向こうも武術を使うのなら、さやかちゃんはだいぶ不利だ。

(あのヤンキー何!? バトルイベントは、そんなに難易度高くないはずでしょ!?)

 RPGを作ってきたメーカーによる、RPGパートだけど、本質はギャルゲーのおまけ。

 だから難易度はそんなに高くない、負けてもゲームオーバーとかもない。好感度アップの機会が失われるだけ。

 でも、今の状況的に、それどころじゃ済まない。さやかちゃんが、朝倉君が、マヤちゃんが危ない。

(私に出来る事は………)

 交番に走る? 人を呼ぶ? その時間があればいいけど、さやかちゃんが空手家とは言っても、相手も武術をやってる男、少しの猶予もないかもしれない。

(そうだ!)

 私に出来る事、というか私にしか出来ない事。相手がモブじゃないのなら、出来るかもしれない。

(ステータスオープン!)

 私は、半ばやぶれかぶれで、ヤンキーのステータスオープンを試みた。


後藤ケンジロウ 高校ニ年生。他校生。

性格:血の気が多い、根に持つ、舎弟思い。

好きなもの:喧嘩、強い奴、バイク、麻雀、ムエタイの師匠。

嫌いなもの:弱い奴、偉そうな奴、うるさい女、頭を使う事。

身長:172センチ。体重:70キロ。体脂肪率:15%


 おお、出た。モブじゃなければ、男でも出るんだ。

 って、こんな情報見てる場合じゃない、弱点は、弱点はっ!


備考:三日前にバイクで転倒、腰と肘を痛めている。


 これだ!

「橘さん! そいつ、腰を痛めてます、あと肘も!」

「佐伯さん!?」

「佳奈さん!?」

 朝倉くんと、マヤちゃんが、まさかの登場人物に、びっくり仰天している。

 アナタ達、さやかちゃんが来た時は、そこまで驚いてなかったじゃない。

 モブ娘が来るのはおかしいですか。おかしいですね。私もそう思います。

「ちっ、まだ居やがったか。だけど、どうして俺のケガを知ってやがる」

「情報屋、佐伯佳奈に分からぬ事など、一つたりともございません!」

 私は、電柱の影に隠れながら、声だけは勇ましく、啖呵を切ってみる。

 隠れてるとはいえ、こんな大声を出せば居場所は丸分かりだ。

 微妙に情けないけど、様になってるといいな。

「へっ、言うじゃねえか……だが、ケガの情報だけで、オレ様に勝てると思うなよ!」

 ヤンキーがさやかちゃんに再び向き直る。

 腰と肘を痛めてたって、さっきの蹴りが出せる相手だ。もう一つ二つくらい、弱点は無いものかと、情報ウインドウを下へ下へ………と行くまでも無く、結構直近にあった。

「後藤ケンジロウくん、あなたこの前、うん※を漏らしましたね!」

「なっ……!!」

「4日前、前日に食べた激辛スナックの影響で下校中にお腹が痛くなり、どうにか家に辿り着くも、トイレまで辿り着けず、お尻に大きな汚れを作りましたね!」

 言いながら、更にウインドウを下ると、恥になりそうな事が、出るわ出るわ。ふふふ、無鉄砲に生きてきた自分を呪うがいい。

「おねしょ癖が直ったのは、なんと小四! 貴方の恥、何もかも満天下晒して差し上げましょう!」

「て……テメーッ!」

 おお、思ったより、メンタルに来てるぞ。

 プライド高そうだもんな、もっと大声で言ったら、もっと効くかな?

「このアマ! テメェからぶちのめしてやる!」

 ヤンキー改め、後藤ケンジロウが、私に一直線に向かってくる。

 あ、マズい。私には精神攻撃しか出来ない、肉弾戦に持ち込まれたら、下手したら死ぬ。

「待てっ!」

「させないっ!」

 その刹那、私に気を取られてた後藤ケンジロウに、後ろから朝倉くんが体当たり。前方からは、さやかちゃんがローリングソバット、空手で言うところの回転後ろ蹴りを、お腹に叩き込んだ。

「ぐえっ!」

 後ろから押され、勢いがついた所に前から蹴られ、流石に効いたらしい。

 後藤ケンジロウは、お腹を押さえながら、前のめりに倒れて、腹を抱えて悶えている。

(た……助かった………)

 自分から煽って、怒らせておいてなんだけど、ヤンキーがこっちに向かってきた時は、めちゃくちゃ怖かった。

 本当に、さやかちゃんが居てくれてよかった。

 後藤くんは、肉体的ダメージもあるけど、どっちかと言うと、精神的ダメージの方が大きそう。

 実質、女の子二人に負けたようなもんだからなぁ。プライドはズッタズタであろう。

「な……、なんで知ってんだよぉ………。その事を知ってんのは、家族しか居ないはずなのに……」

 すまんな。どれだけ秘密にしてても、チートの前では無力なのだよ。

 前のめりに倒れてる、後藤ケンジロウを見たら、もう一つくらい、追い打ちをかけてやりたくなってきた。

 さやかちゃんの脚に、青アザを作ったんだから、それくらいはやっていいだろう。

 私は、後藤ケンジロウの近くまで歩いていくと、腕を組んで仁王立ちをした。

「ですから、情報屋佐伯佳奈に分からぬ事など、一つも無いと言ったでしょう。例えば、中学二年の時__

「そっ……それだけは勘弁してくれぇ!!」

 後藤ケンジロウは、私の脚に縋り付いて、懇願してくる。

 さやかちゃんは、『まだやるか』と臨戦態勢に戻ったけど、彼に力が残ってないのを見て、ふっと緊張を解いた。

「仕方無いですね。ただし、交換条件として、今後は無闇にケンカをしない、弱い者イジメをしない事を誓っていただきましょうか」

「誓う! 誓うから、頼む!」

「よろしい。では、この件は水に流してあげましょう」

*******

「橘さん、佐伯さん、助けてくれてありがとう」

 後藤ケンジロウがすごすごと帰った後、朝倉くんは、私とさやかちゃんに深く頭を下げた。

「橘さんはともかく、私は礼を言われるほど、立派な事はしておりませんよ。そもそも、お二人を尾行してた事自体、褒められた事ではございませんし」

 チートで相手のプライベートを丸裸にしておいて、今更言う事じゃないかも知れないが、二人の後ろをこそこそ尾行してた事が、モラル的に良い事とは思えない。

 情報屋は、モラルを捨てなきゃ出来ない事。だからこそ、ヤンキーのクソ漏らしを大声で言えた訳だけど、アレほど品の無い口撃は、そうそうない。

「でも、心配して、ついてきてくれたんでしょ? それに、助けてくれたのは事実だから、お礼くらいは言わせてよ」

 そう言って爽やかに笑う朝倉くん。

 困ったなー。イケメンにそんな事言われたら、照れちゃうなー、得意になっちゃうなー。

「マヤからも、お礼を言わせて! 佳奈さん、さやかさん、ありがとう。マヤがちゃんと謝らなかったから、喧嘩になっちゃったし、さやかさんに怪我までさせて……ごめんなさい」

 マヤちゃんは、さやかちゃんに取りすがる。その身体が、小さく震えている。

 強気に出てたけど、案外怖かったのかも。

「いいのいいの。これくらいのアザ、稽古とか試合の時に、いくらでも付くんだから」

 さやかちゃんは、そう言って笑顔を浮かべる。

 さやかちゃんは、部活以外でも空手道場に通ってて、その道場はバチバチに殴り合うフルコンタクト空手の流派だ。

 本当に、アザくらい日常茶飯事なんだろう。

「でも、助けてくれた事には、お礼を言いたいの。改めて、ありがとう」

 手を取って、上目遣いで見上げる。

 その顔が、ちょっと妙な感じがする。

 なんと言うか、感謝とか、友情とかと言うより………恋する乙女だよね? この顔。

 頬は赤いし、目はうるうるしてるし。

 あー、道理で。バトルイベントをクリアした割りには、朝倉くんへの好感度が大して上がってないと思ったよ。

 まあ、あのソバットは格好良かったし、強い女がカッコ良いのは普遍だよね。

 うん※だの、お漏らしだので精神攻撃を仕掛ける女より、さやかちゃんに大した加勢が出来ない男より、そりゃ魅力的だよ。わかるわかる。

「あぁ……震えが止まらない………。さやかさん、ぎゅってしてほしいです」

 マヤちゃんったら、ケンカが怖かったからって理由にかこつけて、さやかちゃんにハグしてもらいたいんだ〜。あら^〜、いいですわゾ〜。

「お安い御用! って、なんか佐伯さんみたいな言い方になっちゃった」

 さやかちゃんは、照れ笑いをしながらマヤちゃんのハグに応えた。うーむ、見事な百合。ギャルゲーにあるまじき百合。

 それを、微笑ましく眺める私、そして朝倉くん………。

 っておい、朝倉くん。なんか微笑まし気に見てるけど、アナタ今、ヒロインをヒロインに取られかけてる所だからね?

 主人公にあるまじき、ギャルゲーにあるまじき状況だからね?

 三度目になるが言うぞ、しっかりしろよ主人公。

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