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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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RPGの老舗TONAMie

 放課後。

 校門から出ようとする朝倉くんの後をつける、マヤちゃん。それを尾行する、私とさやかちゃん。

 私は好奇心、ついでに情報収集出来たらいいなと思って、後を追う事にした。

 さやかちゃんは、二人がケンカを始めたら、双方を止められるのは自分くらいだと言って、ついてきた。

 まあまさか、取っ組み合いのケンカはしないだろうけど、さやかちゃんが居るのは、心強い。

 先頭の朝倉くんは、特に何を気にするでもなく、歩いていく。

 アレは、なんなんだろうな。

 マヤちゃんが教室に入ってきた時も『あの時の!』とはなってなかったし、その後、朝の出来事をモブ男達と話す事も無かった。

 ギャルゲーの主人公なら、女の子とぶつかった事は話題にしなさいよ。

 鈍感系だとしても(朝倉くんがそうかは知らないけど)、リアクションくらいしなさいよ。

 朝倉くんを先頭にした、謎の行列は、学校の門を出て、住宅街へと向かっていく。

 そのどこかで、マヤちゃんは声をかけるつもりらしい。

 出来れば、早めに声をかけてほしいな。さやかちゃんの服を選んだ時はともかく、今回も、描画範囲外の法則を回避出来るとは限らないし。

「朝倉翔太さん!」

 そんな懸念を他所に、割と早い段階。学校から200メートル程離れた、廃工場の前でマヤちゃんは朝倉くんに声を掛けた。

 こういう時、女子が男子の名前を呼ぶのは、大体甘酸っぱいイベントが起こるのだけど、マヤちゃんの呼びかけが勇ましすぎて、それは無いと確信出来てしまう。

 これからサシの決闘が始まるとか、鎌倉武士みたいに『ヤアヤア我こそは!』と名乗りを挙げてから突撃するとか、そういうタイプの声色だ。

「えっと…………、誰だっけ?」

 おい、朝倉翔太。

 目の前に居るのは、今日、同じクラスに転校してきた女の子だぞ。何故知らない。

 これはもう、鈍感というかシンプルアホ。しっかりしろよ主人公。

「今日、学校に転校してきた伊集院マヤ。そして、朝に交差点でぶつかった伊集院マヤよ! 名前を知らないのは100歩譲るとして、どうして顔も知らないのよ!」

 マヤちゃん、よくぞ言ってくれた。

 この、3の倍数でもないのにアホをかましてる主人公を、しっかり殴ってくれて、胸が空いたよ。

 マヤちゃんの大音声を食らった、当のアホはと言うと、ようやく思い出した様子で、頭上に電球を灯した。

「ああ、あの時の! あの娘が伊集院さんだったんだ」

「あんな出会い方したのに、忘れる方がどうかしてるわよ!」

 うむ、その通り。

 人として、ギャルゲー主人公として、ぶつかった娘と転校生が同一人物だと気づかないのはおかしい。改めて言う、しっかりしろ主人公。

「朝はゴメン。ぶつかった事もだけど、売り言葉に買い言葉で怒鳴ったのも、謝るよ」

 お、素直に謝れる男は、かっこいいぞ朝倉くん。

 マヤちゃんの好感度数値も、0から3に上がったぞ。頑張れ朝倉翔太、モテるための存在なのだから、存分にモテろ。

「む……ぶつかったのはマヤも悪いし、こっちも怒鳴って悪かったわ。……改めて、謝らせて。ごめんなさい」

 マヤちゃんも、怒り顔のままだけど、一応、謝罪の言葉を述べた。

 とりあえず、これで一安心かな。一緒に、電柱の陰で身を潜めてるさかかちゃんも、ほっと胸を撫でおろしてる。

 これで、このイベントは一旦終了かなと思ったその時。

「なんだテメーら! ギャアギャア騒ぎやがって!」

 現れたのは、長ラン金髪リーゼントという『あの時代』のヤンキー。しかも顔がある、モブじゃない、朝倉君以外にも居たんだ、モブじゃない男。

「うわ、今時珍しいよ。あんなヤンキー」

 訂正。初代さくハイ発売当時でも、あのスタイルは古かったらしい。

 この世界の住人である、さやかちゃんが言うんだから、間違いない。

「何よ急に! 私達は今、大事な話をしているの。邪魔しないでくれる!?」

 うわぁ、私達のお喋りしてた時は、あんなにほわほわだったのに、ヤンキー相手に啖呵を切っちゃったよ。

 マヤお嬢様の知識には、ヤンキーが危険だという概念は無いのかもしれない。

 怖くないというより、怖いもの知らず。無知ゆえの威勢。

「んだとこのアマ! 痛い目見なきゃわかんねぇのか!」

 案の定、マヤちゃんの生意気な態度に、怒り心頭なヤンキー。ズンズンと肩を揺らして歩いていき、マヤちゃん達近づいていく。

「やめろっ!」

 目を怒らせて踏み出したヤンキーの前に、朝倉君が割り込んで庇う。

 主人公として、それは正しい行動だけど、一般倫理的に見れば、代わりに謝るか、逃げるか、もしくはお巡りさんを呼ぶかしてほしい。

「邪魔すんじゃねぇ!」

 あ、ヤバい。これケンカになる………っていうかこれ、さくハイ名物、バトルイベントじゃない?

 ガールズサイドにもあった、男の子がヒロインを守って、好感度が上がるやつ。

 それまで、RPGばっかり作ってたTONAMieが、急にギャルゲーに参戦した時、ゲーム業界は上へ下への大騒ぎだったらしい。

 しかし、TONAMieはその辺も抜かり無い。

 ギャルゲーにも、RPGで培ったバトルパートを入れた事で、既存ユーザーの多くを引き込み、新規獲得にも成功。

 それが、さくハイ名物、バトルイベント。

 しかもバトル部分が妙に作り込まれてて、単体でのゲーム化要望は、常にある。出たことは無いけど。

 ガールズサイドで出てきた敵は、熊とかオバケとかだったけど、初代はヤンキーだったのか。時代だなぁ。

「不味い、あれじゃ殴り合いのケンカになる」

 場が殺気立ったのに気づいたようで、物陰のさやかちゃんも、臨戦態勢に入る。

 ガールズサイドのバトルイベントでは、ヒロイン(主人公)の部活次第で、男の子に加勢出来た。

 本編でも、ヒロインの部活次第で、加勢してもらえるんだろう。空手部のさやかちゃんなら、加勢出来るはず。

 マヤちゃんと私は、考えるまでもなく無理。帰宅部二人では、足手まといにしかならない。

 さやかちゃんは、助太刀する気満々だ。本当に、さやかちゃんが居てよかった。

「橘さん、なんとか止めてきてもらえませんか。情けない事ですが、私ではどうにもなりません」

「大丈夫、アタシに任せて」

 さやかちゃんは、キッ目を鋭くさせると、現場へと躍り出た。

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