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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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青春の脱線

「佳奈さん、どこに行くの?」

 お昼休み、お弁当を持って教室を出ようとする私に、マヤちゃんが首を傾げながら、声をかけてくる。

 お弁当はどこで食べてもいいけど、教室で食べるのが普通。

 屋上で食べるのは、ちょっぴり無作法ではあるし、お嬢様にはそういう経験が無いのは想像がつく。

「屋上で、お弁当を食べるんです。友達とも約束していて」

 今日は、さやかちゃんと一緒に食べる予定だ。ちなみに、このみちゃんは中庭のベンチで、朝倉くんと一緒に、という、実にギャルゲー的青春イベントを敢行中である。

「屋上で……、お弁当を?」

 マヤちゃんは、またも首を傾げて、眉根を寄せてる。

 きっと、学校の屋上で食事という発想自体が、無かったのだろう。

「結構いいものですよ。公園みたいに木々はありませんが、満天下でご飯というのは」

 私がそう言うと、マヤちゃんの目に輝きが灯った。

 外で食事をする事の優位性を、自分の体験と結び受けられたらしく、納得したようだ。

「それ、とっても素敵ね! ねえ、私もご一緒していい?」

「ええ、もちろん。友達にも紹介しますね」

 私は、マヤちゃんを連れて屋上へと向かった。

 屋上に出ると、ちょうど地面に正座している、さやかちゃんの姿が目に入った。

「橘さん、お待たせ……してはないようですね」

「そ、今さっき来た所」

 さやかちゃんは、ニコニコ笑顔で返事を返してきた。

 ロリィタ姿のオドオドとした姿もカワイイけど、やっぱり、さやかちゃんは一本気で快活な姿が似合う。

「佐伯さん、そっちの娘は?」

 真っ直ぐな人だから、こういう時も、率直に聞いてくる。うん、やはりこれが似合う。

「今日、転校してきた伊集院マヤさんです」

 私が手でマヤちゃんを指し示すと、マヤちゃんはあの、日本舞踊的なお辞儀をしながら挨拶をした。

「伊集院マヤと言います、本日よりこの学校に転校してきました。よろしくお願いいたします」

 その丁寧な所作に、さやかちゃんは、ぎょっとした後、ドギマギしながら挨拶を返した。……両拳を地面に突いて、深々と頭を下げて。

「た……橘さやか。こちらこそよろしく」

 お嬢様すぎるお嬢様を見て、思考が止まったさやかちゃんは、自分が何をしたのか分かってない感じだった。

 空手の座礼は、手を広げていれば敵意は無さを示して、拳を握っているのは油断しないって意味(って、さやかちゃんのステータスに書いてあった)らしいけど、それは言わないでおこう。

 頭を上げたさやかちゃんは、ぽやぽやした視線を、マヤちゃんに向けている。

 あ、これ、ロリィタショップに入った時と同じ目だ。さてはマヤちゃんのことを、カワイイ物のカテゴリに入れたな。

「マヤさんも、ご一緒させて貰っても、構いませんか?」

「あ……、うん、もちろん!」

 私が言うと、さやかちゃんは我に帰って、笑顔で元気に返事をした。

 ああ良かった、あのまま夢見心地で居られたら、様子のおかしい友達と、知り合って数時間の友達両方の世話をする羽目になる所だった。

 まあでも、気持ちは分かるよさやかちゃん。マヤちゃんカワイイもん。

「私達も、座りましょうか」

「うん」

 私達はコンクリートの上に座る。マヤちゃんはお行儀良く、お尻の下にハンカチを敷いて座った。

「佳奈さんも、橘さんも、いつも空の下でお食事をなさってるの?」

「まあ、いつもでは無いです。それぞれ都合もありますし」

 私と違って、空手仲間も含めて友達が多いさやかちゃんは、お昼の約束が入っている事も多い。

 じゃあなんで、服を選ぶのに私が呼ばれたのかと言うと……………、本当になんで?まあいいや、あの一件のおかげで、仲良くなれたんだし。

 このみちゃんもこのみちゃんで、朝倉くんにくっついていったり、中庭で本など読みながら、一人で食べてる事もある。

「私と橘さんの他に、小鳥遊このみさんという方も、ご一緒する事が多いですよ」

「小鳥遊さんというのは、どんな方?」

 マヤちゃんが、子犬みたいに首を傾げながら聞くと、さやかちゃんはお弁当の蓋を開けながら、簡潔に答えた。

「小鳥遊さんは、三つ編みに眼鏡で、文学部。これだけ聞くと、カタそうな女の子みたいだけど、突拍子も無い事したりする、すっごく面白い娘」

「面白い娘……」

「アタシなんてこの前、ロリィタドレス着せられたよ」

 さやかちゃんは、照れくさそうにはにかんで、頬を掻く。

「ちなみに、とても似合ってましたよ」

 すかさず、さやかちゃんがもっと恥じらいそうな、私の感想を付け足す。テレてる顔が、もっと見たいという欲が半分、シンプルはフォローが半分。

「その話はいいの!」

 ペシっとツッコミを入れながら、さやかちゃんは、恥ずかしそうな表情で笑う。

 ああ、凛としたさやかちゃんもいいけど、フニャフニャのさやかちゃんもいいなぁ、かわいい。

 ツッコミとはいえ、武道家のはたきなのでそこそこ痛かったけど、それは顔に出さないようにした。

「マヤは……あんな服、着たこと無いし、出来れば着たくないです………」

 マヤちゃんは、ロリィタファッションに対する、嫌悪感を隠さない。

 ロリ扱いされるのが嫌い的な事が、ステータスに書いてあったから、ロリィタファッションなんて、以ての外だろうなぁ。

 もしかしたら、ロリィタという言葉自体が嫌いなのかも。

「マヤさんは、ロリィタがお好みではないですか。まあ、人を選ぶ物ではありますからね」

「アタシには無理矢理着せといて〜〜〜」

 さやかちゃんは、口を尖らせ、ジト目で睨んでくる。本気で怒っているわけではないと分かるように、からかいの成分が7割くらい含まれている、そんな顔だ。

「ロリィタで飾られた自分を見て、大喜びでレンタルを決めたのは、橘さん御自身でしょうに」

「うっ……それはそう」

 私も、からかい半分で揶揄うと、さやかちゃんは、バツの悪そうな顔をした。

 マヤちゃんは、話には入れないけど、私達の様子を見て、うふふと上品に笑っている。

「お二人は、とても仲が良いのですね。いえ、その小鳥遊このみさんとも、仲が良いのでしょうね」

「ええ、仲良くさせていただいてます」

 マヤちゃんは、ずっとニコニコしている。と思ったら、頭の上にクエスチョンマークを浮かべて、小首を傾げた。

「今日、小鳥遊さんが一緒じゃないのは、何か理由が?」

「ああ、今日は朝倉君と一緒に食べると仰ってました」

「朝倉君?」

「同じクラスの、朝倉翔太君ですよ。ほら、朝にぶつかったあの男の子ですよ」

 そう言うと、これまで穏やかな、まるで春の陽光のような笑顔だったマヤちゃんの顔が、みるみる険しくなっていく。

「あの時の当たり屋!」

 今!?

 今なの、そのイベント!?

 教室で対面した時じゃなくて、今なの!?

「あ……当たり屋ではないと思いますよ……多分……」

 一応フォローしてみるが、マヤちゃんに届いてる様子は無い。

 頭から湯気を立てて、ぷんすこ怒ってる。

「後で、絶対文句を言ってやるの!」

「程々にお願いしますね……」

 一応、たしなめておきはするけど、この様子じゃ止まらないだろうなぁ。というか、そういうイベントだよねコレ。

 結局、ほっとくしかないか。一応、様子だけは見に行っとこう。

 ちなみに、さやかちゃんは、朝倉くんLOVEな自分の気持ちと、怒る気持ちも分かるマヤちゃんの気持ちの間で、複雑な感情を抱いているらしく、眉毛を八の字に歪ませていた。

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