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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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新ヒロインはベタ展開とともに

「きゃっ!」

「うわっ!」

 交差点で、主人公とヒロインがぶつかるという場面。

 もはやベタすぎて、ギャグの文脈でしか見なくなったような場面が、今まさに私の目の前で起こっている。

 女の子の方は見たことない娘だ。見逃してた? それとも追加キャラ?

 何も分からないけど、ヒロインである事は分かる。

 だって、頭上に好感度数値が浮いてるから。まだ0%だけど。

「だ……大丈夫ですか?」

 二人に駆け寄って、声をかける。

 駆け寄ってから、ゲームの世界なんだから、これで怪我をするわけが無いと気がついたけど、一応、心配してみる。

「ちょっと、どこに目を付けているの!」

「そっちこそ!」

 二人は、私を無視してテンプレ通りの罵り合いを始めた。

 くっ、モブの私には、入り込む余地が無いという事か。

 ならばせめて……。

(ステータスオープン!)

 頭の中で、念じてみる。ステータスオープンは、この世界で私だけが使える能力。

 でも、その能力は単なるステータスチェック機能では無く、生い立ちから何から何まで読めるチート能力だ。

 プライベートすぎる情報はなるべく見ないようにするけど、開示されちゃうのは避けられないから、ゴメンね、名も知らぬヒロインちゃん。


伊集院マヤ 高校一年生。転校生。

性格:感情の起伏が激しい、お嬢様、人懐っこい、負けず嫌い。

好きなもの:紅茶(特にアールグレイ)、小動物(特にリス)、観葉植物、チェス。

嫌いなもの:雷、ピーマン、孤独、体格や顔立ちの幼さに触れられる事。

身長:145センチ。

体重……これは見ない、スリーサイズも見ない。小柄で細身だから、軽そうな事は想像がつくけど。

放課後の予定:新しい街の散策、自宅でのティータイム(友達を招くのを密かに夢見ている)。

デート可能エリア:学校、図書館、公園、美術館、老舗の喫茶店。


 転校生か。なるほど道理で見たことない訳だ。

 この子、小柄な上に幼い顔立ち、金髪ロングで碧眼だから、まるでフランス人形だ。

 こないだのロリィタショップのアイテムで飾ったら、絶対カワイイな。絶対怒られるだろうけど。

 この子と朝倉くん、仲良くなるのかな。仲良くなりそうにないよなぁ。まあでも、主人公とヒロインだから、仲良くなっちゃうんだろうけど。

 二人は、一通り言い争いをしてから、お互いに『ふん!』とそっぽを向いて、別方向に歩いて行った。

 行き先は、二人とも学校のはずなんだけど、他の方向に行くのは対抗心からかな。いや、ゲームの都合かも。

 これだけテンプレ通りだと、マヤちゃんは朝倉くん、そして私と同じクラスに転校してくるんだろうな。

 で『あ、あの時の当たり屋!』みたいな事になりながら、そのうち仲良くなっていくんだろうな。

*********

「今日はなんと、転校生を迎える事になりました」

 朝のホームルームの時、先生が案の定、転校生について話し始めた。

 私はもう、マヤちゃんの事は何もかも知ってるけど、一応周りに合わせて「え〜」だとか言ってみる。

 ちなみに先生は、口しかないのっぺらぼうみたいな顔をしてる、ちょっと怖い。私みたいな目隠れモブの方が、若干マシな扱いをされてるらしい。

 先生、この世界の非モブ男性は朝倉くんだけだからね、恨むならTONAMei社の開発スタッフを恨んでね。

「どうぞ、入ってきてください」

 先生が、廊下に向かって声をかけると、開いたままのドアからマヤちゃんが入ってくる。

 マヤちゃんは、チョークを一本取って、お手本のような美文字で、黒板に『伊集院マヤ』と書いた。

「伊集院マヤと言います、これから、よろしくお願いします」

 マヤちゃんは、さっきのケンカ腰とは打って変わって、柔らかい動きで、きれいな礼をして自己紹介した。

 さやかちゃんの、武道家としての礼もきれいだけど、それとは違って、日本舞踊みたいな品がある。

 その所作を見たクラス一同が、感に堪えないような吐息を漏らして、その後小声でカワイイだとか、お嬢様みたいだとか、褒めちぎっている。

 見た目はマジでお人形さんだからね。ロリィタ着せたら、完璧にお人形だもん、本人は着たがらないだろうけど。

「という訳で、今日からクラスメイトが一人増えます。みなさん、仲良くしてくださいね。席は、窓側の一番奥の、空いてるところです」

 窓側の一番奥って、私の席だけど、隣に空いてる席なんて………と思ったら、隣に席が現れた。

 いや、さっきまで無かったよねコレ。どういう原理で現れたの。ゲームの世界だから、その辺のご都合は分かるけども。 

「お隣同士、よろしくお願いしますね」

 隣の席に着いたマヤちゃんは、優しい笑みで挨拶してきた。

「佐伯佳奈と申します。以後、どうぞお見知りおきを」

 私が挨拶を返すと、マヤちゃんは口元に手を当て、うふふと笑う。

「変わった喋り方をするのね、可笑しいわ」

 おかしいと言われて、一瞬たじろいだけど、面白いの丁寧な言い方だと気づいて、すぐに平常心を取り戻した。

「これが地でございますので、どうぞお気になさらず」

「そうなの? まあいいわ、わたしたちお友達になれるかしら」

「もちろん、なんなら今すぐにでも」

 私が手を差し出すと、マヤちゃんは両手で包み込むように握ってくれた。

 柔らかい手。お嬢様らしく、部活も文化系一筋だから、こんなに柔らかい手なんだろうな。

「これから、よろしくね。佐伯さん、いいえ、佳奈さん」

「はい、こちらこそ。伊集院……じゃなくてマヤさん」

 ああ、また友達が増えた。

 なんて順風満帆な、異世界生活なんだろう。

 ………って、ちょっと待て。

 朝倉くんと、マヤちゃんのイベントが発生してないぞ。

 そこだけベタじゃない? それとも、後でイベントが起こるの?

 もしかして、私が知らないだけで、ギャルゲーってのは、ヒロインが主人公じゃなくてモブと友達になるとか、割とよくある話なの?

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