第十三話 Eランク昇格
今日から新しい家族が1人増えました!!!!
産まれてから1ヶ月間ほど病院に入院をしていましたが、無事に退院することができました!
バタバタな日々がこれから増えますが、可能な限り投稿していきます。
これからもよろしくお願いいたします。
獣道を抜けると、木々の向こうに開けた場所が見えてきた。
「……!」
僕は足を速める。そこには、先に逃げていた受験者たちが、肩で息をしながら立っていた。
「お前……大丈夫か?」
誰かが、僕に声をかけてきた。今までにない反応だった。恐れでも、拒絶でもない。純粋な心配の言葉。
「……はい。何とか」
答えると、その受験者は少しだけ驚いたような顔をして、それ以上何も言わなかった。
それでも、胸の奥にほんの少しだけ温かいものが残った。
試験官が駆けつけたのは、それからすぐのことだった。
「状況は把握している。全員、集合地点まで下がれ」
試験官の指示に従い、僕たちは急いで試験開始地点へ戻った。背後から追ってきていた群れの気配は、途中で徐々に遠ざかっていった。
*
集合地点に着いた頃には、日が傾き始めていた。受験者全員の無事を確認した試験官が僕の前に立った。
「ノクト」
「はい」
「お前は、群れを見つけた時点で戦わずに撤退を選んだ。なぜだ」
その問いに、僕は少し考えてから答えた。
「戦う必要が、なかったからです」
「……」
「あの数を相手に、無理に戦えば消耗するだけだと判断しました。だから、まず逃げることを選びました」
試験官は黙って僕を見る。
「だが、結局は戦っている」
「はい」
僕は頷いた。
「逃げ切れないと分かったので、必要な分だけ戦いました」
「必要な分だけ?」
「……全部倒す必要はなかったので」
試験官はしばらく黙って僕を見つめていた。
やがて――
「……なるほど」
それだけ言うと、試験官は軽く頷いた。
「合格だ」
「……!」
思わず、声が漏れそうになった。
「討伐数や採取量だけを見ているわけじゃない」
試験官は続ける。
「状況判断も冒険者にとって重要な力の一つだ」
その言葉を聞いて、胸の奥がじんわりと熱くなった。魔物を倒せたから。強い力を持っているから。
それだけじゃない。自分で考えて。自分で判断して。
そして――生きて帰ることができた。それが、今回の結果につながった。試験官は他の受験者にも短く講評を伝えると、その場を後にした。
*
翌日、ギルドへ向かうと受付嬢が僕を出迎えた。
「昇格試験、合格おめでとうございます」
「……ありがとうございます」
受付嬢は、手のひらほどの小さなプレートを差し出した。
木製ではない。鈍い光を放つ、鉄製のプレートだった。
表面には、以前と同じように――
「ノクト」
とだけ刻まれている。
「これが、Eランクの証です」
僕はそれを受け取った。木製のものより、少しだけ重い。
その重みが、これまでの積み重ねそのもののように感じられた。
「……Eランク」
小さく呟く。誰かに与えられたものじゃない。自分で積み上げた結果が、ここにある。
胸元のプレートを見つめる。
そこに刻まれているのは――僕の名前だけだった。
「Eランクになると、受けられる依頼も増えます」
受付嬢が続けた。
「討伐や採取だけでなく、少し規模の大きな依頼も対象になりますね」
「……どんな依頼があるんですか」
尋ねると、受付嬢は掲示板の方へ視線を向けた。
「そうですね――」
少し考えるように間を置いてから、彼女は言った。
「初心者向けのダンジョンなどもありますよ」
「……ダンジョン」
その言葉が、耳の奥に残った。これまで依頼票の中で何度か目にしたことはあった。
けれど、自分に関係のある言葉だとは思っていなかった。新しい場所。新しい挑戦。
そして――まだ僕が知らない、この世界のもう一つの顔。僕は、手の中のEランクプレートをそっと握りしめた。
「……行ってみようと思います」
「それでは、担当の依頼をいくつかご紹介しますね」
受付嬢はそう言うと、掲示板から数枚の依頼票を手に取った。
夕暮れの光が、ギルドの窓から差し込んでいる。僕はその光を浴びながら、これから先に待つまだ見ぬ場所のことを思った。
ダンジョン。それが、僕にとって次の一歩になる。




