七、#思い出の場所
三日後の日曜日。辻村はある場所にいた。
既に誰も居ない雑居ビルの地下。建物の外壁は剥がれボロボロに朽ちている。中には大量の段ボールと長テーブル、パイプ椅子が積み上がっていて埃っぽい。
辻村は適当に取ったパイプ椅子に座り、スマホを開く。画面にはSNSのDMのやり取りが綴られていた。
『私は犯人を知っています。
思い出の場所で待っています。』
辻村がある人物に送ったDMだ。
辻村はその人物がちゃんとこの場所に来るのか内心不安だったが、しばらくして扉を開く音がして安心する。
黒のパーカーとGパンの謎の人物。フードを深く被っていて顔は分からないが、背丈や華奢な体型からして女であろう。
そう、ここは辻村とその人物が知っている思い出の場所なのだから…。
「貴方なら分かると思いましたよ……ここが、貴方にとって大事な場所なのだってことを」
今は廃れているが、ここは『スイートガールズ』がメジャーデビューする際に行われた、ライブ会場なのだった。
辻村は謎の人物に背を向けたまま話をする。
「楓が殺されてから、三人の被害者を出した事件。根尾心音…浪川健志…美園梢。この三人について調べたところ、ある共通がありました。それがこのアカウントです」
辻村は自身のスマホを見せた。そこには、『TREE WIND』という名のSNSアカウントが表示されていた。
「三人のスマホやパソコンにこのアカウントからのメッセージが届いてました。内容は告発や楓の動画。これによって三人は炎上や殺人等で命を奪われました」
「………………」
今だ黙秘を貫く謎の人物に対して、辻村は歩み寄りながら話を続ける。
「…では、この『TREE WIND』とは何者なのか?少し悩みましたが、貴方を犯人と仮定したら答えは簡単でした。『TREE WIND』。『TREE』は英語で『木』、『WIND』は『風』。これを組み合わせると……………『楓』。上杉楓、貴方のことです!」
辻村はフードを勢い良く降ろした。その人物は黒髪のロングヘアに可愛いらしい顔立ちの女の子…そう、事件で死んだと報道されたアイドル上杉楓が、そこに立っているのだった…。




