六、#辻村心平
『続いてのニュースです。昨日午後三時過ぎ頃、都内のマンションで人気アイドルグループ『スイートガールズ』のマネージャーをしていた美園梢さんが、突然侵入してきた男に刃物で刺され、死亡しました。刺した男は先月亡くなった『スイートガールズ』のメンバー上杉楓さんのストーカーをしていた無職の浪川健志容疑者で、浪川容疑者は美園さんを殺害した後自身も包丁で刺し死亡したとのことで―――』
ここまでニュースを見ると、テレビの電源を消した。静まり返った部屋の中でソファーの背もたれに倒れ、物思いにふける一人の男。
(また楓絡みの人間が死んだか…)
男の名前は辻村心平、三十歳。都内のマンションに一人暮らし、仕事は在宅のプログラマーだ。短髪の黒髪と童顔のため、実年齢よりも若く見られることもある。
そんな辻村の生き甲斐はアイドル楓の推し活だ。『スイートガールズ』がデビューした頃から追っかけていて、給料のほとんどを楓の推し活に費やすほど熱中し、推し活を続けるために会社勤めから在宅の仕事に変えるほど熱中していた。
辻村はファンの間で『TO』と呼ばれていた。『TO』とは『トップ(T)ヲタク(O)』の略称で、楓推しのファンの中では一番握手会やライブに参加し一番お金と時間を費やしていたため、他のファン達から満場一致で『TO』に襲名されたのだ。
辻村はノートパソコンを開いて、独自で作った掲示板『上杉楓殺人事件の考察』を閲覧すると、大勢の人がコメントをしていた。会社勤め時代に築き上げたコミュニケーション能力のおかげで、一般人だけでなく記者など報道関係に詳しい友人から内密で情報も得ることが出来た。
『リン
・今度は『スイートガールズ』のマネージャーが…
・これって楓の祟り?』
『プリン・デラックス
・祟りとかあり得ない!
・楓は死んでもそんなことはしない!』
『コウジ
・楓に関係ある人間の仕業だろ?』
(楓に関係ある人間…か)
辻村もコメントを見ながら独自に事件の真相を考察してみる。
楓に関係する人物…根尾心音、浪川健志、美園梢の三人。
根尾心音は楓にライバル心剥き出しで、自分が売れるために枕営業してたことがバレて楓を殺した…。
浪川は楓をストーカーしたことで警察から接近禁止命令を下された故の逆恨みに殺した…。
美園梢は担当アイドルの関連グッズを無断で転売したことが楓にバレて殺した…。
憶測ではあるが、全員楓を殺す動機としては十分だ。しかし、現役の記者である友人の話によると、事件当時全員にはアリバイがあるようだった。
根尾心音は深夜番組の収録、マネージャーの美園梢も収録現場に来ていた。浪川健志は住んでいるアパートの大家と家賃滞納のことで揉めていたらしく、近隣住人が目撃していたらしい。
事件関係者全員死んだ今、手掛かりになる有力な情報が途絶えてしまい、辻村は頭を抱えていた。推しを奪った犯人をなんとしても突き止めたくて必死になっていた。すると、
ピロンッ!
辻村のパソコンに一通のメールが届いた。掲示板を見たという人物からで、楓の小学校時代のクラスメイトだという。
辻村はメールを開くと、どうやら写真付きであった。その写真を見て、辻村は驚愕した。
「―――っ!まさか…」
辻村はあるひとつの仮説が浮かび、それからすぐ調査を始めた。
今まで買い集めた『スイートガールズ』のDVDや雑誌を全て読み漁り、楓のSNSから出身地を特定し有休を利用して現地で聞き込みをしたりと、辻村は寝る間を惜しんで調べ周った。
それから一週間後。ついに真実に辿りついた辻村はある人物に連絡をとった。
「…辻村です。ちょっとお願いがありまして――」




