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四、#浪川健志 ストーカー


 『スイートガールズ』のメンバー、根尾心音が自殺した。この騒動により『スイートガールズ』は無期限の活動休止となり、心音のSNSに誹謗中傷したユーザーが特定され逮捕されるなど、『スイートガールズ』は違う意味で注目されるようになった。


 『ルンルン

 ・楓も心音も死んじゃって…

 ・『スイートガールズ』これからどうなるんだ?』


 『からあげ

 ・心音推しです。ショックで仕事休んだ…』


 『ルナ

 ・この事件きっかけに初めて『スイートガールズ』

  知りました

 ・楓ちゃん可愛い子だったな…』  



 心音ファンによるロスや事件をきっかけに『スイートガールズ』のファンになる者が増え、楓殺しの犯人を特定しようとする者がどんどん集まり、結束していった。

 そして、次に特定班が目をつけたのがある男だった。


 『ウサニャンコ

 ・浪川健志(なみかわたけし)怪しい…

 ・楓のストーカーしてた男』


 『タケル

 ・絶対浪川が犯人だ…』


 『KiKi

 ・情報特定よろ!』



 浪川健志(なみかわたけし)。楓に付きまとっていたストーカーで、グループの中でも要注意人物として有名な男だ。楓がデビューした頃から浪川のストーカー行為が始まり、『愛してる』や『結婚しよう』等のファンレターが大量に送られたりプレゼントには盗聴器が仕込まれてたり。ついには楓が住むマンションの前で待ち伏せてたりと、浪川の行動は常軌に反していた。

 そんな浪川の行動に恐怖を感じた楓が警察に事情を話し、浪川は接近禁止命令が出されたのだ。


 『コハル

 ・浪川、接近禁止命令された逆恨みに楓を…

 ・絶対に許さない…』


 『たけし

 ・浪川の住所特定!

 ・◯◯県✕✕市二丁目…』


 『MEGUMI

 ・浪川がよく利用するコンビニ、私の近所だ

 ・引き続き特定よろ!』
















 「楓…なんで死んじゃったんだよ…」


 とあるアパートの一室にいる、楓の元ストーカーこと浪川健志。築二十年以上のボロアパートの一階で一人で住んでいる浪川の部屋は、一昔前のガスコンロキッチンとガスで点く小さいお風呂と和式トイレ。部屋の古さ以上に目立つのが、壁中に貼られた楓のポスターに所狭しと置かれた楓の関連グッズ。浪川の部屋はアイドル楓でいっぱいであった。


 浪川が楓に出会ったのは、社会人になって二年目の秋だった。日々激務に追われていた浪川が、仕事の帰りに偶然目にした『スイートガールズ』のライブに立ち寄ったのがきっかけだった。当時まだデビューしたばかりの『スイートガールズ』は、今のように知名度もなく人も疎らであった。

 浪川は気晴らしのため最初は乗り気ではなかったが、会場の熱気に負けないくらいの彼女達の熱い歌声とダンスにいつの間にか心奪われていた。

 そしてライブ後の握手会で浪川は運命的な出会いを果たした。楓に出会ったのだ。まだ十二歳だった楓の初々しさに、浪川はあっという間に虜になったのだ。

 

 それ以来浪川は『スイートガールズ』、そして楓のファンになった。ライブや握手会には必ず参加し、有休を利用してグッズ収集やコラボカフェに入り浸ったりと、浪川の生活は『スイートガールズ』一色に染まっていた。

 それと比例して、グループの中心メンバーである楓にファンの域を超えた違う感情が芽生え始めたのだ。歪んだ感情を示すファンレターを送ったりプレゼントに盗聴器を仕込んだり、楓がロケをしている現場に待ち伏せてたりと日に日に行動がエスカレートし、ついには警察から楓への接近禁止命令が出された。


 浪川はこれに納得していなかった。浪川は自分の行動が行き過ぎていることは分かっていたが、決して楓を困らせるつもりはなかった。盗聴器を仕込んだり待ち伏せしたりしてたのは、楓に悪い虫がついていないか心配で見張っていたからで、やましいことは断じてないと浪川自身はそう思っていた。

 なんとか接近禁止命令を解消出来ないかと悩んでいた矢先、突然の楓の死の報道。浪川はショックの余り会社を辞めて現在休職中である。


 「これからどう生きていけばいいんだ…」


 楓という生き甲斐を失い、浪川は絶望のどん底にいた。そんな時だった。




 ピコンッ

 『新着メールが一件です』


 浪川の前にあるノートパソコンに一通のメールが届いた。送り主は『TREE WIND』というSNSアカウントからであった。


 「…誰だ、これ?」


 浪川はスパムメールではないかと怪しんだが、念の為メールを開いてみた。メールには動画のリンクが貼られていて、浪川はクリックした。すると、


 「―――っ!楓!?」


 画面の向こうにいるのは、死んだはずの楓だった。浪川は何故こんな動画が自分に送られてきたのか分からず混乱していたが、それ以上に推しの相手が自分に対して笑顔で手を振っていることに感動していた。

 

 「か…楓…」


 浪川は楓に再び会えたことに歓喜し涙を流していた。すると、画面の中の楓が浪川に話しかけた。


 『浪川さん…私、実はずっと浪川さんが好きでした。でも…私はアイドルの身であり、恋愛は御法度なのは重々承知しています。警察に接近禁止令を出したのは、マネージャーの美園さんに指示されて仕方なく申請をしたんです。本当は浪川さんを傷つけたくなかったんです』

 

 「楓…」


 画面の向こうの楓の本心を知った浪川は、胸を熱くする。本当は自分達は相思相愛だったんだと歓喜と安堵でいっぱいになる。


 『お願いがあります。私達を邪魔するものを排除して欲しいの。そうしたら…私達、ずっと一緒にいられます。浪川さん…貴方を愛してます』







 そこで動画は終了した。全て見終わった浪川は、呆然としていた。


 「楓が…俺のことを…ああああああ!!楓が、俺を愛してるなんて!!ずっと一緒にいたいなんて!!」


 浪川は喜びの余り半狂乱し、部屋の中を歩き回ったりして落ち着いて居られない状況に陥っていた。そして、浪川は楓と一緒に居られるための方法を考えていた。


 「邪魔するものを…排除…」


 すると、浪川は何か閃き勢い良く部屋から飛び出した。



 その手には……出刃包丁が握られていた…。

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