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三、#根尾心音 疑惑


 『楓は✕✕に殺された』


 この書き込みをきっかけに、世間では誰が楓を殺した犯人探しで話題になっている。勿論楓が所属していた『スイートガールズ』でも―――










 「…誰が楓を殺したんだろう?」


 ここは『スイートガールズ』が所属する芸能事務所。楓の死後、これからのスケジュール調整のためにメンバーが集まっていた。 

 誰もが暗黙としていた言葉。口火を切ったのはメンバー最年少の峯岸茜(みねぎしあかね)だった。高めのツインテールが印象的な妹キャラである。


 「ちょっと茜!今はそんな話するんじゃないの」

 「そうよ。今日は今後の活動について話さないと」

 「だって…」


 他のメンバーは茜に不必要な言動を慎むよう釘を刺すが、茜はまだ何か言いたげな感じで渋る。


 「…もし、犯人として疑うなら…心音(ここね)だよね」


 グループのリーダーである赤松理沙(あかまつりさ)がポツリと言った一言をきっかけに、メンバーの視線が一人の人物に注目が集まった。それは部屋の隅でスマホをいじっていた根尾心音(ねおここね)である。


 心音は楓と同じ『スイートガールズ』のメンバーで、楓と同い年の十七歳だ。正統派アイドルとして人気のあった楓とは対照的に、色気があり抜群のスタイルで、グラビアや写真集で人気を集める心音は、グループのセクシー担当で活躍している。


 「な…何よ!私が楓を殺したと思ってるの!?」

 「だって心音…楓に嫌がらせしてたじゃない!衣装破いたりシューズに画鋲入れたりしてたの知ってるんだからね!」

 「そうよ!レッスン中にわざとぶつかったり転ばしたり」

 「匿名使って楓のSNS荒らしてたのみんな知ってるんだから!」


 メンバーからの暴露に最初動揺していた心音だが、一方的な言われようにキレてスマホを床に叩きつけた。


 「――何よ!私だけ悪者みたいに言ってるけど、裏で楓の悪口言ってただろ!?楓ばっかりチヤホヤされてムカつくって!!」

 「そりゃ嫉妬くらいはしたよ!でもあんたみたいに嫌がらせしてまで楓のこと嫌ってなかったよ!」

 「良い子ぶるんじゃないよ!仲良いふりして影でコソコソ除け者扱いしている方が私よりたちが悪いよ!」


 心音と理沙の言い合いがヒートアップし、今にも喧嘩が始まるんではないかと他のメンバーは気が気でなかった。すると、メンバーのスマホの通知音が一斉に鳴り響いた。


 「えっ!?何これ…」


 スマホを確認したメンバーの一人、真希子(まきこ)が驚愕する。


 『TREE WIND

 ・根尾心音 裏の顔やばいwww』

 

 内容は動画付きのSNS投稿だった。真希子は内容が気になってつい動画を再生してしまった。




 『…お前のせいで、せっかく今回センターに選ばれたの駄目になっただろ!!』

 『だって…心音、レコーディング会社のプロデューサーと寝てまでセンターを勝ち取るなんてズルするから…』

 『私は今回に賭けてたんだよ!!何の努力もしないで毎回センターに選ばれる楓と一緒にしないで!』

 『私だって努力はしてるよ。それに、心音だって最近人気出てきてるんだから卑怯なことしなくても充分アイドルとしてやっていける――』

 『あんたと一緒にしないで!!私はこんなガキ臭いアイドルグループなんかさっさと卒業してソロデビューして有名になりたいんだよ!!』





 「これ…心音と楓の会話…?」


 動画が終了する頃には、場の空気が完全に凍りついていた。話の内容からして、去年の新曲で心音がセンターに選ばれた時のことだ。

 『スイートガールズ』は新曲が出る度に毎回ファンによる投票によってセンターが選ばれるシステムを導入している。毎回楓がセンターに選ばれるのだが、去年発売の新曲で異例の投票数で心音がセンターに選ばれた。

 しかし後日心音による不正の投票行為があったことが発覚。心音はセンターを外され、一ヶ月の謹慎処分となり一時期話題になったのだ。


 「心音…最低」

 「まさかこれが理由で楓を…」

 「ひどい…」


 メンバーの冷たい視線が再び心音に向けられる。心音は楓にしか話していない真実が明るみになり、顔面蒼白する。


 「――っだ、誰よ!!こんな動画投稿したの!どうせ私が楓の次に人気あるからって嫉妬してデタラメをでっち上げるなんて」

 「あんたがデタラメだとか言うのは関係ないよ。それより、この動画すごい拡散されてるよ」


 理沙がSNSの画面を開いて心音に見せた。そこには、先ほどの動画に対する大量のコメントが書かれていた。



 『アキ

 ・心音最低!!

 ・そこまでしてセンターになりたいか?』


 『MARIO

 ・枕営業とか終わってるwww』


 『プリンちゃん

 ・根尾心音アイドル辞めろ!!』


 『TOURU

 ・お前が一番ガキ臭いwww』




 「い、いやあああああっ!!」


 未だ止まない誹謗中傷コメントに、恐怖で絶叫した心音は逃げるように部屋から出てしまった。









 その後も流出動画は絶えずバズり続け、それに比例して心音に対するアンチコメントも止むことはなかった。そして更に、匿名による心音の個人情報までもが流出するようになった。


 『匿名

 ・根尾心音 年齢詐称 実年齢ニ十四歳』


 『匿名

 ・中学時代 イジメ加害で停学処分 動画アリ』


 『匿名

 ・一昨年発売の自伝エッセイ 詐称疑惑』



 日に日に止むことのないアンチと個人情報流出に、心音は精神を病み無期限の活動休止にまで追い込まれてしまった。


 そしてそれから三日後。心音が自宅マンションから飛び降りて亡くなった……。


 

 


 

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