第37巻、Beyond the Line of Death, Toward Tomorrow/死線を越えた未来へ
前回のあらすじ3行。
「01001101 01110101 01110100 01110101 01100001 01101100 00100000 01110101 01101110 01100100 01100101 01110010 01110011 01110100 01100001 01101110 01100100 01101001 01101110 01100111……疎通」
「01010010 01100101 01100110 01101111 01110010 01101101 01100001 01110100 01101001 01101111 01101110……改新」
「01000100 01100101 01110100 01100101 01110010 01101101 01101001 01101110 01100001 01110100 01101001 01101111 01101110……決意」
AM03:56。
朝日を迎える前の霧ががったサイバーポリス最上層に聳える白い巨塔、ダイバートポロジム本社貨物搬入口と思われるシャッター前。
「警備員は2人か……」
未だにヴィジュアル系な装いのオレと、猫耳フードのバッドガールな雪女こと相棒のキネシス。
そしてオレンジのエネルギーラインが迸る白いアンドロイド、サイバー太郎。
オレらは貨物用ホバートラックの陰で息を潜めながら、ビル内への侵入策を講じていた。
「アルくん。 ここまで来たのはいいけど、これからどうするの?」
目視した限り、右腕を某エグゼの〇ックバスターみたいにした銀色のアンドロイドのみ。
『自身の次世代機か。 右腕が銃では洗濯物の扱いも難しく、オマケに自身と違って頭がハゲている』
「何を解説してんだよ、サイバー太郎。 如何にも軍用っぽいのに生活感意識してどうすんだよ」
……無駄に心の籠ったフサフサ青髪のアンドロイドジョークはともかくとして、巨大企業の警備にありがちな監視用ドローンなども飛行しておらず、この極端な時間帯に救われたのかもしれない。
「案外、防御は手薄だ。 あの片方の注意をどうにか引くことが出来れば、サイバー太郎に搭載したエンハンス・ロックオンスナイパーで安全にもう片方を狙撃できるハズだ」
「任せてよアルくん! ――――絶対零…『Enhance:Lock-On Sniper』」
「早まるな、キネシス。 まずは石ころか何かの投擲物で音をだな……(――ダァン!――ダァン!)――――は……?」
深緑の左肩にスナイパーマント・右腕がスナイパーライフルと化した、エネルギーラインを緑に輝かせるサイバー太郎。
『…………これが一番早い』
超精密に特化した緑と白のサイバー太郎は瞬く間にアンドロイドの頭を正確に撃ち抜き、銃口に息を吹きかけるような仕草をしてからシャッター前まで歩いていってしまった。
「いや、これしか知らないだけじゃねーか」
「いや、これしか知らないだけじゃないの」
たぶんオレ(わたし)達、キネシス(アルくん)みたいに”口ぽかーん”としちゃってるな。
次に、タイムズスクエアのネオンを反射する無機質なシャッターを目の前にしたオレ達だったが……。
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◇
「ここを開錠するための鍵かスイッチが近くにあるかもしれないな」
――――『Enhance:Gorillize Smasher』
◇◇
――――『はぁぁ…………!』
「アルくん……。 さっきの警備員、鍵持ってないみたいだよ」
SB1-TR003と黒い胸部アーマーの右側に白字で記載されている警備アンドロイドをまさぐるキネシス。
◇◇◇
「参ったな……。 サイバー太郎は何か見つけた…か……!?」
まるでゴリラ同然の強大な紫色の右拳と、その肘に出現した煙火を噴き上げるノズルの存在感。
「サイバー太郎さん……? アルくん、まさかこれって……!?」
――――『フンッ!!』
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緑から変色した、強烈な紫の光線を宿した機械のボディから放たれた絶対的な超怪力。
シャッターに「――バゴン!!」と響かせたかと思えば、そこには人一人は入れる大穴が出来上がっていた。
『…………結局、これが一番早い』
「いちいち力尽くで解決してんじゃね~か!!」
「サイバー太郎さん!? ……また先に行っちゃった」
(001時代からそうだったが、隠密のおの字も知らない脳筋スタイルなのどうにかなんねぇかな……)
仕方がないので、エンハンス・ゴリライズスマッシャーに切り替わったサイバー太郎を追うべくキネシスとシャッターの穴を潜ることにした。
◇◇◇◇◇何はともあれ、潜入開始!◇◇◇◇◇
「暗いな。 ……消灯時間ってこともあり得るか」
「そう…だね。足元に何か転がってたらイヤだな~」
ダイバートポロジム内部へ潜入してみたはいいものの、窓一つ無いのか一寸先は闇といったところだ。
(こういう周りが見えない時ぐらい、キネシスと手でも繋いでやればよかったな)
『視認性……2%』
…………強いて言うなら、サイバー太郎の全身にある紫のエネルギーラインぐらいか……見えてるの。
(ていうかアイツ、性格的にゴリライズがお気に召したらしいな)
「手探りで階段か何かを探そう。 つっても、下手に電気なんて点けたら敵にバレちゃうし……。 なんだこれ、柔らかいな。
――――――あっ」
「アルくん……!? そ、その…揉んでる……おっぱ」
――――『壁沿いで確認したおかげで見つけたぞ、照明の電源』
「い…………へぇっ?」
「やば、キネシスのそこ揉んでたのか……ごめん! …………!?」
相棒に何してんだオレ……と言いかけたところを天井一面のLED照明が遮った。
「な……なにこの…………なに?」
目を疑いたくなるような光景を前に、驚きのあまり言葉を失いかけた顔の赤い相棒。
(さすがにそっと胸から手を離した)
『ほう、警備員の集合住宅だったか。 視認した限りおよそ998体……シフト表には苦労しかねないな』
「いつまで呑気なこと言ってんだよ、人工知能までゴリラになったのか?にしても圧巻だな、これじゃまるで兵馬俑じゃねーか……」
天然脳筋太郎のカウントが正しければ、この体育館のような広い空間で灯りを反射している銀色のアンドロイド軍団は998体。
(ダイバートポロジムはどうしてこんな数を……?)
――アルくん、「アルくん聞こえてる?」
「だ、大丈夫だ。 ……どうした? さっきの不可抗力についてならもうちょい謝罪するけど――」
「いや、そうじゃなくて……。 ――――みんな、アルくんのこと見てない?」
銀のボディに浮かんだ金のエネルギーライン。 そして……オレ一点を見つめる黒い液晶に浮かんだ赤いモノアイ。
『Biological signs.……detected』
(生体反応……検知)
重複して発せられた、998体分の無慈悲なシステム音声。
「どうしてこうなるんだよ~~~!! 『変身キャストドライバー……桃太郎――キャストチェンジ』」
大慌てで腰に銀のベルトを巻き付けてから、桃太郎のデータを携帯型端末キャストパスを翳すことで読み込ませる。
「――変身!」
『Dive in……』
白い光の中で変身を完了したことで発せられた『桃から産まれた正義のサムライ!いよぉ~アッパレぇ!』とのベルト音声の隣で、またしても鳴り響く巨拳ノズルの『キュイイーン!!』という爆炎とともに上がる轟音。
『1人につき332体だ。 ――Here we go!』
無茶苦茶な数字を提案すると、ロケットスタートを切ってアンドロイド軍団まで紫のジャイアントパンチで突撃していった脳筋アンドロイド。
「わたしも行きますか〜。 氷弾、2丁バージョン!」
両手それぞれを拳銃のようなポーズにすることで、指先から氷の銃弾を乱打するキネシス。
「あの関節を狙って斬るしかないか……『アタックチェンジ――桃太郎』……セイヤッ!(ガキンッ)――やばい、全然斬れねぇ……」
…………『Initiating the overwriting of humanity』
(人類の上書きを開始する)
『……自身を製造したダイバートポロジムの次世代機から人類の上書きなどと聞くことになるとはな。 ――――失望した』
003を1体打ち砕いた拳を再度振り下ろすと、巨拳から右腕を引き抜いて左手の甲に触れることでエネルギーラインを紫からオレンジカラーに戻した。
「だぁ〜め、氷弾全然効いてないよ〜!」
キネシスは慌ててオレの隣まで引き返してきた。
迫り来る冷徹なアンドロイド軍団。
無慈悲にも、その右腕にあるキャノン砲には緑色の光が充填されていた。
(まだだ……。 オレは決めたんだ、キネシスとサイバーポリスの朝焼けを見るって。 こんなつまらねーことで、足止めされるワケには!)
「『キャストサーチ』……頼む、このアンドロイド軍団をどうにか突破できる強い主人公を引き当てさせてくれ……!」
――――『エビフライ』
・
・
・
……………………エビ…フラ……イ?
突然の食品名に冷凍食品が如く凍り付いた空気の格納庫フロア。
『………………………………』
突拍子もないワードの登場に、襲い掛かってくるはずのアンドロイド軍団が困惑のあまり一斉に足を止めた。
「アルくん……。 主人公で…合ってるんだよね、それ?」
児童書なのか、はたまた物好きが書いたWEB小説の片隅にあるような作品の主人公なのか……。
『ハズレを引いたのか?』
「すまん、キネシス……サイバー太郎。 オレでも正直言って理解が追いつかない。 ……でも、必ず変身しないと次のキャストサーチが使用できないしな……」
(エビフライに変身して1分……? さすがに死んだかこれは)
いや、キャストサーチは別に完全ランダムというワケではない。
あくまで、状況ごとに最適な主人公をキャストパスのAIが自動識別して選ぶ仕様としてオレが作ったんだし、たぶんコイツには何かがある……と信じたい。
「や、やるか……。 連続変身!」
桃太郎の身体だったオレの体が光のオーロラを身に纏うと、急速に視界が下がっていくのを感じた。
――――……。
――――――――コロンっ。
「うわ、アルくんが…アルくんがエビフライになっちゃった……」
灰色の床に転がる、レンチンしたてのように湯気立った黄金色の衣シャオシャオとした一本のエビフライ。
『短い間だったな、ボイドの恩人よ。 君の訃報は明日にでもジャーナルが美味しく調理してくれることだろう』
「勝手にアルくんを殺すなぁ!」
良くも悪くも……ブラックジョークでわたしと場を和ませようとするのはこのアンドロイド、サイバー太郎。
「……………………」
『……………………生体反応無し。死亡、確認。 ――SB1-TR003は待機位置に戻り、スリープ状態へと移行する』
銀色のアンドロイド軍団はわたし達にすら反応を示すことすら無く、踵を返してしまった。
「あれ、ここのアンドロイドって『生きている存在』にしか反応しないの……?」
わたしはアイスドールで氷の実体を得ているだけだから、幽霊に対して反応しないのは当然だもんね。
対してサイバー太郎も、人間らしい雰囲気の割にれっきとしたアンドロイドだから生き物としては見られな……?
『再起動準備まで、残り10秒…9、8……』
「いや便乗して電源落とさないで〜!!」
自分まで攻撃対象にされているのかと勘違いしていたサイバー太郎さんまで身動きが取れなくなってしまった。
「わたしの氷の体じゃ、熱々のアルくんも重そうなサイバー太郎さんも運ぶの無理だって……」
何もされないが、何もできない。
……何やってるんだろ、わたし。
――――このエビフライ、冷まして食べればアルくんと一つになれるのでは?
魔が差してからのわたしの行動に迷いなどなかった。
「アルくんも、いっそわたしの中で永遠に生き続けていた方が幸せだよね……。 ――絶対零……」
「『変身解除』――キネシス、なに涎垂らしてんの?」
(……あっ、起きちゃったか)
(……まさか、オレを食おうとしたのか?)
いや、まさかな……。
『再起動完了。 ……Hello every one、朝4時に何をしているんだ?』
「他人のこと言ってる場合かッ!! …………あっ」
何故か電源を落としていたらしいサイバー太郎にツッコミを入れたところで、ふと視線を外すと嫌なものを見てしまった。
「……………………ど、どうも〜」
《目と目が逢う 瞬間 隙だと 気付いた》
『……………………Biological signs.……detected. Initiating the overwriting of humanity』
(生体反応……検知。 人類の上書きを開始する)
《戻れない 現実 分かっているけど》
「少しだけこの瞳 逸らさないでぇ〜」
「歌ってる場合かキネシス! おいサイバー太郎も、お前ら早く逃げ……!?」
当然オレ達を待つでもなく、あのアンドロイド軍団は右腕のエネルギー砲の充填を一斉に完了させていた。
(変身を…だ、誰かに変身しないと……!)
焦ってキャストパスを両手で揉みしだいていると……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『おい綾瀬。 チューニングインセクトの紋章が点滅しとるぞ』
『あぁ〜、チューニングスタンプ?アーくんから連絡かな。 ――通話オンにしてみよっか』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ガチャッ』
――――繋がった。
あっ、そうか。 キャストパスの背面には、かつて共闘した主人公…七星綾瀬が押印していたテントウムシの連絡用スタンプが……!!
「……綾瀬ッ! オレだ、アルジだ!! 今3027年のサイバーポリスに居るんだが、とにかくやべえ軍団に囲まれて大変なんだ! 行けそうなら手を貸して欲しいんだが行けるかー?! ――おっ、コイツ変なビーム撃ってきやがって〜!」
複数発射された緑の光線をすんでのところで回避し続けながらも、どうにか救援を求めてみる。
――――『……だる。 やっぱ修羅場じゃん。(ビームってことはロボットとか?)……どうしよっかな〜、ウチの力って生き物か闇概念みたいなの相手じゃないとマトモに使えないんだよね〜〜〜。 ……ちらっ、ちらっ』
……ん?? 他にも誰か居るのか?
「アルくん、前! 避けてぇぇーーー!!」
「……へっ?」
視界を覆った絶望の閃光。
――――――――「の、のわぁああ~~!?」
「はぁっ!? お前ッ……」
「ね、ね……」
キャストパスの背面から突如飛び出してきたのは、白黒囚人服に身を包んだ黒髪ロングの少女。
「……は? ここはどこなんじゃ?妾はさっきまで綾瀬と面会を……?」
虚にも真っ暗な瞳の下に連なる3つずつの黒い単眼、そして鼻の上を斜めに横切る特徴的な切り傷は白い糸で縫合されていた。
「何じゃ……今のは? 背中に蚊でも止まったのかの?って……まーた汝どもか。 はぁ……」
オマケにあの蜘蛛の巣柄の黒い日傘、間違いない。 アイツは……!
「ネガ、フォルテ……!?」
「ほう、憶えておったか。 ……冷凍女め」
…………忘れるはずがない。
七星綾瀬の居る物語『昆楽戦姫アドレディ』の世界で死闘を繰り広げた、七星綾瀬と瓜二つである最強最悪の蜘蛛の女王・ネガフォルテの姿が今、目の前にいるのだ。
「よう、ネガフォルテ。 マッサージ屋は閉店か?」
「……は? 二度とやるワケないじゃろ、この大馬鹿者がっ!」
あ〜これだ、相変わらずの『のじゃロリ系ラスボス女』のノリだよ。
「って、汝はあのとき妾の動きを拘束した白いアンドロイドではないか!? どういうことなのじゃ! まるで意味が分からぬぞ!」
『自身はサイバー太郎。 ……初対面とお見受けするが、事情を説明すると…』
「マイペースなのか、己はぁ!?」
サイバー太郎の天然にあてられて三白眼のネガフォルテ。
(元敵ながら、気持ちは分かる)
「あんまり心配するつもりなかったけど、背中は大丈夫なの?」
「忘れたとは言わせぬぞ、アルジ・キミヒトと冷凍女よ。 『アドレディの資格が無い者の攻撃なぞ、妾には傷一つ付けられん』……とな」
キネシスの心配など杞憂でしかなかった。
そういえばネガフォルテといえば、現状アドフォルテ以外の攻撃を受け付けない無敵の耐性があることを思い出した。
「なに。奉仕活動の鬱憤晴らしじゃ。 ……ここいらで一つ、余興を楽しませてもらおうぞ!」
アンドロイド軍団を相手に、コンクリート床に日傘を突き刺してから左肩に手をやることでそれをブンブンと回していると、その手に黒いカスタネット型の変身器が握られていた。
「進化せよ――『イファンシアラクネリボン』。 ……あっ、そうじゃ」
黒い稲光を放つ変化中の黒いリボンを持ちながら、もう一方の手にある黒い変身器とともにオレの元へ近付いてきた。
「おい、アルジ・キミヒト 。……そのスマホを妾に貸すのじゃ」
「スマホじゃなくてキャストパスつってんだろネガフォルテ! ……て、背面に何しようとしてんだ」
「綾瀬のチューニングインセクトと同じ機能があることを最近知っての。 ……ほれ、これでいつでも妾と『つーしん』出来るぞ」
テントウムシの紋章の下に押印されたのは、深紫に点滅する蜘蛛の紋章だった。
「も〜う! アルくんはまーた女の子との連絡先増やしちゃってるしぃ〜!」
「ざまぁないの〜う冷凍女。 ……さ、準備完了じゃ」
オレとの用事が済んだのかネガフォルテはさっさとアンドロイド軍団側へと振り向くと、そのまま単独で立ちはだかった。
「これが妾の新たな悪の力、『アラクネアンティノミアリボン』じゃ。 極地、恨烙変異」
星に乗る蜘蛛のクレストに遮られているような白黒のリボンを『プライドインセクト』にセットしてから打ち鳴らす。
「良きにはからえ。初めから、ナレーターに変異プロセスを解説させてやろう」
「【? ?】」
「気にするなサイバー太郎。 ……オレ達なんか、もう慣れた」
「うん……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『アラクネ・マザーの恨烙変異コマンドを受けて限界点を超えた同調係数が、インセクト内に凝縮されたゾフォスロンエキスと融合。 展開された変異空間の中、僅か0.05秒でネガレディドレスへと投射成形され、恨烙変異を完了するのだ』
ネガフォルテが静寂な暗闇の変異空間に包まれたことで、その変異が開始された。
◇
プライドインセクトを小気味よく鳴らす。
『タン♪タン♪タタタン♪』
黒いロングヘアーは鮮やかなアメジストカラーへ瞬時に切り替わる。
囚人服も一変。
蜘蛛の巣柄の暗紫なレースドレスへ変化したかと思えば、更に上から北斗七星が刺繍された純白のヴェールが掛かる。
◇◇
『タン♪タン♪タタタン♪』
蜘蛛の刺繍が入ったドレスシューズと黒いマニキュア。
そして真っ暗だった瞳にもアメジストパープルの虹彩が入る。
◇◇◇
『タン♪タン♪タタタン♪』
金色のティアラ・耳飾り・蜘蛛のペンダントが出現。
焼け爛れの痕と切り傷の縫い目、四肢を繋いでいた継ぎ目を他所に、黒と紫のグラデーションタイツに足を通した。
紫と白のウエディングドレス。
彼女は顔に掛かったヴェールを払い除けると、アンドロイド軍団を相手に投げキッスをしてみせた。
――――『タン♪タン♪タタタン♪タタタン、タン♪』
「光も闇も享受せよ、妾の輝く邪悪さを。 『ネガフォルテ・パラドックス』――ふふ、汝の矛盾……今こそ正してくれようぞ」
蜘蛛糸の絡む黒薔薇ブーケを放り投げると爆散し、上から花びらが舞い散った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あの頃の闇の女王然としたネガフォルテとは違う、アドフォルテの持つ光を受け入れた影の姿。
「極地ってお前……何でネガフォルテがアドフォルテと同じ力を持ってんだよ!」
そう、本来なら北斗七星の力を宿した綾瀬の持つ強化形態、アドフォルテ・グランシャリオのものだったハズだ。
「妾もな、至ったのじゃ――新たな境地にな。 ……それより、ここで足を止めてもよいのか? 殿を任せるか、それともここで、巻き添え喰らって挽肉にされるのか」
コイツ、わざわざ助けに……?
「……すまん。 今度焼肉か何か奢ってやるからな、ネガフォルテ」
「……今更で悪いがの、次からは七星音俄と呼ぶのじゃな(や…やきにくじゃと〜!!!!)」
「え、綾瀬さんと同じ名字……?」
「色々あっての。暇なときに妾のスピンオフでも読んでおれ。 ――さあ、早く行け雑魚ども! ……あと、お礼の焼肉も忘れるでないぞっ!」
(いちいちメタいなコイツ……)
『アルジ、キネシス。 先を急ぐのだ』
「分かった。 ――キネシス、オレの中に戻れ!」
「うん!」
隅のエレベーターは電源が入っていなかったため、霊体に戻ったキネシスを取り込んだオレとサイバー太郎はその対面にある階段を駆け上がることにした。
「行ったか。 ……ロボット風情が、一網打尽としてくれるわ」
――――Do Androids Dream of the Sky?
(アンドロイドは空を夢見るのか?)




