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アルジキミヒト ―巨大企業に追われた発明家のオレが【主人公】の力を借りてヤンデレ系雪女とバグった物語を巡るカオスな異世界変身冒険譚―  作者: ユッキング加賀
第7章、サイバー太郎編『Dive in the mission――さあ、任務を遂行しよう』

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第38巻、The Hell continues at the Theater/地獄の続きは劇場へ

前回のあらすじ3行。

「01010011 01110100 01100101 01100001 01101100 01110100 01101000 00111111……隠密」

「01110011 01101110 01100101 01100001 01101011 01101001 01101110 01100111 00111111……潜入」

「01000110 01110010 01101001 01100101 01100100 00100000 01110011 01101000 01110010 01101001 01101101 01110000……沈黙」

『Enhance:Flash Formula。 ――速いというのは気分が良い。 自身がサイバー太郎なのだと実感できる』

「分かったから、腕引っ張って全力ダッシュするなぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」


 04:06、ダイバートポロジム本社。


『最上階までこのまま走る。 大人しくしているのだな』

「アルくぅ〜ん〜〜〜!! 世界が回って視えるよぉぉ〜〜〜!!」


右腕にブレードを生やした青筋のアンドロイド、サイバー太郎・フラッシュフォーミュラ。


「つーか、何で階段なのに階段登んねぇんだよぉぉ〜〜〜!!」

『これが一番速いからだ。 ……それとも、舌でも噛んでしまう方が早いだろうか』


キネシスを身体に宿したオレを小脇に抱えたまま、足底の車輪を使って丸みのある階段の壁面を超高速で旋回走行していた。

「ウップ……」

(気持ち悪い。 三半規管の敗北だ)


『アルジ、002……あの交戦した黒いアンドロイドが語っていたのだ。 「世界の平和を維持するには、自己性などあってはならない」という、ここの社長から伝えられた言葉を』

「…………」

『本当に、多様性(ダイバーシティ)を排することは正しいのだろうか? ……確かに、人間の価値観はそれぞれだ。 そのために人間同士での軋轢が生まれ、未だ世界中では戦争が絶えないのだ』

それは――――。

『――――しかし、時に人間はその違いを尊重する。 同一の価値観を持っていたならば、今のような世界にはならなかっただろう』

「サイバー太郎……」

『自身とボイドだけではない。 ほんの短い間であったが……あの店の2人、それに君とキネシスを観察していて知ったのだ。 「違いこそが人間を進化させるのだと」』


白く果てしない螺旋を駆ける。

「お前、まるでニンゲンみたいだな」

『……………………食い止める。 ボイドを、失わないために』


ただ一人の、友達の平穏を守るために。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここからは、スピンオフの世界からやってきた無双系異世界転移主人公……七星(ななほし)音俄(ねが)による『ねがたいむ』であるぞ!


「――現れよ、我が子らよ! 今こそバグジャマーとなりて、世界を闇に染め上げろ!」


 ワサワサと 陰から這い寄る 子蜘蛛たち

                     憑いて傀儡へ 妾の手足へ


         ◇◇◇◇七星音俄、悪夢の一首◇◇◇◇


『応答せよ、SB1-TR003。蜘蛛の生体反応、無し……? ――――バッグジャマァァ~~~!!』

『原因不明、未知のテクノロジーによるハッキングを受けている。 ……至急増…え、ん……バグジャマァ~~!』

よく分からんカラクリの多い建物内じゃが……たまにはこうして暴れるのも楽しいのぅ~。


『止めるのだ003。 私達は同じダイバートポロジムの――――、…………』

カマキリにイナゴ、更にその隣にはハエトリグモなどと。

有象無象と同化したような姿……ロボットバグジャマー達は元同族どもを襲い、喰らい、妾のバグジャマーとしてゆく。

例えるのなら、諸葛孔明が赤壁での大戦を前にして草船を囮に10万本の矢を獲得し……これとは少々違うたか。


「それにしても良い余興じゃな。 仲間だった者同士による血で……いや、オ(・)イ(・)ル(・)でオ(・)イ(・)ル(・)を洗うような惨状は実に飽きぬわ。 ――増えろ ――争え ――そして、哭(な)け」

その場で腰から背中を仰け反らせ、大きく首筋を見せつける我ながらセクシーな妾。

この餓鬼草紙の如きサマは酒のツマミにもなるかと思うたが、そういえば身体はまだ16なのよな……妾。


「はぁ〜まだまだ奴らウザいの〜、妾は無敵だと言うに……」

妾は左手首の発射孔から天井へ白い糸を伸ばしてやると、振り子のように揺られながら群雄割拠とも呼び難い群衆を見下す。

右手にある日傘の先端から糸玉を発射することで、奴らの赤いモノアイを覆ってやりながら。

……悪の女王たるもの、戦場を華やかに盛り上げてやらねばならんとな。


「ほれほれ〜、社交ダンスは独りで踊るものではなかろう! 妾の糸(・)でペアを組むとよいっ!」

妾を吊るす糸を利用して自らを振り回してから切り離すと展開した日傘でふわふわ降りていき、雑魚の群れへと糸を何発も放つ。

「愉快じゃ愉快じゃ! もっと苦しむとよいわ!」

銀のロボット兵の手首同士を手錠同然に括らせ拘束したところを狙い、日傘で次々に無抵抗な奴らの首を落として回る。

「その身によく刻み付けるのじゃな、これが【悪】であると。 ――効かぬ、効かぬぞぉ〜!」

依然として緑のエネルギー弾が何発も飛んできたので糸を切り離して華麗に着地してやると、握っている日傘でその全てを打ち返しながら舞踏会のようにこの身を優雅に翻す。


最近出来た新しい癖として鼻の上を走る大きな縫合跡を指でなぞっていると、途端に更なる悪事を閃いた。

「どれ、茶々でも入れてやろうか。 パリスピモスリボン――『タン♪タン♪タタタン♪』」

パリスピモス……それはトビムシ(スピテ)、モスラ・フェントニ(モストニ)、パリシカリス(ロリコン)・ナオヤイ(弁護士)を束ねた同族(アンセクト)の力。

「あーっはははは! ――嗤え嗤えっ! 悪の女王の御前であるぞっ!!」

妾は恨烙変異(バグビーフォーゼ)の際にコンクリ床へ突き刺した日傘を引き抜く。

傘部分には鉤爪の棘と、ハンドルには黒くて大きな単眼を宿した一対のトンファーへと変貌させてやった。


照明の照らす倉庫内にて群れるバグジャマーのカマキリ頭を足場に、日傘のトンファーを振り回しながら残ったロボットどもへと接近……会敵。

――――傘の棘付き棍を振り出し、鉄槌 ――――クルリと反転してはアームキャノンの振り下ろしをブロックし ――――ハンドルの単眼で拳の如く猛然と突く。


『解析……不能、理解……不能』

『なぜ我々の工場から応援が来ない。 待機中のSB1-TR003、応答せよ。 待機中の――』

――――ガシャン!

「雑兵は雑兵らしく……大人しく散っておれ」


日傘トンファーで上から叩き潰してやると、すかさず2つのアスロポドリボンを取り出してやった。

「日傘が2本あるのなら……『タン♪タン♪タタタン♪』……2本別々の武装も行けるのでは……『タン♪タン♪タタタン♪』っと、妾は思い至ったのじゃが……上手くいくかのぅ~」

結果はというと、杞憂であった。

「右手にシザーピオンを、そして左手にはザトカリスを。 んん~、これぞ女のロマンよなっ」

蟹と蠍の混ざった生物的な鋏を生やすシザーピオン。

ザトウムシの細長い8本の脚に10枚ものアノマノカリスのヒレを生やすザトカリス。

『生物反応――多数』

「二刀流――『ネガレディ・イレイザー・サイクロン』」

ザトカリスで発生させた小さな竜巻でロボット兵幾つかの表面に傷を入れつつ、そのめたりっくな体付きを浮かせてゆく。


そして――――


      バタバタと

            ダルマ落としと

      化していた

            紅き鋏と

      ヒレの二刀流

             …………字余り。


気恥ずかしくなってきた故、さっさと『タン♪タン♪タタタン♪』とパリスピモスリボンを装着したプライドインセクトを打ち鳴らし、日傘を1対のトンファーへと戻してやる。

(令和の呂布奉先でも名乗ってやろうと思うたが、どうして今日は締まらんのか……)


『化け物め』

「化け物ぅ~~~?? ――違う、妾は悪の女王じゃ」

背後から迫るロボット兵に回し蹴りを加えつつ、顔の熱を振り払うことで落ち着きを取り戻した。

「……それはそれとして、汝(うぬ)どもへデカいの一発……くれてやろうぞ」

――ブン ――――ブン ――――――ブン……。

ハンドルの単眼を合体させることでそれを両手で振り回し、傘同士の先端に白い糸玉を形成させてゆく。

…………それはやがて巨大な糸玉と化した。


「――地獄へ堕ちろ。 『ネガレディ・ワインド・トゥルースフェイト!!』」

                         ――――圧倒的、破滅。


妾の邪悪なオーラを纏わせし新必殺技は残る銀色の軍団を押し潰し……周囲の作業棚をも倒壊させ……灰色の床を破壊し尽くしたのだった。

(快…感っ……)


とはいうものの――


「かぁ~、ダルいのぅ~~~。 あの変異させた分はここから漏れ出したら面倒じゃが、我が子(バグジャマー)をサトゥルヌするような真似はしたくないしぃ~~~」

ただでさえ朝6時半起床からの自室掃除、それから草むしり&木工作業を昼間までしておったというに。

「もう全身疲れたんじゃ~」

乙女心が変に働いたのか、せっかくの綺麗なネガドレスを汚したくなかったので座ったりはせんかったが「くぅ~~~ん!」などと、妾はつい両腕を挙げてストレッチをしてしまう。

…………あの割れた床を多足で這い回る機械の成れの果てまで、とても妾では面倒見切れんな。


「う~~~む……」

――――パシャリ。


「シャッター音とな!? ……まさかアルジ・キミヒトじゃ――!?」

恥ずかしっ! こんな場面撮られたら嫁にも行けぬが……などと言いかけたのじゃが。


――――――――「良い被写体だ。 君は主演女優にピッタリだね」

其奴は何処からともなく現れた。


「だ、だれぇ……?」

スラっとした高身長と、天井のLED光に緑のウルフカットが照り付けられているキザな声色の男。

「是澤(これさわ)健明(けんめい)。 ……監督さ」


古めかしい映写機がプリントされた白いシャツを覗かせるベージュのワークジャケット。

黒いデニムに生成りなスニーカーと妙に洒落ているが、監督を名乗ったその指フレームは涙ボクロのある深く妖しい瞳を切り取っていた。


「ところでレディ。 ……君のお名前は?」

何かウインクしてきたんじゃが。 しかもレディって呼んできたんじゃが。

「妾は七星音俄。 ……今はネガフォルテじゃが」

「その格好、結婚式から逃げ出してきたのかい? ドラマチックだね」

「んなワケ……。 まぁ、そう見えても仕方ない…かの……」

純白と深紫をしたウェディングドレスのような見た目ゆえ――初見ではな。


「ん~、君のラウズフィルムはアリプションか。 ……もしかして君、脱獄した?」

白黒の雨合羽が描かれた妙なフィルムを白いパトローネに収納すると、それをジャケットの内側へと仕舞い込んだ。

「……不可抗力じゃが、たぶんそうじゃ。 部分的にそうじゃ」

(本当は綾瀬との面談中に転送されてきただけなんじゃがな)

しょうがなく返答したものの、既に是澤健明とやらの視線はバグジャマー軍団に向けられていた。


「――――まあいいか、ベルトクラッパー装着完了。 ……紳士淑女様、本日上映の作品(ラウズフィルム)はこちらです。 『クランクイン――ファクトピーズ』」


「紳士淑女って、他に妾しかおらんだろ」などと変なヤツを見る目でおると、何やらアルジのように腰へ巻き付けたではないか。

映画のカチンコと撮影用カメラが混ざったような……異形の形状。

ベルトクラッパーとやらのカチンコ手前にある丸いスロットへ工場と花束が描かれた不思議なフィルムが装填されると、これまた聞き慣れないシステム音声が鳴り響いた。


「投影((カンッ))――『ディゾルブ――――(③②①)アクション!』」

『終わりの始まりを告げる日常よ、全てはここから始まった!』

すると突然出現した赤いカーテンの幕が上がり、映画館のようなスクリーンにベルトのカメラから強い光が照射された。


――――――――「いざ、開演」


――作業服姿のお花の妖精 ――大型犬 ――そして二頭の馬。

「うわっ!? すりーでぃー……すりーでぃー映画なのか、これはっ!?」

大きな工場を背にした幻影の数々がスクリーンから飛び出してきた後、その奥から一人の影が歩いてきたではないか。


映画好きの妾は知っておる。 あれは正にクロスカッティング手法のようであった。

「……………………」

影(ネガ)はスクリーンを抜け、尚も男の元へと歩み出ている。

「……………………」

是澤健明(ポジ)と重なりあった瞬間(オーバーラップ)、入れ替わったように影が出現しよった。

一方の健明は影としてそのまま歩いていき……消滅してしまった。


「う、汝(うぬ)は一体……?!」

「僕は『ロードムービーズ・ディゾルブ』」

フィルムモニター(顔全面に撮影フィルム)、たなびくディレクションコート(マゼンタの長袖マント)、ブーケ&グローブ(花束の袖口)にシルバーズスーツ(銀幕のボディスーツ)といった風貌。


「――――盛り上げてくれよ、君達。 映画には良いキャストが必要なんだからさ」

するとベルトの上からカチンコ部分を抜き取り、黒いグリップのある拍子木部分とボード部分を真っ直ぐにする。

「人呼んでディレクターズカッター。 ――ふっ! ――はっ!」

それは武というより、もはや舞であった。

「バグジャッ!? 「バッグジャマァァ〜!」 ジャマッアアッ!!」

優雅にも赤いスイートピーの花びらが舞い散る中、黒い斧の刃が次々と相対するバグジャマーやロボット兵に容赦なく襲い掛かる。


「次はこれだよ。 メガホンじゃなくて~"ボイスクラッフォン"」

ディレクターズカッターなる得物をベルトに納めると、マントの裏から取り出したのは黄色い拡声器のようなもの。

「……声出しするから、監督の指示通りに――動(・)い(・)て(・)ね(・)。 『はい、右挙げて〜』」

「バッ…バグッ……」

『またしても突然の動作ハッキングだと、一体……何が起きているのだ』

途端に拡声された指示に合わせて右腕を広げるバグジャマーとロボットの残党。

『左も挙げて、はいっジグザグと腰下ろして〜。 ……よーし良い画だから繰(・)り(・)返(・)し(・)て(・)ね(・)』

右腕を挙げ、左腕を挙げ、腰を落としながら両腕を下げてまた立ち上がり……。

「ロボットのみならず、妾のバグジャマーまで意のままに操るなど……」

残り10体程度にまで減少していたダンスの無限ループに囚われた集団を前に、そのメガホン銃をポイっと投げ捨ててしまった。

「これにて君達は((カン、カン、カン))……オールアップだ 『クライマックスシーン――――(③②①)アクション!』」

突然、2種族入り混じるダンス集団は夜のビル街を背景としたスクリーン……閉ざされた2次元空間に取り込まれた。

『オールオーバー・フィニーッシュ!』

挟まれたスリーカウントの後、映像外から繰り出されたディゾルブの飛び蹴りが炸裂したことで画面内では大爆発を起こしていた。

「はぁ〜〜〜、かっこええのぅ……」

妾はワインレッドの客席に腰掛けながらいつの間にか抱えておったポップコーンをひょいパクしつつ、一本の映画でも観ていたような満足感に浸っておった。

(横F列の13番目。 ……ふふ、定番の座席であるな)


「本日ご来場の七星音俄様。 ……ご覧いただき、ありがとうございました」

徐々にフェードアウトしていくモノクロのスクリーン、そして閉じてゆく赤いカーテン。


「……何だったんじゃ、今のは」

妾は正気に戻ってみると、そこに残されたのは瓦礫の山であった。


「是澤健明……か。 ――そのツラ、憶えたぞ。 ……妾はもう帰る」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あっ、やばい。 ……吐きそうだ」

 果たして、何フロア登ったのかも分からない。


ひたすらに螺旋階段の丸い壁面を1階から最上階まで一気に走り抜けたこともあり、常時サイバー太郎の小脇に抱えられていたオレは完全にアンドロイド酔いしていた。


『我慢しろ、アルジ・キミヒト。 こんな場面で介抱などしていられないぞ』

「ぐぇぇ、飲み会の帰りじゃないんだぞっ――うっぷ!」

「アルくんさぁ〜、……だーめだこりゃ」

呆れた様子の霊体キネシスだが、道中でしていた作戦会議の最中にも我慢出来ずにめっちゃ氷を吐瀉っていたので「他人事だと思うなよ」と言いたい。


 ……そんなワケでオレとキネシス、サイバー太郎はこのダイバートポロジム本社――最上階。

モニターに囲まれたガラス張りの空間へと、随分無理矢理に辿り着いた。


「……おや、君たちはどなたかな? 首元に社員証が無いということは、侵入者かテロリストになるワケかね。 ―― SB1-TR001くん」

「ベリル社長、彼の名はアルジ・キミヒト。 ……世界の破壊者だ。 ――――このサイバーポリスの秩序を滅ぼしかねない、自由を得た者だ」


100万ダラスの圧倒的な夜景を背後に待ち受けていたのは――

ボロボロのフードを深く被った『エネルジオプティマス・サイバーポリス支部〈アーザフ支部長〉』と、

高級そうな黒スーツ姿をした『ダイバートポロジム代表取締役社長〈ベリル・ウィーバー〉』だった。


「破壊してんのはどっちだ、アーザフ! あの時……お前が雪女の世界で主人公を殺したせいで、物語が崩壊したんだぞッ!!」

……忘れるはずがない……。

雪原の血溜まりに沈む2人の遺体、零れた臓腑。

キネシスは出会う前だから知らないだろうが、本当ならばその主人公と結ばれるハズだったんだ。

「…………当たり前の幸せを、当たり前に噛み締めることが出来た……ハズなんだ」

「それがどうした。 ――世界の崩壊は膨大なエネルギーが発生する。 ……必要な犠牲だったのだよ、キミヒト」

「こ、こいつ……」

エネルジオプティマス……。

その利益を追求する企業理念のために、キネシスは故郷を追われたってのか――!

「……………………」

青く透き通っていたキネシスの瞳は紫一色に染まり、静かに握り拳を作っていた。

……隣でぽつぽつと、無言で涙を流していた。


「一見すると美しいだろう、このサイバーポリスという街は。

人の営みが織り成すネオン、貧富差のコントラスト、そして――多様性。

私にはね、それら全てが『腐り切っているように』見えるんだ。

大きな空の下に産まれ育った我々に何故、生まれながらにしてその命の価値に差があるのだと思う?


……『To preach to the wind』(風に向かって説教するようなものだな)。


失礼、君達のような欠陥品に語ったところでそう他ならなかったね。

ここへ来たということは、既に君の中で起動しているであろう例のプログラムもも(・)う(・)じ(・)き(・)、といったところだろうか」

オールバックのブロンド髪を櫛で梳く社長。


……しかし、社長にとって恐らく想定外であることが一つ。

――たった一つだけ、あ(・)る(・)こ(・)と(・)を知らないらしい。


(アル…くん……?)

「――ベリル社長、『対反逆用消去プログラム』ならとっくに無害化したからな」

それはサイバー太郎の修理中に発見した、平和を騙った自分勝手な象徴だった。

「な……なな……Oh my god! おのれ……余計なマネを…しやがってぇ!!!!」

激昂した社長は櫛をコンクリート床へ叩き付けると、必死そうにガシガシと何度もそれを踏み付けた。


(キネシス。 故郷の仇……絶対に倒すぞ)

(……! ――うんっ!!)

やっぱり、相棒の笑っている顔が世界で一番好きだな。


『Honestly, what a flawless piece of work, wouldn’t you say?  Ever since the day I met him, I’ve found myself thoroughly captivated』

(全く、完璧な仕事ぶりだろ? 出会った頃から、彼には惚れ惚れさせられてしまうんだ)

隣のサイバー太郎も冷や汗かくレベルの皮肉で元雇用主を煽り倒していた。


(あり得ない……。 社内で我が把握していた『サイバー太郎』の筋書きから大きく変化している……!?)

アーザフは無言だったが、小刻みに震えているフードが動揺を物語っていた。


「『デヴィガイオ――キャストチェンジ』、とびきりの一撃で終わらせてやる。 ……覚悟しろ、アーザフ」

オレは腰に巻いていたキャストドライバーに赤紫色のサイドポニーヘアと真っ白な肌をした人魚姫のデータを読み込ませた。



「オレはアルジ・キミヒト……」    『My name is(自身は) Cyber taro(サイバー太郎)……』


「全ての世界で主人公になる男だ。――――"変身"」

                   『"Dive in"―――― The friend(ボイドと) of Freedom(アメリカの) and Void(親友だ)』

【次回予告】


「キミヒト、知りたいか? ――――『フューチャーコネクター』」


『自身は……自身…は……!』


「『ピカッとフラッシュ! ドカンとスカッシュ!』 ――――電光石火で、決めてやらぁ!!」

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