表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジキミヒト  作者: ユッキング加賀
第6章、スピンオフ◇ Episode of ネガフォルテ&総集編&新約・分福茶釜コラボ編「妾からの施しを、ありがたく受け取るとよい!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/37

スピンオフ◇ Episode of ネガフォルテ【Re:ツミから始まる刑務所生活】Vol.1「妾は はたらく罪人じゃ…」

「ほう……。読みに来たのだな、読者のニンゲンども。

 妾の名はネガフォルテ。これより、全4話に掛けてほんの余興を拝ませてやろう。

 せいぜい楽しむとよいぞ(ぶくまとか評価とか…色々してくれたら、いっぱい喜んで子分にしてやるのじゃ)。

 それでは本編――――恨烙変異(バグビーフォーゼ)っ!」


(※本作はアルジキミヒト本編24~28巻までのネタバレを含みます)

『被告人を懲役10年に処する』


 ――――あれから1週間、じゃな。


この地はとある海に位置するミューセクトの楽園、ビートアイランド。


かつてここの地下を根城とした蜘蛛の怪物(アラクネ・マザー)であった妾ことネガフォルテじゃったが、一年前に七星綾瀬(ななほしあやせ)というミューセクトと契りを交わした女の手により殺された。


――そしてついぞ二週間前、ましんおーがとかいう鬼どもから物語なんちゃら光線などというワケの分からんビームを受けたことで、蜘蛛の死骸だった妾はどういう因果か七星綾瀬と同じ姿、同じ声のニンゲンとして生まれ変わったのじゃ。

……クリクリな6つの単眼と忌々しい顔の切り傷以外はの〜。


――――『奉仕活動のお時間です。受刑者は直ちに技術室へ移動を開始してください』


続きはまた後じゃな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 トン、テン、カン――トンテンカン。


妾は今、ビートアイランド刑務所で服役してから一週間が経過したところじゃ。

モノクロの横縞囚人服も最初は(ふぁっしょんの趣味が合わず)苦手であったが、お陰様で慣れてしまった。

……傷を覆っていた鉄板は変異後も戻らず、麻酔無しで自ら縫合したものの、すーすーするのがまだ無理じゃったが。


「ふ〜。精が出るのぅ」

今日は社会復帰の一環として、外部向けに販売するという木材を使用したティッシュケース作りに没頭しておった。


「ネガフォルテ〜、これ抑えて〜」

「えっ、あっ…うむ……」

この刑務所で人型なのは妾だけ。

ミューセクトによってはやり辛い作業も時々起こりうるため、こうした作業の時間になると度々声を掛けられるのじゃ。

「思いっきりいくよ〜!――――いっせ〜の……」

釘打ちを手伝わせたいのか、腹部が銅鑼になっているタガメドラはほっそい両手で金槌を挟んで振り下ろす。

「――――っせ!!」

また、これか……。

当然、コイツの振り下ろす先は決まっておる。

……釘なんかではなく、それを抑えている妾の指。

「……なに平気そうな顔してんだよ。早く泣いて痛がれよ、この死に損ないが」


妾には『アドレディ』の資格を持たない者でなければ一切のダメージを0にする耐性があるので何をされても傷一つ負わない。

……心はまた別だったのじゃが。


何事もなかった草毟りの作業が続け様に入ったのち、至福の時を迎える。

(ふふ、今日の献立は妾の大好物『ハンバーグ』じゃ!食事で得られる幸福は何物にも代え難い!……うわ、またアイツらじゃ……)

「何メシの前でニヤニヤしてんの、島の英雄と同じ顔のクセに」

「ネガフォルテちゃん、ご飯が美味しくなるものを持ってきてあげたよ〜」

……そら来た。敵はタガメドラだけではない。

この時間帯になるとたまーに妾の元へ変なものを鎌のような手で器用に持ってくる双子のミズ・ヴィオランティス姉妹じゃ。

「い、要らん。……余計なモンを入れようとするな」

青いポリバケツを持って現れた片割れには嫌な予感しかしない。

「失礼しちゃうな〜、それっ」

ハンバーグとコーンのバターソテーが盛られた皿へ無造作にぶち撒けられたのは、ぶつ切りにされたゴキブリと未だ蠢くミミズであった。

「美味しいから食べなよ。便所裏でわざわざ捕まえてくるの大変だったんだから」

「せっかく草毟りの最中に獲ってあげたんだよぉ〜?――蜘蛛のアンセクトなんだから、早く喰えよ」

お箸とは別に用意されていたスプーンでハンバーグを異物ごとぐちゃぐちゃに混ぜこねられる。

「あっ…、あっ……、やめ…て……」

こんな騒ぎを聞いて他の罪虫ミューセクト達も集まってくる。……当然止めてくれるワケではないのじゃが。

「「喰〜え、喰〜え、喰〜え、喰〜え……」」

手拍子や自身らの音色に合わせて『喰え喰えコール』が始まる。

原型を留めていない一番好きな食べ物の周りを這い回るミミズが嫌でも目に入る。

……最悪だ、ズタズタにされていたゴキブリの死骸とも眼が合ってしまった。

「……………………」

白塗りの天井を力無く見上げ――覚悟を決めた。

「…………、いただきます」

お箸に手を伸ばし、ミミズが纏わり付いた一口を頂く。


『喰った、喰ったわ〜!』

『所詮はアンセクト畜生よ!』

『一生そうやって生き恥を晒しなさいよ!』


(…………死にたい)


『アンタみたいな屑がどうしてアドフォルテ様と同じ顔と声で平気で居られるのよ。しかも()()までしてもらっちゃって。アンセクトはアンセクトらしく、無様にしてればいいのに。……アハハ!!』

『そうよ!この、ニンゲンもどき!』

『全部食べ切るまで監視()てるから。――逃げるなよ』


……こんな時に限って看守の目が離れている。

今日のような水面下の苛めは入所してから毎日のように続いており、その度に内容が"えすかれーと"しておったのじゃ……。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「オォォエェ……、ウロロ…ボぇ……。……っ、…………!」

 夜、1人の独房にある便器に胃の中の物を全部吐瀉った。


……今の妾には、太陽のいない世界がひもじく感じる。

胃酸にやられたのか、喉が焼けるように痛い。

「はぁ…はぁ……。分かっていたことじゃろ、妾。っはあ…はあっ……。自首した…ところで……こうなること、ぐらい……」


今の妾の様に嫌気が差したので唇を強く噛み締める。

当然の帰結ながら、裂けた箇所から血が滲んできた。

――――紅い。

指先で掬ったそれは、今まで手にかけてきたニンゲンたちと同じ色だ。

……でも、妾には眼が8つある。

ニンゲンとしての瞳と、蜘蛛のアンセクトとしての名残として、6つの単眼。


『――この、ニンゲンもどき!』


……虚空を見つめ、ひたすら角膜に乾きを与え続ける。

(己が手に虐げられてきた数知れない者どもの苦しみは、決してこんなものとは比較にならないハズじゃ)

しかし、泣くことは己のプライドが許さなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 あれから更に一週間近く経過した。


妾はこの体質ゆえに何をされても体に痛みは無く、傷も残らない。

……その完全耐性のせいで、彼女らの行為には『見つからない』という担保がされておるのじゃろうがな。


――――……フォルテ、「ネガフォルテ……、大丈夫?」


気が沈みかけていたが、今日は大事な太陽(アドフォルテ)との面会の日じゃった。

週末は学校がお休みだからか、池袋での私服姿で来てくれた。


「ねえ、表情暗いけど…何か、変な意地悪とかされてない?ウチ…心配、しちゃうよ……」

や、やめてくれアドフォルテ……。妾を見て暗い顔なんてせんでほしい。これ以上の地獄は……無い。

――――妾の太陽に影が差すことなど、絶対にあっては……!


「――だっ、大丈夫じゃ!大好物のはんばーぐだって食堂で食べられるゆえ、元気いっぱいじゃ!」

…………ヒトの身になってから、妾は初めて嘘をついた。


「……っ、自分の心にウソなんて付いちゃダメだよ、ネガ」


――――心が痛い。


かつて太陽の親友に手を掛け、また新たな友達(アルジと冷凍女)すらも死の淵まで追いやったこの妾を憐れんで欲しくなかった。

「う…嘘じゃ、嘘じゃないもん……」

「もーう、口ではそう言っても目は正直なんだから。――――下の手通せる穴まで顔を下ろして?」

「…?う、うむ……」

妾と太陽を遮る忌々しいアクリル板の下から恐る恐る顔を覗かせてみる。

「ネガはいつも笑顔じゃなきゃ。……ふき、ふき」

黒いスカートにあるポケットからハート柄のハンカチを取り出し、妾の8つある目元を1箇所1箇所丁寧に拭き取っていく。

「めっちゃ拭いてんのにずっと止まらないじゃん、()。……あの時みたいにネガのこと、力いっぱい抱き締めたいな。

……そうだ、看守さんに相談して――」

「やめるのじゃ、綾瀬!

……妾は…妾は、しゅーいちで施しを賜るためにここにおるのではない。――――帰る」

「ネガ……」


「あっ、おい!そこの囚人、廊下を走るのは危ないから止めるんだ!」


看守アシナガバチバチの引き止めに応じる気など毛頭ない。

着席していたパイプイスをぶちまけて面談室の白い扉を蹴り飛ばすと、妾はただ感情のままに飛び出した。


……走る。


…………走…る……。



「綾瀬、ごめん…なさい……!」

【登場人物紹介】


・ネガフォルテ

2030年2月3日生まれ|生後2週間・見た目は16歳相当・水瓶座

身長…151cm・体重…ヒミツじゃからな|B71・W56・H81 Acup

色白の肌で宿敵だった七星綾瀬と全く同じ顔立ちと声色をしているが、生前の影響で鼻の上に大きな切り傷と、ハイライトが無い真っ暗な人間としての目の下にそれぞれ3つずつ黒い単眼がある。また、全身継ぎ接ぎだらけ。

普段、単眼は黒いマスクで隠している。

キューティクルが綺麗な黒髪のロングヘア。

本来は蜘蛛・蜘蛛の巣柄の黒いゴスロリファッションが好きで、苦手な日光を避けるため日傘を常に差している。

現在は白黒横ボーダーの囚人服姿であり、ブラを着用していないせいで擦れに悩まされている。

また、収監前は傷を覆う鉄板が貼られていたのだが初変異の際にアクセサリーの一部として取り込まれてしまったこともあり、現在は自ら麻酔無しで縫合した状態。

スレンダー体型だが、貧乳をネタにされるとガチギレする。


 本作の主人公。

アンセクトの怨念から誕生した生前のアラクネ・マザー時代ではミューセクトに差別され日陰者として扱われてきた被害者の同志と結託してBB×2(バッドバグズ)を結成し、その首魁としてビートアイランドを危機に陥れていた。

人間の姿への転生後も初めて赴いた池袋で様々なトラブルを起こしてしまっていたが、アルジ・キネシス・アドフォルテの3人がかりで心の闇を浄化された。

生前が肉食だったこともあり、初めての刑務所メニューとしてハンバーグの味を知って以降は大好物となった。

黒いカスタネット型アイテムことプライドインセクトと、専用のアスロポドリボン・イファンシアラクネリボンを使用することで生前の力で戦う黒と紫のネガドレスを着飾った冥闇の女王、ネガフォルテへと恨烙変異(バグビーフォーゼ)することができる。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


七星綾瀬(ななほしあやせ)(アドフォルテ)

2013年5月17日生まれ|16歳・高校1年生・双子座

身長…151cm・体重…ヒミツだけど?……ざーこ、ざーこ|B71・W56・H81 Acup

色白の肌で黒髪の内巻きボブカット。

普段着はストリートファッション(モノクロのスタジャン・ミニスカート・ハイカットスニーカー)を好んで着用。

スレンダー体型だが、貧乳をネタにされるとガチギレする。


 『昆楽戦姫アドレディ』の主人公。

軽口を叩きがちだが、その一方で孤独感を抱えているダウナー系。

ピンク色のカスタネット型アイテムことチューニングインセクトと、専用のバグズリボン・レディバリンリボンを使用することで天道虫の力で戦う赤いドレスの戦士、アドフォルテへと昆楽変異(バグビーフォーゼ)することができる。

現在は期末試験を直前に控えているのだが、元宿敵であるネガフォルテが気にかかってしまいテスト勉強があまり捗っていない様子。

実はママが作ってくれるチーズ入りのハンバーグが大好物。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ