第28巻、超銀河に響き渡れ!真っ赤な無限大《インフィニティ》の明日へ(甘口版)
前回のあらすじ3行。
「ウチはアーくんとキーさんに1年前の惨劇について全てを明かした」
「アーくんはそんな過去を乗り越える機会をくれた」
「ただ、そのままウチが世界から抜け出すと崩壊してしまうらしいので、瓜二つであるネガフォルテを身代わりにしてやった」
(寂しいではないか!妾も早う連れて行くのじゃ〜!!)
(だ〜め。人柱ならぬ蜘蛛柱さん、がんばって)
(そ、そんなぁ〜!もしかして、妾の出番ってこんな狭いところで終わり……!?)
※注意:今エピソードは本来の表現をマイルドに修正したものです。完全版をご覧になりたい方は某外部の姉妹サイトにて同名タイトルもしくは第28巻、超銀河に響き渡れ!真っ赤な無限大の明日へ(辛口版)からご覧いただけますと幸いです※
2029年2月4日、15:00のビートアイランド地下に位置するアンダーワールド最深部、らしい。
座標についても綾瀬から教わるがまま設定したが、まさか地底洞窟にぶち当たるとは今の今まで信じがたかった。
「ここだよな。つーか、暗いな~おい。蜘蛛の巣ばっかで汚いったらありゃしないし……」
といっても通路のような場所。
件のアラクネ・マザーとやらが居るならもっと広々とした空間の筈だし……と、一本道をアイスドールを発現したキネシスと共に進んでいた。
それにしても、四方八方の岩壁に張られた白い糸がなんとも不気味だ。
「アルくん。そろそろ綾瀬さんに報告しよ?」
「そう――『聞こえてたよ』だな……綾瀬!?」
いつの間に通話が開始されてたんだ……。
『紋章が光ってたら通話中のサインだからね』
「先に言えって!……たぶんそろそろ目的地だぞ。っと最後に伝えておきたいことがあるんだが」
初めての試みとなる過去への干渉。
一応想定の上で搭載していたものではあるのだが、綾瀬はその仕様に納得してくれるかどうか。
「タイムパラドックス……簡単に言えば時間をイジって矛盾が起きないようにする対策でな、今回色々やったところでネガフォルテが居る方の世界は何も変わらないんだ。これで起こる変化といえば――分岐。友達を助けた未来とそうでない今の未来とで枝分かれが起きる」
(物語の世界は常に一巡するようになっている。新しいルートが開通すれば基準がそちらに移り、基本古い方は投げっぱなしとなるわけだ)
「……つまり、ここまでしたところで今の綾瀬自身に何が起こるということは全くもってない。
――――それでも、やるか?」
一瞬、向こうから深呼吸のようなものが聞こえた。
『……………………それでも大丈夫。あったっていいじゃん、ハッピーエンドの一つくらい。……ね?』
綾瀬、強いんだな。
「それもそうだな。……見えてきたぞ、あの大蜘蛛のことか」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「極地、昆楽変異!」
再度、橙色の地上に七つ星の光彩を現した白銀の昆楽戦姫。
「果てなき空に輝く星々!アドフォルテ・グランシャリオ!――かつての願い、叶えてあげるね!」
「誰に向かって言うとるのじゃ、アドフォルテ。……その、改めて言っておくがの。妾は己が正義のために暴走していた。その結果がこのザマじゃ」
ネガフォルテの吐露する想いに耳を傾ける。
「どうして、変われなかったのじゃろうな…あの頃の妾は。
それが為すべきことなど信じて疑わなかったゆえ、アンセクト全体の望みから乖離が進んでしまった。
――――アドフォルテ、絶対に同じ轍を踏むでないぞ。」
「分かってる。……ネガフォルテ」
「何じゃ。――っ!?」
「あなたもね。また何かしたら、その度に本気で叱って、慰めて……こうして抱き締めるから」
「……うるさい。これ以上、あの2人を待たせてやるな」
「うん。行ってきます」
早くやることやって、あの子を安心させなくちゃね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方のアンダーワールド最深部、アラクネ・マザーと呼ばれる巨大な怪物を前に3人の勇気ある少女達が立ち塞がっていた。
「行くよ!モデラート、クレシェンド!」
頷く仲間達とともに、甲殻に隠れた翅を展開する赤きアドフォルテ。しかし――。
「ちっ、よりによってテントウムシか……。汝はそこで動くな」
「えっ……!?」
漆黒の巨体から白い糸がビュンと突然飛び出すと、意気揚々していたアドフォルテを絡め捕り、そのまま洞窟の壁に貼り付けてしまった。
「う、動けない……!!」
「綾瀬さん!」「綾瀬っ!」
強靭な蜘蛛の糸。変異前とは比肩し難いほどの筋力を発揮するアドレディさえ、そんな糸束で拘束されてしまっては解きようがなかった。
「――――そこの蝶々。絶望の舞台にハナを咲かせるとよい」
「しまっ……」
本来ならば今際の際。
――――――――――――「間に合えっ!!」――――――――――――――
「あな…たは……!」
「ウチ……!?」
アドモデラートの心臓を狙い澄ました黒き悪夢を遮るように、願いを乗せた白き一番星が瞬いた。
「アドフォルテ・グランシャリオ。――――時空を超えて出張中だよ」
あってはならない死線を蹴り上げ捻じ曲げた一光年が、地底の夜空に北斗七星となって姿を現した瞬間だった。
「もう1人の…綾瀬!?おれ、目おかしくなっちゃったのかな。胸はそのままだけど雰囲気大人びてるし……」
(あーあ、あのボーイッシュなアドレディまで地雷踏んじゃったか)
ウチらの懐かしいやり取りを前に、ハテナ顔のキーさんの隣で頭を抱えるアーくん。
「相変わらずだね、アドクレシェンド!!…南、後でそのFカップから半分ぐらい分けてもらうから」
「ひえっ」
「もう、デリカシーぐらい弁えたらどうですの、南さん。……元気そうで何よりですわ、未来の綾瀬さん」
「舞……!!うん、おかげさまでね!」
感動して肩を震わせてしまったけど、まだこの涙は見せられないと思ったので背を向けることにした。
「よくも妾の麗しき脚を手折ってくれたな……。汝から、先ずは汝から血祭りに上げてやるぞ!白いアドフォルテめ!!」
チューニングインセクトに装着されたのはネガフォルテから託された黒き絶望の力、イファンシアラクネリボンだった。
「今度こそ、アラクネ・マザーを心の闇から助け出す!力を貸して、ネガフォルテ。――――恨烙変異!」
純白のドレスにネガの黒衣が重なり合い、カオスなアドレディドレスを0.05秒で形成した。
「『タン♪タン♪タタタン♪タタタン♪タン♪光と闇のエクリプス、アドフォルテ・オブリガート!……あなたの全て、受け入れてあげる」
聖邪の風貌をした未知なる可能性の化身はその手にカラフルサップバトンを発現させると、静かに先端を3回転回させることで巨大蜘蛛へと照準を合わせた。
「もう1人のあなたが言ってたよ。『過去の妾に思い出させてほしい。本当に望んでいた、手を取り合える地上の姿を……』と」
「もう1人の…妾……!?その闇はまさか、一体未来で妾に何が……!」
本来ならあり得なかったのかもしれない。
奪ったものと奪われたもの、憎しみ合うことを辞めたことで生まれたもっと大切なもの。
「これが、ウチらの解答だよ。――アドレディ・エクスミラージュ・デスティニー!!」
解き放たれた黒白の奔流が、深淵を穿つ槍と化す。
「……見つけた。もう大丈夫だよ、ウチの手に捕まって!」
光差す道となったバトンの光線内をトンネルのように駆け抜けたアドフォルテ・オブリガートは、巨大蜘蛛を形成する闇の中で蹲っていた小さな本体を掬い出すと、来た道を頼りに空いた風穴から共に飛び出してきた。
「キネシス、とうとうあいつやりやがったな」
「うん……!わたし好きだなぁ〜、こういうシチュエーション!」
感心するアーくんと青い瞳をうるうるさせているキーさん。相変わらず見ていて面白い。
救出したアラクネ・マザーを戦いに巻き込まないよう、一旦洞窟の端に避難させる。
「わ、妾は…妾は……」
「怖かったよね。もう、大丈夫だからね」
怯える子蜘蛛の頭を撫でてやると、緊張が解けたのか8つの単眼が潤いを増していた。
「勇気あるよなぁ〜、おれもまだまだ頑張らないと!」
「ええ、未来の綾瀬さんにばかり任せるつもりはありませんわ!」
(そう…だよね。ウチの知っている親友達は、守られるためにここに居るんじゃない)
舞と南はこの世界を護るためにここに居るんだということを改めて思い知らされてしまった。
「はぁぁぁ――――!アドレディ・クイックラッシュ・スローター!!」
ウチの知る1年前にアドクレシェンドがアラクネ・マザーへ顔面の切り傷を遺した鋭利な電光が再びカラフルサップバトンに纏うと、今度は抜け殻の闇から巨大な右の黒脚まで飛び込み、一閃。ーー部屋の隅まで吹き飛ばしてしまった。
「ふふ、優雅に華麗に大胆に。……アドレディ・ブリリアント・キーショット!」
モルフォードリボンがセットされたバトンを指揮棒のように振るうと背中から生やした鍵盤のような蝶の翅から白と黒の連なりが光線として左の黒脚を消し飛ばす。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ねえ、アルくん。……あの飛んで行った脚から、何か出てない?」
「え?――うわっ、気持ちわりっ!?」
此の空間の入口でアドレディ達の様子を見ていたわけだが、まさか切断された脚が影蜘蛛軍団へと変質化するなどとは予想外だった。
「ネガフォルテが蘇った時の話じゃ、倒された後もちゃんと形が残っていた筈だ。宿主が居なくなったことで覆っていた闇のエネルギーが暴走しているのか……」
浄化攻撃の影響か、はたまた歴史改変の影響か、とにかくこの戦況は数的不利だ。
「そんな落ち着いて考えてる場合じゃないよアルくん!取り敢えず、あの子達に知らせないと!――アイスドール!!」
「わっ、おい急になんだよ!」
叫ぶキネシスの全身が砕けた途端、目の前にオレ5人分の高さはあろうかという氷の巨大メガホンが出現した。
『おーーーーーーーーい!!クモ軍団が迫ってきてるから気を付けてーーーーーー!!』
「な、なんですの…あの大きなメガホン……」
「すっげ~~~、欲しいぃ~~~!っていうか、クモ!?さっきおれがぶっ飛ばした脚から何か出てきちゃってるじゃん!!」
リアクションはしょうがないとして、相棒の突発的な作戦は成功したようだ。
「え、声的にあれってキーさん?すっご。……ほら、過去のウチ。これで戦えるでしょ?」
遠くの声の主に目をやると、光る棒の先からカマキリみたいな鎌を伸ばした白銀のアドフォルテがカリカリと白い糸に切れ込みを入れ、赤いアドフォルテの救出作業をしていたようだ。
「ありがとう、その……未来の白黒のウチ」
過去のアドフォルテの拘束も解決したらしい。
「キネシス。そろそろオレ達の出番だ。いいな?」
「そろそろ読者達に存在感示していかないとね!」
「頼むから第四の壁超えようとすんのやめてくんねえかなキネシス……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「囲まれちゃったね。舞、南」
影蜘蛛に囲まれた2人は電撃とレーザーで牽制するも、いつまでも沸き続けるようではキリがない。
「あっ、未来の綾瀬さん……と、今の綾瀬さん」
「さっき助けてくれたんだ。…ね、白いウチ」
「そう、だね」
ウチともう一人の赤いウチはレディバリンの翅で飛んできたものの、正直言って、解決方法が浮かんでいない。
(まぁ、やることは一つか)
「アドレディ・スターダスト・エンブレイス!」
「アドレディ・エクスミラージュ・デスティニー!」
ウチら同一人物コンビによる銀色と黒白の光線で影蜘蛛軍団を焼き尽くすも、その屍を越えてくるように次から次へと後続がワラワラ集まってくる。
「出現元の黒脚さえ何とか出来れば向こうの攻撃の手が止まるんだろうけど、おれらここから動けそうにないし……。――あれ、誰?」
南が子蜘蛛に電撃を浴びせながら空いた左手で銀のベルトを巻いたゴツい人物とキーさんを指差していた。
「アーくん……?」
ウチらのリベンジはウチらの手で、と傍観してくれていたらしいアーくんでもこのままでは不味いと判断したのだろう。
『アタックチェンジ――金太郎』というシステム音声とともに赤い前掛けをした金髪の男の人が巨大なマサカリを召喚すると天井近くまでぶん投げた。
「焼き尽くしてやるか!――『ラストアタックチェンジ、金太郎』」
投じたマサカリまで一息にジャンプした金太郎らしい丸っきり別人と化したアーくんはベルトにスマホみたいなものを3回重ねてから横のスロットに差し込んでいるのが見えた。
「雷…墜とし!!」
マサカリの柄をキャッチすると、稲光を纏い回転しながらあの脚目掛けて急速に落下してくる。
「すっご……」
過去のウチが感心するのも無理はない。
叩き潰すような一撃を受けた闇の脚からは黒煙が立ち昇り、落雷をモロに受けたように炎上し始めたのだ。這い出ようとした影蜘蛛にも延焼していく。
「これで後続は全滅……『変身解除』、いやしてないんかーい!!」
元のアーくんに戻っていく最中に次の問題が発生した。
先程の脚と同じ現象が、抜け殻となっていた闇からも発生していたのだ。
「アルくん!さっきのアラクネ・マザーを通路まで逃がしてきたよ!」
「よくやったキネシス。……しかし、どうするよこれ」
まるで噴水のように影蜘蛛が上から噴出してくる40メートルはありそうな蜘蛛の抜け殻を前に、再びアーくんはシンキングタイムに入った。
「あとは抜け殻だけだってのに。クソ、なんて手数してやがる……。――――手数?それだ!」
(一つだけ、アレに対抗する術がある)
するとニヤリとしたアーくんはスマホ…じゃなくてキャストパスに黒い何かを装着しながら、指をポキポキ鳴らしているキーさんと並んで前に出てきた。
「『エンチャント』、数には数の暴力だろ。……行くぞ、相棒」
「皆にわたし達の本当にかっこいいとこ見せてあげようよ、相棒」
『アドフォルテ!(アドフォルテ!)』との二重に響く音声の後、アーくんはゴツくなった端末をベルトの前に翳した。
「『ダブルキャストチェンジ』――――二重へ……じゃなかった昆楽変異!」
一瞬変異コマンドを言い間違えたアーくんはキーさんとグータッチをすると、ウチら恒例の0.05秒で2人のアドフォルテへと変異を完了した。……したが、何故かキーさんは顔だけそのままで何とも不自然だ。
『昆楽変異!――それはチューニングインセクト使用のコマンドだ。では、変異プロセスをもう一度……。偽物なら別にいいです』
「うっせえ、二度目と来るな!――『ダブルアタックチェンジ・アドフォルテ』。……使わせてもらうぞ、アントベルリボンの力!」
――――直後、アドフォルテと化したアルジと顔だけそのままのキネシスはそれぞれ10人と化した。
「よ〜しお前ら、どんどんアントベルの力を発動するんだ!」
「は〜い!」×18人の偽アドフォルテは更に『ダブルアタックチェンジ・アドフォルテ』と電子音声を各自のドライバーから鳴らす。
そして増加した何倍もの人数の偽アドフォルテが同様の手順で延々とその人数を増加させていく。
「…………そう、これはまさに無限ループ!無限の蜘蛛軍団には無限のアドフォルテってワケだ!
「うっわ、ここまでくるとさすがにきも過ぎだってアーくん……。ウチでもこんなのしたことないよ」
同じ顔はネガフォルテでお腹いっぱいだったのだけど、まさかこんな形で腹八分を超えてくるとは思わなかった。
「ところで綾瀬。――オマエの血は何色だ?」
「「うーん、黄色」」
もう一人の七星綾瀬も同じ回答だ。……当然っちゃ当然だけど。
「嘘でしょ綾瀬さん?」
「ほんとだよキーさん。……アドフォルテの間だけだけど」
……一度だけ、バグジャマーとの戦闘中に黄色い鼻血を垂らしたことがある。
テントウムシの血にはアルカノイドっていう毒があるらしいけど、アラクネ・マザーはウチの姿で気付いたんだ……。
(ていうか、よくノーヒントで分かったよねアーくん)
「ええい、こんなに囲まれても潰せないのがもどかしい!何という奇天烈な発想よ!――他のアドレディどもはともかくとしても、汝は一体何者だ!」
「七つの……じゃなかった。――オレはアルジ・キミヒト。全ての世界で主人公になる男だ!」
(まあ、今のオレは女の子なんだけどな)
「凍土に轟く猛吹雪!絶対零度のキネシスです!よろクール!」
(案の定ノリノリかよ。しかも久しぶりによろクール来たし)
そして、大増殖したありとあらゆる赤き可能性が今、一人の少女に委ねられていく。
「――――無限、昆楽変異!」
かつてのウチは全てのアドフォルテの分身を取り込むと、今、新たな歴史にその一歩を踏み出した。
「あまねく希望で、叶う意志!明日へ導く……、アドフォルテ・インフィニティ!」
無限に続く天の道を示した、心火を滾らせるレディバリンの力を宿すアドフォルテ。
見た目は変わらず、されど信念も変わらず。
「良いな〜綾瀬、おれも混ぜてよ!――――ビビューンと爆速、おれと刻むはハートチューン!アドクレシェンド!」
稲光と黄・緑のアドレディドレスに飾られたエレギートルの力を爆発させんとする元気ハツラツなアドクレシェンド。
「ちょっとお二人とも、置いてかないでくださらない?――――弾む鍵盤、澄む絢爛。旋律に羽ばたく、アドモデラート!」
舞い散る青の鱗粉から満を辞して蝶の翅を翻し現れた、気高きモルフォードの力の意匠を宿すアドレディドレスのアドモデラート。
『『『タタタン♪タタタン♪タタタン、タン♪』』』
「ついでにオレ達も行くぞ、キネシス!」
「2人ともアドフォルテだから紛らわしくならない?」
3人のアドレディが打ち鳴らしたチューニングインセクトの音色に何だかんだで集まって来たアーくんとキーさん。
「こういうの、参加しなきゃ損だよね」
見守るまでもなく、やはりウチも付いて行く。
……待っててくれたのか、1年前のウチが示し合わせたように合図を送る。
「皆んなで行くよ!――せぇ〜〜〜のっ!」
「アーユーレディ~~~??????――――アドレディ!!!!!!」
奇跡の瞬間、6人体制で手を繋いでの御挨拶となった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「妾は信じておるぞ。太陽の…、綾瀬の愛は無敵なのだと」
沈みゆく夕陽に照らされた公園の中。8つ目の少女は友達を想い、祈り続けていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「最後は一騎打ちだよ!ウチらの全力全開の光で、あなたの闇を晴らしてあげる!」
「小癪な……!!」
抜け殻の闇から飛んでくる蜘蛛糸の弾丸であったが、一人飛び出して飛翔していくアドフォルテの寸前で悉くが焼き散っていく。
「もう一人のウチ。――――悪夢を乗り越えて!!」
「未来のウチ――うん!!…………お天道様の怒り、ウチが全部預かった!」
知らない明日に想いを馳せたアドフォルテは、決意とともに呼び出したカラフルサップバトンへレディバリンリボンを装着した。
「残りカスの闇がよ。――お前のエピローグは、決まった!」
「行っけぇーーーーー!綾瀬さぁーーーん!!」
アルジとキネシスが応援する中、カラフルサップバトンの先を3回回す。
「「今こそ、あの悪意に終止符を!」」
アドモデラートとアドクレシェンドも未来の親友に想いを託す。
……すると、アドフォルテ・インフィニティの背後で灼熱の願望が集結し、超巨大なアドフォルテの幻影を発現させた。
「――――――――アドレディ・インフィニティ・フォーメーション!!」
解き放たれた無限の情熱が溢れ出し、焔とともに伝達していく。
「光ある限り……、闇は…闇は…、アァァーーーーーーーーーーーーー!!」
七色の輝きを纏った一筋の真っ赤な光線によって焼き尽くされた、あの惨劇の象徴。
「皆が居てくれたからここまで来れた……。皆が、居たから…っ!これでやっと、本当に前を向けるんだ……!!」
「もう、未来から来た方が泣き虫なんですの?」
「よく知らないけど、未来の友達は大変なんだねっ」
長い苦しみから解放された黒白のアドフォルテは変異が解除され、我慢出来なくなり泣き崩れた元のダウナー系な未来綾瀬を1年前の親友達が肩を寄せ合っていた。
「……フィニッシュ決めたの、こっちのウチなんだけどなぁ~」
「しょうがねえっての。未来の綾瀬だって結構苦労してたみたいだし。――な、キネシス」
取り残されて愚痴を零していた過去の方へ、同じく変異を解除したアルジ達が近寄ってきた。
「いや、わたしに振るんですか!?……でもこれで、一件落着ってことで」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
綾瀬との約束は果たした。
ネガフォルテとの交戦時に例の白いアンドロイドこと『サイバー太郎』へとキャストサーチしたことで世界の座標も登録が無事完了していた。
もうオレ達に、『昆楽戦姫アドレディの世界』でやり残したことはなかった。
『ディメンションゲート――――座標…uo2t3r7en0fu』
変身キャストドライバーに位置情報を読み込ませるといつもの出口が開かれた。
「二人とも。もう、どっか行っちゃうんだ……」
用の済んだアンダーワールドの中、スカートの上でぷるぷると拳を作る綾瀬の姿があった。
「そうだな。オレらには行かなきゃならない目的がある。本音言えば、本当に短い間だったけど綾瀬と過ごしていてめちゃくちゃ楽しかった。欲言えばこのまま同行させたかった。……なーんで単身用なんだろうな、オレの発明品」
これほど自身の発明品の完成度を恨んだことはなかった。
「今の綾瀬さんなら大丈夫だって。別ルートらしいけど、過去も未来も変えられたぐらいなんだし」
「それは……」
そんな綾瀬の視線の先では、戦いを終えて変異解除後の中学3年生達がじゃれ合っている。
「綾瀬の働きかけが無かったら、今頃あの光景は守られなかったんだしよ。もっと今の自分に自信持っていいんだぞ」
「アルくんの言う通りだよ。あのネガフォルテまで浄化しちゃったんだし」
とは言うものの、やはり別れるにはあまりにも惜しい人物ではある。
――我儘言って地団太踏んだところでなんだが。
「はぁ………………。離れたくないなぁ、やっぱ。カラオケも水族館も行けなかったし、サンシャインシティでちゃんとアーくんにタカりたかったし」
「おいおい」
「ねぇ……」
まーたオレの耳に顔を寄せてきた。
「また、会える?」
「会えるさ。座標登録済だし」
「アルくん。風情無さ過ぎだよ……」
キネシスのツッコミにオレと綾瀬からドッと笑いが飛び出し、キネシスもそれにつられて腹を抱えてしまった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「右のゲートが今オレ達が通過してきた方。んで、左がきっと分岐した方の……」
「あっ……」
右の夕暮れの中、チューニングスタンプの力で帰路に着く七星綾瀬とビートアイランドから来たらしい太鼓のバチっぽい蜂みたいな警察に連行されていくネガフォルテという憧憬に対し、左のゲートの先では制服姿の綾瀬と北扇子舞、本木南が初々しく話しているような様子が見て取れた。
『うーん。なんか途中からひたすらマッサージばっかりしていた気がするんじゃが……。何かの意図でも働いとったのかのぅ〜』
右の穴から何か聞こえたような気がしたが、もう気にしないでおこうと思う。
「とりあえず物語が在るべき姿に戻ったらしい。少なくとも、新ルートではな」
「アルくん。もしかして、デビ子ちゃんとあの双子達の世界も今頃ああなってるの?」
ああってことは、物語世界の仕組みに関することだろうか。……あくまで可能性の話としては、だ。
「ヘンゼルとグレーテルは物語として歪み過ぎちまったから何とも言えないが、人魚姫…デヴィガイオの世界はたぶんキネシスの想像通りかもな」
「そんな……」
「一期一会、な」
いかん、そんなに難しくもない四字熟語なのにキネシスが理解してなさそうな表情をしている。
「要するに一回一回の出会いを大切にするんだぞってことだ。辛いと思うかもしれないけど、まあその…慣れてくれ」
「……うんっ」
これで立ち直れるかは分からないが、一応頭を撫でている風に霊体の頭上で手を動かしている。
「落ち着いたら出発しようか。早く…、サイバー太郎の世界に、行きたいし……」
「ふふっ。いつもより優しいと思ったらさ、何泣いてんだよアルくん」
「っ!泣いてなんか、ねえよ!ほら行くぞ!変なことばっか言ってるとアイスキャンディーやらねーぞ」
「えっ、ちょっと、ずーるーいー!そういうの引き合いに出すの良くないと思いま〜す!!」
――――『そうだよ。アイスやらねーよって、ウチからじゃ声も聞こえないから代わりにキーさんにも伝えて』
「良いねえ綾瀬。ノリ分かってんじゃん……、………………………………????」
『どうも~、元気してる?お腹空いちゃったから家出キャンセルして帰ってきちゃった』
何処から話しかけているのかと思っていたら、キャストパスの背面にあるテントウムシのスタンプが赤く点灯していた。
「あのさぁ……、家出初日にして即キャンセルじゃ只のお出掛けじゃねーかよ」
「え、それマジなの?」
『ていうか、さっき泣いてたでしょ。通話先からこっそり聞いてたよ?……ふふ、相変わらず過ぎるでしょ。ざーこ、ざーこ』
「ガッツリ盗聴してんじゃねーよ!!」
「ってことはアルくん、さっきのホントに泣いてたんだ!」
「プライバシーの侵害だぁぁ~~~!!!!!」
波打つ虹色の次元移動空間は、今までより一人分賑やかさを増していた。
『次回予告』
「せっかく分福茶釜を回しに来たんだから、分福茶釜を回しに行こうぜ!」
――分福茶釜。
それは火花を散らして鎬を削る、茶釜狸と男達の織り成す室町時代で最も熱い遊技である。
そして、その頂点に君臨せしものこそがチャガマスターを名乗ることを許されるのだ。




