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アルジキミヒト ―巨大企業に追われた発明家のオレが【主人公】の力を借りてヤンデレ系雪女とバグった物語を巡るカオスな異世界変身冒険譚―  作者: ユッキング加賀
第4章、ヘンゼルとグレーテル編「幸福呪文〈ハピネスマジック〉!!」

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18/48

第18巻、『お菓子ドカ食い気絶大作戦』です!

前回のあらすじ3行。

「黒い森のお菓子の家に招待されたアルジと(特に認知されていない)キネシスは、ブラウニー村長の語っていた龍神様の生贄儀式と黒魔女について探る中でヘンゼルとグレーテル兄妹と交流を深める」

「龍神様対策として『血糖値スパイク大作戦』を立案したアルジは、魔女の幸福呪文を活用した奇策を準備し、その翌日に火山へ出発することを決意する」

「キネシスと徹夜で朝を迎え、魔法の練習中だった兄妹も加わった一行はカメーンを駆り、森を抜けた先にあるという龍神様が棲む火山へと向かうのであった」

「カメェェーーーン!!」

 鬱蒼とした黒い森に余りにも似つかわしくないバイクの駆動音、そしてこの耳をつんざく迫真の鳴き声。

(そろそろ慣れなければ……)


アルジと黒衣の老魔女はカメのバイクことカメーンと、それで引っ張る荷車に無邪気な(ヘンゼルと)子ども達(グレーテル)を乗せ、遂に明日迎えるという龍神様の生贄儀式が執り行われる火山に向かっていた。

森を抜けた先では土の性質が変わったのか、急にタイヤの下からキュッキュッと不吉な音がするようになった。

「うわ、この辺の地面真っ黒だね。それに木々も枯れちゃってるし」

浮遊しながら並走するアルジと一心同体状態の幽霊ことキネシスの素直なリアクションの通り、視界に入った白煙を上げる如何にもな火山の影響か、何処を見渡しても不自然なぐらいに一面荒れ果てていた。

「この辺だけ他所から切り貼りしてきたかのような場違いさっていうか、違和感があるな」

「十一年前までな、この辺りまで森が広がっていた。……あの火山は突然現れたのよ」

うっわ、無理矢理この世界を通過するために巻き込んだとは聞いちゃいたが、シャクビーほんと『何してんのポイント』高いだろこれは。

「んで、村長はその中でやばそうなドラゴンと対面しちまったわけだ」

「そういうことよ」

魔女のばあさんから話を聞いていたところで、のっぺりとしたような表面の火山の斜面……その目の前まで辿り着いた。

「なんかあそこに入り口みたいなのがあるよ!」

火山のスケールに言葉が出ないグレーテルの隣で、中腹辺りに出来ている洞窟のようなものをヘンゼルは指差していた。

「やるじゃねーか、ヘンゼル」

「アルジ兄ちゃん、連れてきてよかったでしょ!」

藁の敷かれた荷車の上で胸を張って自信満々そうにしている兄貴は見ていて正直微笑ましいと思う。

「まあな。…そんじゃ、あの入り口までカメーンにはフルスロットルで走ってもらおうかな」

「ハシィーーーーン!!」

カメーンに指示を飛ばすとそのなだらかな斜面を超スピードで駆け登る。抜群の馬力だ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

荷車に乗り込んでいるヘンゼルが揺れで遊んでいる。

「……!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

この妹は兄の背中を見て成長しているらしいことを知った瞬間だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「こーんにーちわー!!!!」

「うるせえよ」


 火山の奥に続いていると思われる洞窟入口の目の前。

相棒・雪女のキネシスはオレ以外には認識できない幽霊であるにも関わらず、そこへ向けて両手をバンザイさせながらクソデカ挨拶を披露していた。

しかもツッコまれると「えへへ…」などと頬を掻いている。

これがブラウニー村長のようなハゲだったら迷わず頭を引っ叩いているだろうか、などと思いながら山の斜面を荷車とともに登らせていたカメーンを引っ込めていた。


「ほれ、どうしたアルジ。龍神様が祀られているのはこの奥よ」

幸福呪文の使い手である全身黒ローブの老魔女はキネシスに気を取られていたオレに声を掛けた。

「おう……。ヘンゼル、グレーテル!はぐれんなよー!」

「「はーい!」」などと二人して返事をしたかと思えば、オレら大人達を横切って洞窟の奥へと走り込んでしまった。

「いや、何処行くねーん!!――行こうか。……今更だけど、ばあさん名前なんていうの」

「ふふふ…。グレーテ・ホ(・)ル(・)ツ(・)マ(・)ン(・)」

「ホルツ…マン……?」

確か昨日、あの子はヘンゼル・ホルツマンと名乗っていたが…、まさか。


「――そう。あの二人の母親だよ」

「何……だと……」


何処からどう見ても齢七十〜八十は行ってそうな婆さんにしか見えないが。

「……ボケでも進んでるんか?」

「違うわっ!!…え、えへん。変化の魔法を使ったのよ、本当はまだ31歳だから」

「マジかよ」

突然の情報過多に頭が痛くなる。ブレーメンのBEEN以来だ。

(わたしも突然のことで混乱してきちゃった……)

「(でしょうね)、ところでその…グレーテ、さん」

「今更だよ。呼び捨てで結構だけど、まだあの二人には内緒にしてて欲しいわ」

あの兄妹はまだこの魔女の正体を知らないのか。

「それは了解したけど、グレーテ。何故そのばあさんの姿になる必要があったんだ?」

「…魔女狩りよ。身を隠さないと狙われちゃうと思ってね」

(…………)

魔女狩り、賞金首。

キネシスが大人しくなる横で、アルジの中で点と点が結びつき始めたのを感じた。


――――魔女、グレーテは静かに過去を語り始めた。


「今から十一年前、私は結婚した木こりの旦那、ペーターとの間に双子を授かったわ」

あの黒い森の手前にあった、木材の山が出来ていたあの家のことかと思い出した。

「もちろん結婚前から私が魔法を使えることを旦那は知っていたし、受け入れるどころかそれすらも含めて愛してくれていたのよ。…………あの子達を産んだのと同時期からだったかしらね、その魔女狩りが始まったのは」

「よく逃げ出せたな」


グレーテは溜息を一つつくと、続きを話しだした。


「ええ…。旦那と、ブラウニー村長が村から逃してくれたのよ」

「ここで、ブラウニー村長だと……!」

意外な名前だった。

「そうよ。当時の村長は老若男女問わず、平等に優しく接していた人物なの」

あの接した時の村長とはまるで人物像が合わない。あのドブカスが、か……。

「透明化の魔法でキノコ狩りをしていた時に村で聞いた限りじゃ、子ども好きだった村長は少なくとも十年前から二回迄の儀式の年に関しては嫌々生贄の子をくじ引きで選んでいたそうよ。三日間は寝込んじゃうぐらいにショックを受けてね。でもね、三回目を境に突然村長は別人のように変わってしまったわ」

儀式は二年毎に行われている、と。

つまり、そいつに異変が起きたのは今から六年前になるわけだな。

「ええと…。話を戻すが、さっきの魔女狩りから身を隠すためにその老婆の姿に化けていたわけか」

「そうなのよ。ただ、変化の魔法には一つ問題があってね…」

グレーテの表情が急に曇りだす。

「問題?」

「ええ……。変(・)身(・)中(・)に(・)故(・)意(・)で(・)嘘(・)を(・)つ(・)く(・)と(・)元に戻れなくなるのよ」

「なんじゃそりゃ……」

その条件だと別人への変身後なんて幾らでもやらかしそうな気もするが、扱うにしてはデメリットが強烈だ。

「嘘から出た真ってことね。全身を嘘の魔法で塗り固めた状態になるから、一度でも口に出してしまうとそれが上書きされて真実として扱われてしまうのよ」

「そういうことなのか…?ところでそのデメリットを話したってことは、さてはついたんだな、嘘を」

グレーテのシワシワの口がキュッと噤(つぐ)まれたのが見えた。たぶんあの兄妹相手に何か言ったのだろう。

「いや、悪い。無理に聞くつもりはなかったんだが、――――あれは?」

話しているうち視界が開けたと思えば、目の前には子(・)供(・)一(・)人(・)は仰向けに寝られそうな掘りのある石造りの祭壇のような設備が見えた。

「(ドイツというより、こりゃアステカか何かじゃねえーのか)」

「なんか雰囲気怖いね…アルくん」

キネシスもその灰色の人工物がある空間に嫌気が差している様子だ。その時、

「おにい、あの赤くてドロドロしたものはなーに?」

「あれはだなぁ〜。熱いけど、降りて確かめようぜ〜!――どわぁ!?」

「なーにやってんだよ、お前ら」

先に走っていった兄妹が火口の前で何やら話しているようだが、危険なので大人として止めに入ることにした。

「あと、ヘンゼル。これは溶岩つって高温でドロドロになってるから、落ちたら即死だぞ?分かったらその火口から離れろ。グレーテルもだ」

「「はーい」」

まったく、世話の焼ける子ども達だな。……骨肉まで焼けてなくてよかったわ。


「霊体のままで良かった~。いつも通り、アイスドールで来てたらとっくに全身ドロドロだよ?」

(うっせ。それより……)


「ここだよな、龍神様とやらが居るのは」

背後で「ヘンゼル、グレーテル!危ないじゃないかい、心配したんだよ」「「ごめんなさーい」」などと聞こえる以外は溶岩のブクブク音のみ。

「静かだな…。此処じゃないのか」

「いや、祭壇のあるここで間違いないはずなんだけど…」

鼻腔内を今まで感じたことのないような熱気が這い上がってくるのを感じる。

二人がまた走り出さないよう両手で抑える老魔女は間違いないと言うが、これではまるでもぬけの殻では……。

「なあ、その龍神が居ないなら居ないで今のうちに作戦開始といこうぜ。ばあさん」

「ああ〜、話していた食べさせる用のお菓子かい。――よーし、二人とも!今から魔法でお菓子をいっぱい作るよ〜!」

「お菓子!わーい」

「おにい…。龍神様に食べてもらう用のお菓子なんだかね」

えへへ…とニカニカするヘンゼルは気を取り直すと、表情を切り替えて魔法を放つ姿勢に入った。

「何のお菓子にハマるか分からんし、種類バラバラが良さそうかな」

「数打ちゃ当たるってことかいな。まあそれなら、遠慮なく行かせてもらおうかねえ…。幸福呪文(ハピネスマジック)、バキバキチョコレート!」

アルジの提案により、三人はお菓子の魔法をそこかしこに使い始めた。

大人一人分のサイズはある板チョコ、プリン、ゼリー、ビスケットが次々と洞窟内に生まれ、其処彼処から甘い匂いが漂い始める。

(みんなお菓子の召喚魔法使ってるのにオレだけ何もしていないなんて、なんか手持ち無沙汰だな。あっ、そうだ)

「おーい。ヘンゼル、グレーテル。一枚撮影してもいいかー?」

「ハピネ…、うん?アルジ兄ちゃん、さつえいってなに?」


――――撮影とはなにか。

そう思った時、今までに出会った主人公達の顔が脳裏に蘇る。


「時間を切り取ることで、その思い出を形に残すことを言うんだ」


答えに迷うことはない。

そうやって、オレは今までの思い出を力に変えてきたんだ。


「なんか素敵だね、アルジにい。――でも、ワタシたちはただの思い出にはならないよ?」

魔法でゼリーを召喚していたグレーテルも反応する。

「へへ…、その通り。おいら達も一生忘れられない特別な思い出として、残してもらうんだからな!」


その手に握っていたキャストパスを二人に向ける。

「今から撮るけど、なんか良い合図ないか?」

(3・2・1だとかはい、チーズ!みたいなやつ?)

隣で悩んでる表情のキネシスがイメージしている通りのそれだ。

時代的にカメラは無いだろうし、やはりここは現地に合わせようと思った。

「Ameisens(アーマイゼ)cheisse(シャイセ)だよ!」

ヘンゼルが提案したそのワードだったが、珍しくキャストドライバーの言語変換機能が反応しなかった。

「え、えと…。撮るよー!ア〜マイゼ、シャイセ!」


『キャストオン、ヘンゼル&グレーテル』

仲良さげに肩を組みながらピースをする兄妹の姿が一枚の写真に収まった。


「なあ、ところでさっきのア(・)ー(・)マ(・)イ(・)な(・)ん(・)た(・)ら(・)っての。アレってなんだったんだ?」

「ア(・)リ(・)の(・)う(・)ん(・)ち(・)って意味さ」

グミグミシールドを召喚しながら、横目に見ていた老魔女グレーテがしれっと回答する。

「あ〜、そういうことね。完全に理解した」

とは言ったのだが、隣のキネシスが此方の表情を見るなりバカっぽい顔で見てくる。なんで?

「なんだかんだ言っても、やっぱりまだ子どもなんだねぇ」

母親の眼差しを魔法でお菓子を量産している子ども達へ向けている魔女の一言に、アルジとキネシスは納得させられてしまった。


――――「お前達、何者なんだ」

――――「この山は危険ですから、早く降りてください」

突然聞こえた謎の声とともに岩陰から現れたのは二人組の男性だった。


「誰…だ…、あれっ。いや、どっかで見た憶えが……。そうだ!」

一方の男の姿を、オレは既に知っていた。

白銀の長髪を揺らし、青と銀の鎧に身を包む戦士は随分な長さの両手剣を携えており、剣先から鍔に掛けて紫色のただならぬオーラを醸し出している。

もう一方の眼鏡を掛けた黒髪の戦士も同じ格好をしており、同じ形の両手剣と思われるが赤いオーラを放つそれを左手で握っていた。

(間違いない。黒髪の片方はともかくとして、もう片方のやつなら以前キャストサーチで変身したことがある)

「知ってたんですか、アルくん」

「ああ、そこの白い髪の方。――お前、ジークフリートだな」

それはキネシスと出会う前、桃太郎を鬼の軍勢から救出するためにランダムで変身した主人公だった。

「知り合いですか、兄(・)貴(・)?」

「いや、シ(・)グ(・)ル(・)ド(・)。面識はない筈だ」


ジークフリートに、シグルド……?

おかしい。そんなこと、有り得るはずは……!


「失礼、オレはアルジ・キミヒトだ。一枚だけ二人の写真を撮ってもいいか?特に変なことにはならないからさ!」

「…?ああ、構わんが。シグルドも写真とやらは問題ないか?」

シグルドと呼ばれた黒髪眼鏡の剣士も静かにコクン、と頷く。


「はい撮るよー!こっちこっち、アーマイゼシャイセ(アリのうんち)!」

隣のキネシスは「その掛け声まだ使うんだ…」と呟いていたが、とりあえず二人の立ち姿を一枚撮ってみた。


『キャストオン、ジークフリート&シグルド』

よく見ると二人とも恥ずかしいものを見るような表情を浮かべているようにみえる。

キャストパス内の表示も、ジークフリートの横に生える形で名前が追加されたことを確認した。


「へ〜、こりゃレアケースだな」

「いきなり写真撮ってたけど、アルくん何かあったの」とキネシスが不思議そうな表情で尋ねてきた。

グレーテルから「知り合いじゃないの?」とも聞かれ、ヘンゼル・グレーテも気になる様子だったので二人の物語について軽く説明することにした。


「北欧だかどっかの神話に登場するヴォルスンガ・サガかニーベルンゲンの歌とかの主人公でな、竜殺しのエピソードが有名だったっけな」

「何でそう所々の説明が曖昧なんだい」

グレーテに指摘されてしまったが、これだけはハッキリ言い切れる。

「それはだな、ばあさん。――あの二人は本来同時には存在しない筈なんだよ」

「は……?」

そう、二人は言ってしまえば同一の存在。

その物語ごとに名前が違うだけの――――ど(・)ち(・)ら(・)も(・)本(・)物(・)。


「その黒髪メガネの方、ていうかシグルド。さっきジークフリートのこと兄貴って呼んでいたな。兄弟なのか」

「はい。兄弟といいますか、僕ら双子なんです」

まさかの、向こうも双子で来るとは。


「それより、この状況は何なんだ。フ(・)ァ(・)フ(・)ニ(・)ー(・)ル(・)の(・)住(・)処(・)と聞いて妙(・)な(・)ト(・)ン(・)ネ(・)ル(・)を抜けて此処までやってきたと思えば、火口の前が妙な甘味だらけじゃないか」

ファフニール…だと?この火山に?コイツらの物語に出てくるっていう、あの???

「……まさか。兄貴、これはひょっとしてファフニールへの捧げものではないでしょうか」

(おいコラ。あながち間違いではないが余計なこと言うな、この真面目系メガネ剣士)

「ほーう。ファフニールのやつめ、いつの間に食事を用意させる信奉者までこさえていたとはな」

白銀の剣士が鋭い眼光でオレを捉えている。

「お、おい。誤解だ。これは罠を仕掛け……」

(アルくん、なんだか嫌な予感が……)


「言い訳無用!――シグルド、コイツら全員叩っ斬るぞ!」

「はい、兄貴!」

「イヤ、『はい』じゃねえよ!変な導火線に火を付けた張本人がよぉ!」

後ろで老魔女が兄妹の双子を守るように腕を回した。


「やるしかねえのか……」

ヘンゼルとグレーテルの世界でまさかの邂逅を果たしたジークフリート&シグルド。


「『――――――――』…………『キャストチェンジ』――、」

戦わなければならないのかと思いつつも、変身先の名前が溶岩の音に掻き消されながらも、それでもキャストドライバーは唸る。

キャストパスも右手で三回転させる。


「…………変身」


二人を見据えたままチェンジスロットに差し込むと、自身の身体が紫と赤、二色の渦を巻く輝きに包まれたかと思えば、シルエットが二人に分裂した。

「なんだ、この強烈な光は!?」

ジークフリートが驚く先、前方から変身者の声が響く。


『オレがオマエで~オマエがオレで~ 切り裂けドラゴン ダブルソード!!』


「よう、竜殺しのお二人さん。…いや、まだヤる前だったか。

 ――――ところでその、自(・)分(・)自(・)身(・)とは戦ったことはあるかい?」

強烈なシステム音声とともにオーラのようでもあるその渦の中から姿を現した二人の竜殺し。


「白銀の剣士、ジークフリートだ」

「黒鉄の剣士、シグルドと化した雪女のキネシスで~す!ヤッフゥ~~~!……え、どうしたのアルくん。なんか目丸くしてるけど」

そりゃ目の前の本物があんなにですます口調なのを見ちゃったらその、キャラの温度差で風邪引くだろ。

「いや、そりゃたまげるだろうがって。――しかも、格好はシグルドなのに顔とかはキネシスのままなんかい!」

いつもの赤い帯に白い水玉模様の和服からメガネ&鎧姿と、変身というか一種のコスプレのような状態である。


「そりゃアイデンティティーは大切でしょ~!やっぱ、わたしの満を持しての初変身というのはですよ?今これを読んでいる『目の前の読者の皆様方』のご期待に応えるのがスジっていうもので……」

「いや誰に対して言ってんだよ、もうワケわかんねーよ!それに、大体キネシスな……」


「「「「「………………………………これ、いつまで続けるの」」」」」

完全に二人の世界(ノリ)に置いてけぼりを食らう五名であった。

幕間『自己紹介』


「此処まで読んでくれてありがとな。アルジ・キミヒトだ」

「どもども〜。あなたの隣に這い寄る幽霊、キネシスです!」


「おう、初手から他所様の名乗りパクるのやめーや」


「アルくん」

「あっ、はい」


「わたしもなんか個性際立つ自己紹介が欲しいです!何かアイディアとかありませんか?」

「急に◯つ森の住民みてーなこと聞いてくるじゃん。まあ乗ってやるからオレが今からキネシス役やるわ」

「えっ、本人居るのにアルくんがわたしの役やるの?モヤるなぁ〜」

「アイディア欲しいんだろ?それじゃキネシスはオレに対して何者だ?的なアレを言ってみてくれ」


「しょうがないな〜。お、おぉ、お前…な、なにゃ、何もにょ…」

「いや急に噛みだろ。もっかいもっかい」

「ごめんごめん〜、じゃあ改めて……。おぬし、何者じゃ!」

「雪女とかけて、幽霊と解きます」

「………???そ、その心は……?」

「え〜〜〜、どちらも夜に出会うとヒヤリとさせてくれるでしょう〜。キネシスですっ!……ってどうよ本物」

「いやどう聞いても○ずっちのそれじゃないですか!結局アルくんもパクりなんかーい!」

「まあいいじゃねーか、キネシス。オレも決まった自己紹介ないし。無いもの同士、仲良くやってこーや」

「旅は道連れ、世は情けですかね〜」

「なんか、言葉覚えたてのガキみたいな誤用してんな」

「なにゃっ!?」


「それじゃ、次回もよろしく〜」

「よ、よろクール〜」

「(シメだけ定着してやがるよこの雪女)」

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