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アルジキミヒト  作者: ユッキング加賀


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17/22

第17巻、おかしの家《ヘクセンハイム》の真実

前回のあらすじ3行。

「小さな村ドルフ・イム・シュヴァルツヴァルトに到着したアルジとキネシスは、ブラウニー村長から黒い魔女の情報を得て隣の黒い森へ潜入する」

「黒魔女に魔女狩りと勘違いされてしまったオレはデヴィガイオに変身、その操るお菓子に変異させる幸福呪文ハピネスマジックとの激しい戦闘を繰り広げる」

「戦いの最中、魔女を守るために現れたヘンゼルとグレーテルと出会い、物語は新たな局面を迎える」

「なんだこの家は…、たまげたなぁ」

「勝手にたまげてな!さあみんな、入った入った」

「「はーい!」」


小さな村Dorf(ドルフ) im(イム) Schwarz(シュヴァルツ)wald(ヴァルト)に隣接する黒い森、その奥にひっそりと佇む一棟の不思議なワンルーム戸建。

屋根がビスケットとポテトチップス、壁にはチョコレートやマシュマロを積んだ柱、透明感のある紫・橙・空色のグミで出来た、思わずガヴっと食べたくなるような窓。

それはまさに、お伽噺(とぎばなし)に登場するようなお菓子の家、そのものだった。


オレと雪女の相棒キネシスは森林内を移動中、黒いローブで全身を包んだ一人の魔女と遭遇したものの魔女狩りの一人と勘違いされてしまい、そのまま交戦してきた。

変身したデヴィガイオのラストアタックチェンジでトドメを刺そうとしたところ、魔女と同じ魔法で攻撃を防ぎながら2人の子どもが乱入。巻き込むわけにはいかないと理性が働いたオレ達は、放った海水由来の爆弾生物を無力化したのであった……。

「すげー、内装に至るまで全部お菓子かよ」

「そりゃもう。組み上げるまで時間も掛かったさね」


「これ、食ってもいいかな?」

「魔女狩りから人殺しになりたいんならな」

「えっ」

人……?オレの指差しているこの板材、どっからどう見てもただのマーブル柄のクッキーにしか見えないんだが……。

「ああ、コイツは元魔女狩り。普段は人に魔法を打ったりはしないんだけど、正当防衛ってことで見逃しておくれ」

「えっ、ということはこの家を形作っているお菓子って……」

「全部じゃないが、部分的にその()()()()で得た建材で補修しておるがな。人由来は匂いこそお菓子だが、中身は変わらんから食ったら血肉の味に変わってしまうでな」

思わず、うわマジかよなどと言いそうになったが此処は堪える。


「家中お菓子の甘い匂いがするのに食べられないなんて……!もどかしいね、アルくん」

キノコがドッサリ入った手提げのバスケットとともに老魔女が台所へ向かったところでそう言ってきたのは相棒の雪女、キネシスだった。

「(まだ霊体状態でやってくのか?今まで初手アイスドールだった気がするんだが)」

「うん。夏じゃ暑そうだなーっていう理由もあるけど、いつもと違ってこれはこれで面白いかなーって。それに、アイスドールはいざという時に残した方が不意打ちに使えるかなーって」

まあ、一理あるか。今回の世界、何となくだが一筋縄では行かない気がするし。


「ほら、作り置きだけどチェリーケーキだよ」

「わーい!」「おばあちゃんのケーキだーいすき!」

興奮する子ども達は早くもフォークで口に運んでは舌鼓を打っていた。

「さっきは悪かったよ、ばあさん」

「私の勘違いが原因だったんだから、あんたは謝らんでいいのよ。さあさあ、あんたもケーキを召し上がって。――コイツはちゃんと黒い森名物のさくらんぼを使ってるから、()()()と違って食べても問題ないわ」

ソファーに腰を落としていたアルジも、付け加えられた一言に安心して一口頂いてみた。

「美味え…。ふわふわ生地にさくらんぼの香りとしっかりした甘みがよく効いていて、疲れた体によく効くわこりゃ」

「言葉の上手い男だこと。ところで、名前はアルジ・キミヒトだったね。村人でないあんたは火山のある方角まで妙な馬を走らせていたようだけど、何をするつもりだったんじゃ」

このばあさん、最初は何かと思ったが正直言って変な様子も見られない。先日の影とは無関係のようだし、此処は素直に話しても問題ないだろうな。

「ああ。ブラウニー村長とかいうハゲから龍神様とかいう話を聞いたんだが、あの村長からどうも発言に胡散臭さを感じていて自分の目で確かめたくなったんだ。どのみち、それとは別件で火山での落とし物を探す依頼も受けていたから向かうところではあったんだ」

「うわ出たよグレーテル。あのクソジジイだってさ」

「あの人キラーイ!大きな木の前で子どもが遊んでるところにわざわざ入って、『目障りなガキどもめ、邪魔だ邪魔だー!』って作ってた泥団子とか踏み付けて壊してくるし、この前もパパのことモヤシとか呼んだりしていじめてたし。ヘンゼル兄と泥団子投げつけまくったら『今年のイケニエはお前達にしてやる!』って叫んできてさ。…ところで、イケニエってなあに?」

突然のグレーテルからの質問に長テーブルの向かいで狼狽する老婆。

(うっわ、答えづら……)

「ねえねえ、アルジ兄ちゃん。知ってるんでしょ?あっ、オイラはヘンゼル。ヘンゼル・ホルツマン。ばあちゃんの代わりにさ、妹のグレーテルの質問に答えてよ〜!」

押し黙ってしまったアルジにヘンゼルと名乗る10歳程度の男の子が無邪気にも青い瞳を輝かせながら尋ねてくる。

何なら同調してその隣りでケーキを頬張るグレーテルも視線を向けてくる。

(おいキネシス〜。どうするよこれ)

(えぇ…、聞かないでよ。わたしも言いにくいんだし)

つい困り果てて相棒に無言で相談していると、

「まあいいや。ばあちゃん!裏庭の畑手伝ってくるよ。行こっ、グレーテル」

「うん!ちょっと行ってくるね」

空気を察してくれたのか、それとも子ども特有の興味移りか。

金髪の兄妹はお菓子の家を出るとその建物の裏へ走っていくのが紫色のブヨブヨした窓からチラッと見えた。


「なんてこったい……」

あの話題から続いていた食卓の沈黙を破ったのは魔女のばあさんだった。

「でも、村長の話では二年毎に連れてこられている儀式の生贄をどうにかしているそうじゃねーか。なら今年だって……」

「最初以外は毎回助けに行っているからこそ、今年は特に警戒されて対策されているはずだよ。まったく、私に魔女狩りの懸賞金なんて掛けおって……」

儀式かー。そんなものさえなければ生贄なんていう物騒な話も無くなるのだが……。

「それだ!」「(それだよアルくん!)」

「それって、懸賞金のことかい?」

「ちげーよばあさん!火山の龍神だよ!ソイツぶちのめすか存在しないか確かめるなりすりゃ、生贄とかいう因習は終わりだろ!」

そう、龍神様とやら。

実際生贄を欲していたかは定かではないが、村長が怒りを鎮めるためにわざわざ二年に一度捧げようとするなんざ、やっぱ時代とか関係無しに良くない文化であるに決まっている。

そんな文化はぶっ壊すことにした。

「ああ、もう吹っ切れたわ。変なこと考えずにそうすりゃよかったんだ。よっしゃ、火山に行こうぜばあさん」

「待ちなってアルジ!短絡的にも程があるだろう!?龍神様と祀られているような存在に、あんた勝算はあるのかい!」

「ある!火山に住んでいるのなら、(わたしの氷の力と)デヴィガイオの潮騒の蒼罰をマグマごと叩き込んで拘束してから、別の主人公に変身して一気に終わらせ満足するしかねえ」

「行けるのか……」

勢いは一丁前なアルジに対し、困惑する老魔女。

「だが、そのためにはそもそもの動きを鈍らせるしかない。ばあさん、火山に行ったら火山岩をお菓子に変えて龍神に食わせるんだ。…ところで、あの幸福呪文ってのは人間から変えたもの以外は見た目通りのお菓子になるのか?」

「そうだとも」

そうと分かれば問題など……。


そう、答えはただ一つ……。

「だったら、題して『お菓子ドカ食い気絶・血糖値スパイク大作戦』と行くか!」

「は………、ドカ食い?けっけっとう…え、は?」

あかん、13世紀にそんな知識なんてあるわけないのに。変な奴と思われる前に此処での常識に合わせた言い方に直さなくては……。

(まあ、アルくんが変な人なのは周知の事実ですし……)


「あれだ、魔女のばあさん。メシ食ったあとって、なんか眠気とか来たりしないか?」

「それなら経験はあるがな」


「そうそう。んでな、自分らが普段食べている食事には必要不可欠な栄養として糖分っていう甘味になる元だな。あれが入っていてだな、えー、体に取り込むとぉ…、全身に栄養を行き渡らせる働きをしている血管の中をその糖分が若干ゃ形を変えて流れるわけなんだけども、それを分解して取り込むためにインスリンっていうモンが働くんだわ。それ自体は大抵の生き物で起こる流れになるわけなんだけど、その取り込む食事がどエラい量になるとどうなるか。多過ぎる糖分に対して分解用のインスリンが間に合わず、流れる血液の中の糖の占める割合、まあ血糖値って言うんだけど、そいつが爆上がりするわけよ」

「話が長いわ……。んでその、血糖値?っていうのが龍神様とどう関係するわけなんだい」


(危な、ちょっと寝ちゃったかも。…アルくんまだ話してるの?もうわたしには話の内容ぜんぜん分かんないなあ……)

食後よりも断然眠くなってしまった半透明のキネシスであった。


「龍神は初回以外の生贄…まあその、食事だな。食事を毎回邪魔されて今なんか空腹のはずなんだよ。だから、空きっ腹の状態から糖分たっぷりのお菓子をたらふく食わせて血糖値を一気に上げる。次にさっき言ったインスリンが血中のそれを分解しだすことでその血糖値を爆下げする。その過度な血糖値の上げ下げを血糖値スパイクと言うんだが、それが起こると血管の負担が高くてボロボロになるんだ。そいつを修復するために生き物は気絶したように眠ってしまうわけだ」

「それがあんたの言っていた、ドカ食いなんちゃらということかい」

「つまり、そういうこと」

アルジの長話を聴いた魔女はふーむと腕組みをする。


「なかなか回りくどい作戦を考えるがな。男なんだからもっとこう、剣なんかでグサっと行くもんかと思っとった」

「いやいや…力業は最終手段だぜ、ばあさん。事前にある程度の情報があるなら、それを可能な限り利用して賢く戦うのがオレ流なんだよ」

「まあいいよ。今日はもう色々と消耗したし、休んで明日の朝に火山へ出発しましょ」

「ああ。助かる」


こうしてアルジ、キネシス、そして魔女のばあさんの3人で……。

「火山行くの〜?ピクニック?オイラ達も行きたーい!「行きたーい!」

「えっ、二人ともいつから畑から戻ってたんだよ!?」

畑仕事を終えたばかりで全身泥だらけの兄妹が二人してニカニカしながらオレを見ている。

「ケットウチスパイ()だよ!アルジ兄ちゃん!」

「それを言うなら血糖値スパイ()、な?――どーすんだよばあさん!」

「もう止まらんよ。夢中で食べ始めたチェリーケーキと同じだね」

主張をゴリ押しされた結果、結局火山までの一行にヘンゼルとグレーテルも加わることとなった。


皆が寝静まり、フクロウの鳴く晩だった。


月の光が差し込む窓際のベッドでは魔女のばあさんを挟む形でヘンゼルとグレーテルが仲良く川の字で就寝している。

「ああしてみるとなんか家族みたいだよね、アルくん」

「本筋では有り得なかった展開だ。何というか、感慨深い」

そういうアルジは一人用ソファーの上で両腕を枕のようにして器用に寝る体勢でおり、キネシスも浮遊しながら寝転んだような姿勢を取っていた。


「最近、変な夢を見るんだ」

「?、どんなの」

そう。ブレーメンでも、この世界でも見た、あの夢のことだ。

「ボロボロの白いアンドロイドが坂を登っているって感じ。ただ、忘れちゃいけないものがあったハズなのに思い出せないんだ」

何となくの印象しか思い出せなかった。

「ふーん…。まあでも、所詮は夢だし。そんなに気にすることじゃないんじゃない?」

「そうかな…、そうかも。でもその夢、ブレーメンの世界に行ってから見るようになったんだよ。クトゥルフってかシャクビーに相談したら、別の世界と繋がっていたのかもとか話してたし」

緑の邪神、大いなるものクトゥルフ。

夢を操る能力を駆使してブレーメンの音楽隊の世界に自分達の遊び場を作っていたのだが、そのために世界の上から広げてしまった夢の風呂敷と呼ばれているそれは、奇しくもオレと別の世界とのバイパスと化していたワケだ。

「うーむ、それじゃただの夢じゃないよね~」

「いやでもその夢さ、アレなんだよ。空飛ぶ車みたいなのがビル街を縫って飛んでたり色々ヤバくてさ。ほんとにそんな世界あり得るのかよって」

「それなら、所詮夢といったところかなぁ〜?」

「いやどっちだよ」

アルジとキネシスによる夫婦漫才みたいなやり取りは夜通し続いていた。


「夢、見れんかった……」

「いや〜、変な夢の話題から夜通しお話ししてたら、二人で朝まで盛り上がっちゃいましたね……」

眠過ぎてクソネミ征夷大将軍に任官してるだろオレ。…自分でも何言ってるのかサッパリだ。

「ふわぁぁ…。ていうか、キネシスは眠くないのか?ずっとオレと本の話とか色々喋って起こしちゃったけど」

「妖怪であり幽霊でもあるわたしは、基本的に睡眠が要らないんだよね〜」

だよね〜と言われても知らん知らん。

「すげえなおい。社会人のオレじゃぜってー体力保たんって」

「あっ、でも…」

どうしたんだ、キネシスのやつ。急にモジモジし始めたが。

「ごめん、何でもないや…。はは……」

「おいおい」

急に両手で顔を押さえて俯きだした。まあ可愛いからいいか。

「――何がおいおいなんだい、さっきから()()()ブツブツと。朝ごはん出来たからテーブルにおいで」

「あ、ああ。今行く!…あれ、二人は?」

そういえば、あの騒がしい兄妹が家の中に居ない。

「ヘンゼルとグレーテルなら、裏庭で魔法の練習中よ。そうだわ、アルジ。二人を食卓に呼んでもらえるかい?」

「りょーかい」

エプロン姿の魔女ばあさんからお願い事をされたので、ソファーの上で崩した座り方をしながら浮いているキネシスを置いて裏庭へ向かった。


ハピネスマジック!ハピネスマジック!…とお菓子の家の裏から聞こえたので声を掛けてみることにした。

「おはよーう!ヘンゼル、グレーテル!朝ご飯のじゅん…び…、何じゃこりゃ」

色とりどりの野菜を栽培している畑の隣には、場違いのようなプリンやらゼリーやら……。

「おはよう、アルジ兄ちゃん!…うわ、おい見てみろよグレーテル。アルジ兄ちゃんのやつ、すっげえ目の下黒いぜ?」

「アレはクマだよ、おにい。……おはようございます!朝ごはんですか?」

「そんなとこだ。……しっかし凄いな。こんな時間から特訓とは感心だな」

「へへーんだ!おいら達、あのばあちゃんからよく魔法を教えてもらってるんだ!今はお菓子のトランポリンを作る魔法を練習中なんだぞ~!すげーだろ!」

それで無数のプルンプルンとしたお菓子が地面に……。

「トランポリンでプリンとゼリーか。それだと柔らかすぎて乗るだけで沈まないか?」

「えぇー!じゃあさじゃあさ、アルジ兄ちゃん!トランポリンに向いているお菓子、なんか知ってない?」

せっかくの子どもからの疑問だ。答えてやらねば大人が廃るというもの。

「それはグミだな。まず物理的にトランポリンに必要な要素と言えば、柔らかさ・弾力・そして形を保つ力の三つだ。特に、弾力があることで内部の押すと戻ろうとする力『弾性エネルギー』が働くわけだが、想定サイズを直径一メートルとして数百kg相当で引っ張る強さを出すなら……」

その辺の枝を使って地面にどんどんエネルギー計算式を敷き詰めていく。

「うわ……。おにい、なんかヤバそうな魔法陣作ってるよこの人……」

早くその場を立ち去りたくなったのか、兄の裾を指先で引っ張っている。

「そういや朝ごはんに呼ばれてたんだよな。行こうぜ、グレーテル」

「うん…」



「グミを薄く伸ばして強く張る……。そうだな、昨日二人が使っていた二重のグミグミシールドをハードグミ風にして強度マシマシに出来れば……!あれ、二人は?」

庭では閑古鳥が鳴いていた。


「アタックチェンジ、浦島太郎。――――カメーン!」

朝食に黒いライ麦パン、木製ボウル一杯のイチゴ、ラズベリー、ヘーゼルナッツ、裏庭で飼育されていた乳牛から絞ったと思われるジョッキ一杯分の牛乳で英気を養ったアルジら一行。

(なお、実体化していないキネシスだけむむむ…とした表情で指を咥えていた)

召喚した緑のメタリックな生きるカメ形バイクこと、カメーンの後ろに庭にあった藁の盛られた荷車を落ちていた鎖でしっかりと取り付け、牽引する形にした。

「うわー、草でふっかふかだ!」

「ほんとだね!おにい!」

二人してバンザイの姿勢でクッション用に敷いた藁にダイビングしていた。

「カ゛メ゛ッ゛ン゛!!」

衝撃でカメーンが聞いた事がないような低い声で唸っている。

「ばあさんは後ろに乗ってくれ。ほい、ヘルメット」

「どーも。って、昨日の珍妙な馬じゃないかい」

ウミガメの手足が装飾された、全体的に緑で頂点部分に甲羅風の模様をあしらったそれを魔女に手渡すと、同じものを自身も被る。

「アルくん、いつの間にそんなものを……」

「(驚くのも無理はないって。実は、キネシスがまだ気絶していた日のソロキャン中にちょちょいと設計して、オレ発明のどこでも3D光子力(フォトン)プリンターで作ってみたんだ。デザイン凝ってるだろ~)」

「そ、そうだね……」

…あんまリアクション良くないな。やっぱこの手足のヒレ、質感がリアル過ぎたのが良くなかったか。


「そんじゃ、火山にレッツゴー!」

「「「おー!!」」」

「こりゃ、腹括んないとかねぇ……」

龍神様へ捧げる生贄の儀式は明日。

なので、前日のうちにその龍神とやらを解決させて取り決めをキャンセルさせようという、オレ達の作戦が始まったのだった。


「ハシィィーーーーーーン!!!」

やはり相変わらずうるさいバイクのカメーンであった。

幕間・ヘンゼルとグレーテル、魔女との邂逅編


「迷子にならないように、パンを千切って目印にしてきたよ」

「でかしたぞ~グレーテル」

「えへへ。…ところで、おにい。この黒い森のどこかにお菓子のお家があるってお出掛け前に話していたけど、ほんとに見たの~?」

「ほんとにほんとだって!屋根はビスケットっぽかったし、壁も窓も食べられそうな見た目してたし……」

「えーと……。まさか、このお家のこと?」

「あ、そうそう!それそれ!デカすぎて一人じゃ食べられないから、ここに連れていきたかったんだ~」

「まさかほんとうにあるなんて……。えへへ、どれから食べちゃおうかな……」

「―――あんた達、此処で何してるんだい」

「うげぇ!見つかっちゃった!しかも噂の魔女じゃん……」

「このままじゃ捕まっちゃうよ、おにい!うわーん!」

「……ほーら、泣くのはおやめ。別に捕って食ったりせんから。どうして家の前に居たのか、正直に教えてくれたら怒ったりしないからさぁ」

「…うん。美味しそうだったんだよ、お家。だから気になって、今度妹を連れて一緒に食べたかったんだ」

「ふーん……」

「ほんとうだよ、おばあちゃん!いつもお腹空かせてたから、おにいがここのことを教えてくれたんだもの」

「大丈夫だよ、二人とも。森は怖い動物がその辺を歩いているかもしれないから、お家にお入り。お腹の虫が鳴っているようなら、さっき焼いたチェリーケーキの余りでよければあるんだけど、食べるかい?」

「「うん!」」

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