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アルジキミヒト  作者: ユッキング加賀
第3章、BEEN編(ブレーメンの音楽隊)「ドイツに伝わりし究極最強アニマルチーム、パーフェクトエディション、風の(以下略)」

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第13巻、対決BEEN、ガチンコファイトグルメ!

前回のあらすじ3行。

「家具に頭を打ち付けて気絶していたアルジは夢の中で正体不明の白いアンドロイドと遭遇」

「ブレーメンの音楽隊?ことアニマルグループ『BEEN』の演奏&まさかのガチャ料理対決生配信!?」

「一組目、全身ブルーのペリカンことシャクビーと黄色い首輪が特徴的なアルパカ、あっくんペアの料理が始まったのだがその最中、二匹にある異変が起こった……」

「アルくん、さっきから顔色悪いけど大丈夫?」

「まあ……、何とか…な」


まるで悪い夢でも見ているような、底知れぬ恐怖がアルジの精神を支配し始めている。

そんな彼の表情を覗き込むピンクのエプロン姿が可憐なキネシスだったが、揺れるおさげの隣で瞳が紫色に染まり、まるで正気を失ったかのような不気味な笑みを浮かべている。

(これは、雪の女王と戦っていた時の状態と似ている……?いや、しかし操られているような様子でもないし……)



「え、じゃあまず、このタマネギをみじん切りにして貰えるかな。あっくん」

「よかろう」

全身真っ青のペリカン?のシャクビーの指示で白い体毛のアルパカ?あっくんは包丁でタマネギを慣れたように加工する。当然、背中から生やした黒い腕を使ってだが。

「タマネギをみじん切りに、していくぅ〜!」「していくゥ〜!!」

ノリノリで調理するあっくんと、それを横目に緑色の触腕を口から現してはフライパンを火にかけ始めるシャクビーにコメント欄も大賑わいだ。

ただ、その中には口から背中から伸びるそれらに対して違和感を感じているような内容のものは何一つ見受けられない。


「あっくん、バター入れて〜」

「――バターを半分……?」

シャクビーの指示が入るも、その時、赤鬼のお面を掛けた白いポメラニアンであるしろわの囁きも円形テーブル席からあっくんの耳に届いてしまう。

「えっ、はっ?」

「「はんぶぅ〜ん?」」

妙な発言に困惑の表情を隠せないでいるシャクビーをよそに黒いゴーグルと迷彩柄ニット帽の黒猫ことくろくろと、それにつられてキネシスも同調して煽りだす。


「半分……、入れるべしぃ〜〜〜www」

「おい、あくおぉぉーーー!?!?!?www」

ノリに乗ってしまったあっくんは勢いのままに200gバターを半分切り、その100gのバターを切ったタマネギと一緒にボトンと投入してしまった。

「いや、えっ、はっ?なに、何してんの、あっくんこれは、さすがに何してんのポイント高いよ?!」

「っあははははははははは!!あっはははははははははははは!!」

こればかりは動揺するシャクビーと、自身の行いがツボに入ったのか背中の腕をワラワラ揺らしながら大爆笑しているあっくん。

「出たー!我々のマイブーム、バター半分です!」

「さすがにバター半分はちょっとオイリーじゃない?」

願望が通りウッキウキのしろわとバターの量を気にしつつも笑いが表情筋に表れてしまっているくろくろ。

「ちょっとどころじゃねーよ!おい、くろくろォ!!」

「いや、何で僕なんですか〜?」

どういうわけかシャクビーの矛先が向いてしまったくろくろだったが、天然気味な反応をしてみせている。


「「出来ました〜!」」

制限時間のとともに調理もギリギリで終わったシャクビーとあっくんの声が掛かった後、テーブルに運ばれてきた料理を一目見て息を呑んだ。


黄色い脂の海に浮かぶ輪切りの魚肉ソーセージの島々。

みじん切りにされたタマネギと混ざった摺り下ろしのリンゴ、そして各食材を投入して炒めている最中にあっくんがガチャで引き当てていた蛸足がポツンポツンと上を臨むように数本直立している。

(何だこれは…)


「え〜料理名はですね、『俺たちのルルイエ』です」

「来たぁ〜定番の料理ルルイエ化定期だ!」

フォークとナイフを振って盛り上がっているくろくろ。

「油入れすぎィ!」

「入れすぎィ〜!」

キネシスが爆笑しながら料理にツッコんでいるところへ、あっくんの気合いの入った返しが飛んでくる。

「ハッ……、冒涜的な怪物(ザ・ビースト)先輩かよ」

「それは俺の化身名だろ、しろわ!」

しろわが便乗してあっくんをイジっていると、コメント欄はざわつきつつも賑わいを更に増してしまう。


『ネフレン=カ万歳!!』『ネフレン=カ万歳!!』『来れ!狂気よ来れ!』『ネフレン=カ万歳!!』

すげえ盛り上がりっていうか、最早これでは四匹のファンというより何かの狂信者じゃないのか……?


「あとちなみにですねー、今回は審査員のゲストもお呼びしておりますので、ご登場していただきましょう!」

混沌とした信奉者らのコメント欄を尻目にシャクビーはそのゲストを呼ぶと、アルジの隣にネズミスタッフがえっほえっほと椅子を運んできた。

「無駄にポジションだよね、これね」

シャクビー、どうした急に。

(それにしてもスタジオ内外にそれっぽい人影も見当たらんし、一体何処から――て、ウギャッ!?」


――――「はいどうも〜。生ける炎(クトゥグア)こと赤神のクトでーす!」


急遽生まれたお隣の空席に突然人魂のような物が浮かび上がる。

それは次第に大きくなり、メラメラとした火の中から赤髪の人の姿をした全身炎のような青年に変わった。

「は〜?!よりによってクトなのかよ!何でお前が審査員なんだよ!」

「お、ニャルラトホテプのあっくんじゃないですか!今日は、よろしくお願いしまーす!」


(クトゥグア…、ニャルラトホテプ……。さっきのルルイエといい、まさかコイツら()()()()とかいうとこの……)


いやいやいや……そんな馬鹿なことがあり得るのか。


「んじゃ早速一品目なんですが、クトさん」

シャクビーがそう言うと、クトゥグアにその料理を勧める。


「……これ、何ですか」

「俺たちのルルイエです」

「??????????」

「はい、俺たちのルルイエです」


クトが硬直したことも気にならないのかシャクビーは大事そうに二回も料理名を伝えると、触腕を操り小皿に取り分けると目の前に置いてきた。

あっくんもそれに続いて黒い手を数本伸ばし、ルルイエの一部を次々に配膳している。

「アルジ達も食べてってくれーい」

「わぁ…、あぁ……!」

「いただきまーす!」

何とも言えない声を漏らしてしまったが、隣で躊躇なくソレを口に運ぶキネシス。

「キネシス……。それ、美味いのか?」と心配になったアルジは聞いてしまったが、

「うん、おいし…ウップ!」などと配信中に出しちゃいけない声が出そうになるアホなのであった。


「うおっ、これ、なんか脂っぽくなぁ~い?」

「話聞いてたかよ?!バター半分入ってるからな、くろくろ!』

しろわがくろくろに運ばれてきた料理の輪切りの魚肉ソーセージをフォークで食わせ、脂に指摘したところ笑いながらをツッコんでいる。

クトもイヤイヤ顔ながら蛸足を味わっているが、途中からウンウンと頷き出した。

「うん、0点で」

(腹、括るか……)

アルジも単独で浮いてしまうのは癪だったので覚悟を決めて食べてみたのだが、

(脂っこいなこれ……。具材がタコとかなだけまだマシなのか……?)

案の定バターが強いのだが。みじんぎりのタマネギと摺り下ろしリンゴを割合多めで掬って一緒に味わう分にはまだ…、ごめんやっぱつれぇわ。


―――――――――――――まじカス、まさにカス―――――――――――――

―――――――――― うるせぇ…ちょっとお待ちください――――――――――


「次のしろわさんとくろくろのペアもそろそろ準備出来ましたかー?」

「は〜い」「はい」

「それでは二組目よーい、スタート!」

シャクビーの合図とともにしろわとくろくろが先程のカプセルトイマシンに向かった。


一枚目、サツマイモ。二枚目、シメジ。三枚目、きしめん。


「随分、和風系の主食来たな。くろくろ、時間無いからこのままあと二回回してー』

「わかりました〜」

くろくろは手探りのような両前足の動きでマシンのダイヤルを二回分回し、結果が気になったしろわが出てきたカプセルを開ける。

四枚目、秋シャケの切り身。五枚目、ニンジン。

「ニンジンイラナイヨ〜」

「いや要るだろしろわ、ラインナップ的に」


「よし、じゃあ、やっていきますけど~……」

「くろくろ〜、シメジとシャケの下拵えしとくからサツマイモとニンジン切ってくんなーい?」

18世紀のドイツなのにしろわは土鍋を何処からか取り出すと、だし汁800mlを流し込んで火にかけている。

「はいはーい」

くろくろは頼まれたハーフサイズのサツマイモと三分の一に切られたニンジンをまな板の上に置くと、全身から黒いモヤのようなものを発生させて具材をそれに呑み込ませた。

……直後に黒い何かが雲散霧消したと思えば、そこには既に柔らかくなった半月切りのサツマイモと短冊切りのニンジンがさも当たり前のように置かれていた。

「くろくろどうもー」

(シャクビーとあっくんがアレだったんだ。そら、こっちもそういうことするよな……)

楽曲の話題で配信のコメント欄と盛り上がっているキネシスとシャクビー、料理への感想にキレるあっくんに対し「仲良くしようよ〜」と笑いながら返事をするクトらの隅で一人、現実味の無い状況のせいで感覚麻痺が始まっていたアルジだった。


「次に、具材をお鍋に入れてきます」

具材の準備も終わると、しろわはまずサツマイモとニンジン、シメジを土鍋の出汁スープに加えて中火で煮込み始めた。

(あの妙な能力は兎も角としても、こっちのペアはまともに作ってくれそうだな)

バターの入る余地がない料理になりそうな辺り、アルジは安心感さえ感じていた。


「………………」


横に別の鍋を用意し、同時進行できしめんを茹でているしろわの横で何やら呟いているくろくろ。

(ありゃ寝てるのか?)


――――「……変われ」


くろくろが突然ボソッと呟いたそれを耳にして直ぐのこと、

「よーし。()()()()()()()()で酒、みりん、醤油を足していきまーす」

(え、入れたばかりの具材が煮詰まった?一体、何を言っているのか……)


しろわは料理酒大さじ一杯、みりんを大さじ一杯半、醤油を大さじ2杯鍋に足していき、更にそこへ水気を切った一口大サイズのシャケの切り身を鍋へ追加していく。

(残り時間2分でどうやって仕上げるつもりなんだ?……うわ出た、またあの黒いモヤか)

疑問に思うのも束の間、しろわがくろくろの背中を右脚で軽く叩くと再び黒い霧のようなものがその背中から溢れ、具材を煮込んでいる鍋を包んだ。

しろわはそそくさと麺類用の器を用意すると先に麺を入れ、霧が散った後に姿を現した鍋の中からお玉で具材とともにつゆをその上から掛けていく。


「完璧じゃん、これ完璧で究極のきしめんじゃん」

「ところでしろわ、味見した?」

「BEENが味見するわけねえだろ、何をいまさら」

(マジかよBEEN)


くろくろの時短テクニックのような何かをフル活用し、残り時間ギリギリで料理を完成させたコンビ。


「「はい、出来ました~。」コチラ、思いを強く抱きしめんです」

「名前以外は、ま、まともだ……」


しろわらの料理名発表とともに丸形テーブル中央に運ばれてきた丼に視線をやる。

湯気が柔らかく立ち昇る琥珀色のつゆ、その中でゆったりと波打つ幅広の白い麺。

秋鮭、サツマイモ、ニンジンにシメジと具材も彩りも豊かで、先ほどの料理と比べても視覚に優しい。

「ていうか、まさか18世紀のドイツでこんなモロ和食が出てくるとは思わねぇだろ……)


シャクビーらも「おおー」との反応を見せている。

調理した二匹によって小皿に取り分けられ、各メンバーの眼前に運ばれてきた。


「じゃさっそく頂きますか」「食べてみるかー」

「「いただきまーす」」

「この組の料理は何点だろうか」


平たい麵に合わせるように使われているような濃い目のつゆが具材にも染み込んでいる。

芋も甘くホクホクとしていて個性が生きている。

「うめえ」

「だろ、アルジ?あの二人のバター半分よりよほど料理してるだろ」

「いやいやおま、しろわがあっくんにバター半分とか吹き込んだからだろうがよ!」

「まあな」

さも当然とばかりの態度を見せるしろわに対し、

「もうね、キ レ そ う」

鼻腔をフガフガさせ、笑いながらキレているシャクビー。

「我ながらあっさりしてて、食べやすくておいしいっすね」

相変わらずマイペースなくろくろであった。


『うまそう』『日本の料理って初めて見た』『ヴルストとか入れても美味そう』『麺モチモチしてそう』

視聴者コメントからも(狂信者らしからぬ)好意的な感想が見られる。

「落ち着く味ですね~。季節感もあるし、これはなかなか……。9点かな」

クトの評価も概ね良好。


「キネシス、取り分けた料理まだ熱いからフーフーしとくんだぞ」

湯気の立つきしめんを啜ろうとしていたキネシスにアルジは注意を促す。

あの体(アイスドール)で熱いものを食べたら内側から溶けてしまわないかとハラハラしてしまっていた。

「はーい。アルくん、ところできしめんってなに?」

「ああ、ええと、それはだな……」

(ラーメンぐらいなら知ってるんだが、きしめんかぁ……。キネシスには悪いが、オレも初見だったし知らんと答えとくしか)

「――ここから遠く離れた日本の名古屋ってところ発祥の、見た目通り薄っぺらいうどんみたいなもんだな」

「詳しいんだな、しろわ」

「まあな。俺は貯蔵数宇宙一のセラエノ図書館と常時アクセスしてるから知識には自信がある」

「セラエノ図書館……?何だそれは。宇宙一の貯蔵数とか気になり過ぎるだろ……」

麺に息を吹きかけ凍り付かせてしまったキネシスをよそに、書物に目がないチェンジノイドとしての本能をくすぐられてしまう。

……ていうかきしめんまで掲載している宇宙の本とは一体。


「それより、そろそろお前達の番じゃないか?」

ネズミスタッフも『次お願いします』とのカンペを見せている。

「具材気になるけど、善処するわ。――ほら、行くぞキネシース」

「まだ食べてる途中でしょうが――ー!あ〜〜〜れ〜〜〜」

「そんなカチンコチンにして、何が食べてる途中なんだよ〜」

「アルくんがフーフーしてって言うからぁぁぁぁ〜〜〜……」

しろわに促されたアルジは荒ぶるキネシスの襟を掴んでキッチンまで引き摺っていった。


「はっ…仲良いな、あの人間ども。――シャクビー、そろそろMCの出番だろ」

「あいよ〜」

後ろで黒い腕を背中から出したあっくんがくろくろの背中をつつくその姿を呆れた表情で見ているクトをよそに、しろわはシャクビーに開始の合図を送っていた。


――――――――オレは、全ての世界で料理人になる男だ!―――――――――

――――――――――――――よろク~ル!――――――――――――――――


「それでは三組目、ゲストのアルジさん&キネシスさんペアです!」

(オレ達の覚悟は、決まった!)


「やるぞー!」

「みんな〜楽しんでってね!」

アルジはキネシスと目を合わせる。

……うん、紫色。普段通りに見えても正気度0は相変わらずだな!


シャクビーの合図がスタジオに響いた。

――――「よーい、スタート!」

シャクビー「今日も配信をご覧いただき、誠にありがとうございます!」

あっくん「イェーイ!」

シャ「ぜひBEENチャンネルの登録と通知ONを、よろしくお願いします!」

あっ「見てくれよぉー!」

くろくろ「ぼくらのサブチャンネルはこちら~!」

しろわ「おすすめの投稿動画はこちら(【難易度MAX】四匹でゾンビファーマーズ!プレイ#7日目)」

シャ「公式SNSはこちら!そして我々動画・配信ネタを募集しております!」

シャ・くろ・しろ「ぜひ次回も、よろしくお願いします!」

あっ「感想コメント・評価しとけぇー!!」


BEENの撮影風景を覗いていたアルジ&キネシス。

「何から何まで一流過ぎんだろ……。ていうか、18世紀にSNS…?チャンネル登録…?」

「わたしたちも負けてられませんね!」

「いや何に対してだよ!」

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