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体を入れ替えられて聖女では無くなったけど何も問題ありません  作者: アイ氏
3章真実の愛の結末は?

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魔獣襲来②

私は、占い師のプロディ。


魔王様から授けられた魔道具の水晶玉を通して、ベルシュタイン侯爵夫人の様子を眺めていた。


このところ、侯爵夫人はひどく疲弊している。


だが、その理由を本人は知らない。


闇の魔道具を使うたびに、自らの生命力が少しずつ奪われていることを。


そして、私が与えた闇の魔道具が、単に娘を操るための道具ではないことも。


あの魔道具は、使用者の生命力と魔力を密かに吸い取り、蓄える仕組みになっている。


それとも知らず、侯爵夫人は今日まで魔道具を使い続けてきた。


そう考えると、笑いが込み上げてくる。


「……ふむ」


私は小さく呟いた。


ベルシュタイン侯爵夫人は、実によく働いてくれた。


娘への執着。


公爵家との婚姻に対する野心。


そして、マリアへの嫉妬と憎悪。


それらの感情を利用するのは、実に容易だった。


闇の魔道具を与えれば、侯爵夫人は喜んで受け取った。


娘を思い通りに操れると知れば、何度でも魔力を注ぎ込んだ。


その結果、魔道具には大量の魔力と生命力が蓄えられた。


そして、これまでに集めてきた人々の生命力。


その全てが、魔王様の魔獣作りの為の糧となる。


「でも……そろそろ限界かしら」


私は水晶玉に映る侯爵夫人を見つめた。


顔色は悪く、身体もすっかり衰弱している。


これ以上魔道具を使わせれば、遠からず命を落とすだろう。


もっとも、私にとって侯爵夫人の命など、どうでもよいものだけれど。


必要なのは、魔王様に捧げる力だけなのだから。


「十分に集まったわ。これ以上、あの女を利用する必要もないわね」


私は薄く笑った。


「潮時ね」


そう呟くと、私は闇の魔道具に蓄えられた力を引き出し始めた。


黒い霧のようなものが魔道具から溢れ出し、私の周囲へと集まっていく。


それは、侯爵夫人の生命力と魔力の塊だった。


私はその黒い霧を、小さな瓶の中へと封じ込めた。


「さあ、我が主よ……」


私は恭しく頭を垂れた。


「十分な力を集めました。どうぞ、お受け取りくださいませ」


その言葉に応えるかのように、小瓶に亀裂が走った。


次の瞬間、小瓶は砕け散り、中に封じられていた黒い霧が勢いよく溢れ出した。


霧は渦を巻きながら宙へと昇り、やがて虚空に生じた闇の中へ吸い込まれていく。


こうして、集められた生命力と魔力は、魔王様のもとへと送られた。


そして、その瞬間。


神殿の奥深く。


人目につかない場所に、異変を起こした。


何もない空間から、魔霧と呼ばれる黒い霧が湧き出し始めたのだ。


霧はゆっくりと広がり、やがて一か所に集まっていく。


その奥から、不気味な音が響いた。


――ドクン。


まるで、生き物の鼓動のような音だった。


――ドクン。


――ドクン。


その音は次第に大きくなっていく。


まるで、巨大な心臓が動き始めたかのように。


黒い霧の中で、何かが蠢いていた。


そう。


魔王は、私が集められた生命力と魔力を使い、神殿の中に新たな魔獣を生み出したのだった。


◇


突然、神殿全体を覆うように、禍々しい気配が広がった。


「……っ!?」


私は思わず身を震わせた。


何か、とても邪悪なものが近づいている。


そう感じた次の瞬間だった。


「きゃあああっ!!」


神殿の奥から、悲鳴が響き渡った。


続いて、何かが壊れる激しい音と、人々の叫び声が聞こえてきた。


「ま、魔獣だ! 魔獣が現れたぞ!」


誰かが叫んだ。


その声を合図にしたかのように、神殿のあちこちから悲鳴が上がり始めた。


どこからともなく現れた魔獣たちが、次々と人々に襲いかかっていたのだ。


それも、一匹や二匹ではない。


数え切れないほどの魔獣が、神殿の内部に出現していた。


「どうして神殿の中に魔獣が!?」


誰かが叫んだが、その問いに答えられる者はいなかった。


神殿はたちまち大混乱に陥った。


逃げ惑う人々。


悲鳴を上げる貴族たち。


人々を避難させようと声を張り上げる神官たち。


そんな中、セインフォード殿下が素早く剣を抜いた。


「皆、落ち着け! 魔獣は私が食い止める! 神官たちは人々を安全な場所へ避難させろ!」


そう叫ぶと、殿下は迷うことなく魔獣へ向かって駆け出した。


「セインフォード殿下!」


私が呼び止めるよりも早く、殿下は迫り来る魔獣に剣を振るっていた。


鋭い一撃が魔獣を斬り伏せる。


しかし、倒しても倒しても、新たな魔獣が現れてくる。


このままでは、神殿の大広間にいる人たちまで襲われてしまう。


私は周囲を見渡した。


大広間には、国王陛下や王妃陛下をはじめ、多くの貴族や神官たちがいる。


この人たちを守らなければ!


そう思った瞬間、私は両手を前にかざした。


「お願い! みんなを守って!サンクチュアリ!」


私は咄嗟に光魔法を発動させた。


眩い光が私の手から溢れ出し、瞬く間に大広間の出入口を覆っていく。


そして、光は巨大な結界となり、大広間を魔獣たちから隔てた。


次の瞬間。


ドンッ!!


結界に魔獣が激しく体当たりした。


「きゃあっ!」


近くにいた人々が悲鳴を上げる。


しかし、光の結界はびくともしなかった。


魔獣たちは何度も結界にぶつかり、鋭い爪で引き裂こうとする。


それでも、結界を破ることはできなかった。


「よかった……!」


私は思わず安堵の息を漏らした。


けれど、安心している場合ではない。


結界の外では、今もセインフォード殿下たちが魔獣と戦っている。


そして、神殿のあちこちからは、人々の悲鳴が聞こえ続けていた。


どうして、こんなことに……。


ここは神聖な神殿のはずなのに。


なぜ、これほど多くの魔獣が現れたのだろう。


私は結界を維持しながら、混乱する神殿の様子を見つめていた。


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