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体を入れ替えられて聖女では無くなったけど何も問題ありません  作者: アイ氏
2章シオン聖国の異端審問官

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【番外編】取り引き

シオン聖国の審問官とマリア嬢の暗殺未遂の話しを聞いた。私は密かにフレイヤ公爵邸へと急いだ。


やっと弟と聖女であるマリア嬢の婚約がなり立つと言う時に、面倒な事件が起こったものだと思う。


だが『王家の病』の克服の為には、ここで2人の婚約を潰す訳には絶対にいかない。


何故なら、次に『王家の病』を発症する王子は、私の孫になるからだ。

私に取っては、他人事ではなかった。


フレイヤ公爵邸には、弟のセインフォードと、マリア嬢、そしてシオン聖国から派遣された審問官が、応接室で、私の到着を待っていた。


私が部屋に入ると、セインが声を掛けてきた。


「兄上。ご足労を頂き申し訳ありません」


「それはいい。それよりも詳しい話しを聞かせてくれないか?」


「はい。それについては、こちらのラインベルト審問官から、お聞き下さい」


そう言って隣りに居た女性を紹介して来た。


「クリーガァの若き太陽。王太子アークレイン殿下には、お初にお目に掛かります。私はシオン聖国異端審問官エステラ・ラインベルトと申します」


「ああ。ラインベルト審問官殿の話しは、父上から聞いています。この度は、我が国の者が、貴女の命を危険に晒した事を先ずはクリーガァの者としてお詫びします」


「はい。謝罪は受け取ります。そして、ここかから本題に入られせ頂きます。先ず犯人が狙ったのは聖女様の命。いえ正確にはロザリア・ピラカンザ嬢の命を狙って公爵邸に侵入しました。犯人はイザベル・ピラカンザと言う者です。そしてこの女は『闇の魔王』と取り引きを確認しました。シオン聖国とクリーガァには、闇の魔王と取り引きがある者はいかなる身分の人間であろうと、シオン聖国に身柄を引き渡す条約があります。よって、イザベル・ピラカンザはシオン聖国で裁きます」


「イザベル・ピラカンザ…」


審問官の話しを聞いて厄介な事になったと思った。


シオン聖国の人間を巻き込んでいるだけでも厄介なのによりにもよって、ロザリア・ピラカンザの身内。


ここで対処を間違えばセインとマリア嬢の婚約は白紙に戻ってしまう可能性もある。


先ずはイザベル・ピラカンザの父親であるピラカンザ伯爵にイザベル嬢の除籍を打診する。


除籍しなければ当主たるピラカンザ伯爵の責任が問われる。


そうなれば爵位の剥奪は免れない。


ピラカンザ伯爵とて家を潰して平民になってまで娘を守るつもりは無いだろう。


イザベルの除籍に応じる筈だ。


残る問題は、ここに居るシオン聖国の審問官の説得だ。


先ずはイザベル・ピラカンザの身柄引き渡しは、ピラカンザ伯爵の除籍の手続きが終わるまで猶予して貰う。こちらは前例があるので応じてもえる筈だ。


そしてこれが一番の難題だが出来ればイザベル・ピラカンザでは無く、カロリーナに化けた身元不明の女で、シオン聖国には裁判に掛けて貰いたいのだ。


マリア嬢は被害者ではあるが、一応、ピラカンザ伯爵家の血縁者と言う事になる。


ピラカンザ伯爵家から異端者を出したとなればフレイヤ公爵の養女として相応しく無いとか、ましてや王族と結婚などあり得ないと他の貴族達から非難の声が上がるだろう。


そのリスクを可能な限り減らしたかった。


そしてセインも、その事は分かっている。


だから困って私に連絡してきたのだろう。


セインの性格から考えても裏工作や政治的な駆け引きは苦手だから。



私がピラカンザ伯爵やシオン聖国と話しを付けて、そしてイザベル・ピラカンザの事が、他の貴族達の耳に入らない様にするしか無い。


私はラインベルト審問官とフレイヤ公爵の応接室で2人だけで話す事にした。


私と審問官は、お互いに向かい合いイスに腰掛ける。


そして私の方から話しを切り出した。


「イザベル・ピラカンザの身柄は引き渡します。正し2つ程お願いがあります」


「なんでしょうか?」


「先ずは、イザベル・ピラカンザの除籍のて手続きが完了するまで待って頂きたい。我が国では、異端者はシオン聖国に身柄を引き渡し、そして表向きは家長たる者にも連座で責任を問わなければなりません。実際には『異端者』が除籍する事で責任を取る必要がなくなります。滅多に異端者は出ませんが、以前身柄の引き渡しには猶予を出した前例があるはずです」


「分かりました。前例でも2週間でしたね。その期間までなら可能です」


「それで構いません。後、これはかなり無茶な頼みですが可能であるなら、異端者の身元は伏せて頂きたい。今セインと、マリア嬢の間には婚約の話が出ています。この大事な時期にピラカンザ家の人間が異端者として裁かれれば婚約は一度白紙に戻さなければならないし、フレイヤ公爵とて、マリア嬢を養女とて保護するのは難しくなります」


「ふむ。確かに聖女様の体は、ロザリア・ピラカンザですからね。身内から異端者が出たとなれば、色々と問題になりクリーガァでの生活は厳しものになるでしょう。分かりました。本国にその事を伝えます」


「ありがとうございます」


「最後に一つ聞いてもよろしいか?」


「なんでしょう?」


「本来なら聖女様と結婚すべきなのは貴方だと思うのですが?

そしてこのクリーガァに再び『聖女様』が戻って来たと国民に知らせれば、間違い無く貴方の地位は盤石になる筈だ。なのに何故そうされないのか?

もしセインフォード殿下に野心が有れば貴方の地位は危うくなると思いますが…」


ラインベルト審問官の疑問は、マリア嬢の正体を知る者ならば疑問に思って当然なのかも知れない。


だが…。


「確かに。しかしマリア嬢は私には興味が無いし、私も正直に言えばマリア嬢に興味が無い。それに今は、帝国時代の様にただ聖女様がいれば、それ国や地位が安泰と言う程、単純な世ででもありません。はっきり言ってマリア嬢は少々素直で世間を知らない過ぎる。感情も顔にでやすい。私としては王太子妃、そしていずれは王妃として人の上に立つ資質のある女性を希望しています」


「成程…」


ラインベルト審問官も、私の答えに納得したのか、その後、話の続きはなかった。


そうしてラインベルト審問官は約束を守ってくれた。


お陰で、フレイヤ公爵邸での侵入事件やその人間が異端者だった事は公になったが、その犯人が、イザベル・ピラカンザだと言う事は世間に広まっていない。


そして建国祭が起こなわれセインとマリア嬢の婚約が発表が無事におこなわれた。


その後開かれたダンスパティーで幸せそうに踊る2人を見て私は安堵した。

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