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第59話 決行、無限リスポーンキル・1

「スキル発動、ホーンタックル!」


 俺はイッカクウサギの両手で魔素を掬い上げてスキルを発動。

 今回は趣向を凝らし、角に向けて魔素を集中させてみる。

 いつもより速度は落ちるも、魔素がなくともこの身体の脚力は凄まじい。

 一秒足らずでゴロックに肉薄し、角を押し付けるように体当たりをぶちかます。


「ゴッ……!」


 ゴロックの硬い身体にヒビが伝い、岩の破片が宙を舞う。

 深く突き刺さった角を頭上に掲げる形でゴロックを持ち上げ、首を振って霧の向こうにぶん投げる。


「スキルを使うまでもないね!」


 ゴロックの着地地点に待ち構えたガルタは上体を捻り、一足後ろに引いて拳を構える。

 練り上げられた魔素がガルタの身体を巡り、星空のような煌めきが宿る。


「破ァッ!」


 ガルタの魔素の籠った正拳突き。

 ゴロックの中心を真っ直ぐ捉え、ゴッという鈍い音と共に砕いた。

 いくつかに分かれたゴロックの身体は光の粒子に変わり、周囲に待機している五匹全員に吸い込まれていった。


「これで六匹目かな?」

「分担すれば意外となんとかなるものなのだな」

「というか師匠はあんな魔素を使って平気なんすか? むしろスキル使用時よりも……」

「あぁ、あれは身体の中で循環させてるだけだから見た目ほど魔素の消費はないよ。逆に見た目ほどのパワーもないけどね」


 その後にすごいでしょーと付け加えて胸を張るガルタにサクラが音のならないモチモチの拍手を送り、ガルタは満更でも無い様子で鼻をふんふんと鳴らしている。


 素直なガルタを直接褒めると調子に乗りすぎるから言わないが……スキルを使わないで魔素を体内に循環させる技術には脱帽だ。

 例えが難しいが……水の表面張力をずっと身体の中で保つような感覚だろうか。

 その場で動かなければまだその状態を保てるが、ガルタは水がたぷたぷの状態で激しい格闘の戦闘を行う。

 水……魔素が溢れるとむしろスキルを使うより余計に消費してしまい、全身を巡る前に外に出てしまうため身体能力強化の恩恵も受けられない。

 正直言って神業の領域、戦闘の才能が段違いだ。


 心の中でガルタをべた褒めしている途中……視界の端で紅の光が蠢く。


「ついに……きたぞ」

「それじゃあ……作戦開始だね。ウサミ」

「あぁ。スキル発動、ソニックウェーブ」


 俺は角を震わせて周囲に超音波を飛ばす。

 その横でミリピードが触覚を揺らし、二匹で索敵を行う。

 意思とは別に足が震え、ミリピードも脚と顎肢がざわざわと騒がしく動く。


「……俺から見て左斜め後方、意外と近い。全速力で向かうと十秒かからないくらい」

「自分も同様の結果だ。周囲に他のモンスターは見当たらない」


 俺とミリピードはサクラに視線を送ると、サクラはコクンと頷いて魔素を練り上げる。

 ミリピードが横に付き、細かい角度や距離を伝えて調整を行う。


「スキル発動、モチだま!」


 準備が整い、サクラが餅の弾丸を発射。

 淡い桃色の餅は霧の中に吸い込まれる。

 どこからか唾を飲み込む音が聞こえ、心拍が高まってくる。

 そして……


「ギィィィィ!!」


 聞き馴染みのある、それでいていつまで経っても聞き慣れない狩る者の雄叫びが辺りに反響するように響く。

 俺は魔素を耳辺りに集中させて聴力を高め、どんな小さな音も逃さないよう前のめりに身をかがめる。

 小石が擦れる音、空に舞った砂埃が地面に落ちる音さえも聞こえる。

 目を閉じず、思い切り目を開いて目当ての音を聞こうと耳を澄ませる。

 緊張のあまり目が乾いてくるも、瞬きする余裕すらない。


「ヒトヒト……シクシク……」


 耳がピクピクと動き、確かにその声を捉えた。


「詠唱始まった! 鬼はその場から動かない!」


 俺の申告と同時に、ガルタとミリピード、サクラとチギリと俺の二チームに別れて散開する。


「ヒトヒト……シクシク……」


 俺の耳は走りながら鬼の詠唱を聞き取る。

 そしてどこからか冷たい風が吹いて体毛が軽く靡いた。


「イキヨイキヨ!」


 鉄棒が地面を叩く金属音、そして多くの空気が押し出されるもわっという音が耳に届いた。

 俺を半殺しにした……黒霧の展開。

 それに加えて死んだモンスターの復活……地獄の領域が作られた。


「頼んだぞ……二匹とも」


 俺はいつでも動けるよう構えながら、心の中で祈るように手を合わせた。

 俺は仲間を……友達を信じる。

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