第52話 狂気の突撃
「仲間を増やすって……いるかも分からない、ついてきてくれるかも分からないモンスターを探すってこと?」
「……それ以外に、俺は方法が思いつかない。……例えばオニを避けながらモンスターを殺し続けてレベルアップ。言うは易し行うは難しだ。視界のない霧の中、回復アイテムも大量に消費したこの状況でそんなことができると思うか?」
俺の言葉を聞いて、全員が黙りこくる。
チギリの首元にある鬼の印は、オニが近づくと強く光る性質があるらしいが……霧の中ではどの方向にオニがいるか分からないしほぼ無意味だ。
「奇跡のいくつかくらい起こさないと、多分俺たちはこのラビリンスを攻略できない。それに……」
──────キンッ!
突然響いたその音に、全員が一斉に視線を上に向ける。
金属同士がぶつかるような、甲高い音。
上層だ。
しかもすぐ上。
俺は耳を澄ませて集中する。
地面を擦れる獣の足音、砂が舞って落ちる音、そして……
「ゴロぉぉぉ!!!」
──────キンキンッ!
全員が目を見合わせた。
間違いなく誰かが戦っている、戦闘音だ。
「行くしかない!」
「ウサミ、回復は……」
俺は残ったリンガの実を全て口に入れ、思いっ切り噛む。
頬を膨らませたままガルタの方を見て、俺は笑った。
「らいじょうぶ!」
ガルタもそれを見て吹き出すように笑い、全員走って階段を上り出す。
俺は高速で口の中を空にし、魔素を練りながら階段を上る。
どうせこの先も霧が立ち込めてる、状況を把握するためにソニックウェーブを使う!
俺は少しずつ再生する角にむず痒いくすぐったさを感じながら魔素を角に込め、ただただ足を動かす。
そうしているうちに戦闘音が徐々に近づいてくる、いや、俺たちが近づいていく。
「光が見えるっす!」
サクラの声と共に、階段の終わりが見えた。
第七フロアに上がったらすぐにスキルを使う……そう心構えをして階段を上り切ったのだが。
「突撃ィィィィィ!!」
野太く腹に響くような雄叫び。
声に乗るその気迫に思わず俺たちは足を止める。
声の主であろう迷彩柄のモンスターは、変則的な動きで対峙するゴロックに突貫する。
あれは……ムカデのモンスター?
確か名前は……ミリピードだったか。
サイズは俺と同じほどで、自分と同じ大きさの虫がいるという事実に軽く震えた。
「おい! あっしと同じ印があるのだ!」
チギリの前足が指す先……ミリピードの頭部の反対側、お尻の方に鬼の印が見えた。
間違いない、あのミリピードはラビリンスで意思を得たモンスターだ!
「ゴロォォ!」
ゴロックから灰色の光が迸り、いくつかの小石が出現する。
そしてそれを凄まじい勢いでミリピードに飛来!
あれはスキル、ロックフライか!
「危ない!」
ガルタが地面を蹴って走り出す……が、間に合わない!
ミリピードは鬼の形相を浮かべながら走り続ける、勢いを全く緩めずに小石に突撃する!
「退かん! 退かん! 退かぁぁん!! ハードガード!」
直後、ミリピードと小石が激突。
衝撃波が発生し、土煙の中にミリピードと小石が吸い込まれた。
まずい……!
ガルタがギリギリと歯を噛んで方向転換、ゴロックを倒す方針に切り替える。
俺はゴロックをガルタに任せ、小石に激突したミリピードの保護に向かう。
が……
「なんだその貧弱な一撃はぁ!! 自分を舐めているのかぁ!?」
俺は口と目をあんぐり開けて走り出すミリピードを見る。
いやいやいや、冷静に考えてあのスピードで飛ぶ石に自らぶつかって無事でいられるわけがないだろ!
モンスターが丈夫とはいえこれはおかしいだろ!
それ以前に攻撃に真正面から突撃するなんて……恐怖心がないのか!?
ゴロックも同様に驚いたのか、震えてゴロゴロと情けない声を漏らす。
「スキル発動ぉ! ア ゛イアンシザァ ゛!」
喉が心配になるような激しいがなり声でスキル発動が宣言される。
頭部近くにある顎肢が鋭く伸び、威嚇するようにそれをぶつけ合う。
キンキンと甲高い金属音が鳴り響き、ゴロックは思わず一目散に逃げ出した。
「臆病者めがァ!」
ミリピードは一気に加速し、逃げるゴロックに瞬く間に追いついた。
そしてゆっくりと顎肢を開き……目に見えぬほどの速度で閉じた。
──────キィンッ!
遅れて金属音が響き、ゴロックの上半分がズズズと音を立てて地面に滑り落ちる。
残ったゴロックの下半分は支えを失ったようにゴロンと倒れ、ミリピードの顎肢は元の形に戻った。
「さぁ……次はお前か? 虎小僧」
ミリピードの横に並んだ小さな目がギョロリと光り、顎肢同士をぶつけて威嚇する。
こんな戦闘狂みたいなやつ……本当に仲間にできるのか……?




