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7/11

君が望む学校生活


「えーっと、恋衣...どうしたの?」


平日の昼間、閑散としたバイト先のドーナツ屋さん。ワンオペ中に暇を持て余していた糖太は、入店してからずっとテーブルに伏せたままのメンヘラファッションな幼馴染に声を掛けた。


頭上から掛けられた声にのっそりと反応して顔を上げる幼馴染。なんだか、先週よりも少しだけ頬がこけたような印象を受ける。


「ねぇ、トータぁ...なぐさめてよぉ...」


力のない声を返す恋衣の姿に、糖太は小さくため息をこぼした。




恋衣はファッションメンヘラである。根は『清楚で真面目だけが取り柄』の典型的な普通の女の子だ。


「うぅうう...悲しすぎるよぉ、その幼馴染のヒロインがねぇ」


恋衣の話を聞くと、どうやらメンヘラで有名なアニメを一気見したらしい。メンヘラなんて現実だけでお腹いっぱいなのに、わざわざそんなアニメを見るなんて...物好きだなぁ。


「最初はね、スマホの待ち受けのおまじないをしてた主人公を見かけて、それを友達として応援しようとしてたんだけど、途中で相手のヒロインの子が交通事故にあっちゃって」


オタク特有の早口言葉で捲し立てる恋衣の話を聞き流しながら、お店の入口をチラっと確認する。どうやら、しばらくはお客さんの気配はないようだ。


「それから数年後、植物状態のヒロインが目を覚ますんだけど。なぜか性格が豹変しちゃって、急に鉈を手にして家に突撃してきてぇ」


なんだか、すごいネタバレをされている気がする。いや、そのアニメ見る気ないからいいけどさ。


「まぁその後なんやかんやあって、最後は綺麗な景色を背景に船の上で結ばれるんだけど」


ナイスボートな結末に「ほぉん、へぇ~よかったねぇ」と適当に相槌を打っておく。壮大なネタバレを吐き終えた恋衣は、気だるそうにその身体を机に投げ出した。


「ん?でも、それってハッピーエンドじゃない?恋衣は何が悲しかったの?」


結局、主人公とヒロインが結ばれたのならば大団円なのでは?もしかして、恋衣は幼馴染のヒロインに感情移入してた...とか?


「いや...それがさぁ」


テーブルの上に伸ばしていた両手がピタッと動きを止め、恋衣は顔だけこちらに向けて渋い顔を見せる。


「最後の最後で、鉈を持った幼馴染が全員スプラッタにしちゃって...」




血で染まったエンドロールにメンタル削られた恋衣は「はぁああ~」と深いため息をつく。


「あの鉈が伏線だったとはなぁ...」


一周回って変な感想をこぼす恋衣。いや、それ展開が強すぎて考察のし甲斐ないと思います。


「あー...恋衣も大変だったんだねぇ。まぁ、ドーナツでも食べて元気出しなよ」


ここで売上を上げたところで、バイトの自分には何の利益もないんだけども。まぁ、少なくとも今はバイト中だから多少は貢献しておこう。


「んー、でも食欲ないかも。昨日から、何も食べてないし...」


ほとんどプチ断食になっている状態の恋衣。もはや、新手のダイエットなのかもしれない。


「じゃあ、急にドーナツ食べるのは良くないかもね。サイドメニューの『中華がゆ』とかいいかもね」


そう言い残して回れ右をする糖太の姿を、ぼんやりとした顔で見つめる恋衣であった。




この後、中華がゆで食欲スイッチが入った恋衣はドーナツ爆食祭りを開催。


後日、増えに増えた体重に恋衣の悲鳴が上がるのは、また別のお話。


あなたのメンヘラはどこから?私は闇鍋

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