ボーイ・ミーツ・メンヘラ幼馴染
『メンヘラの多い人生を過ごしてきました』
甘木 糖太はアイドルタイムの暇を持て余しながら、ぼんやりと自分の生涯を振り返っていた。
大学3年生、あだ名はトータ。甘いものは全般好き、名は体を表すを地で行くタイプだ。実際にドーナツ屋さんでバイトしているが、むしろこれは半分ネタのつもりでもある。
(あ、今日も恋衣にドーナツ買って帰ろうかな...)
隣に住む幼馴染の恋衣は、幼少期からの数少ない友人である。
と言うのも、僕はその...なんというか...メンタルがヘラってる人を惹きつける体質らしい。
その影響で、小さい頃から人間関係が最悪の極み。定期的に寄ってくるメンヘラによって、毎回のように人間関係がリセットされてしまう。
さらに悪いことに、この引き寄せ体質の対象は異性に限らない。そう、男性のメンヘラも寄ってくるのだ。
男友達だと思って接していると、急にメンヘラ化する恐怖。同性のメンヘラとか、ホントマジで需要無いですから。
そんなこんなで、僕は『人間関係は狭く浅く』をモットーに細々と生きている。
◇
「いらっしゃいませー」
暇すぎたアイドルタイムを乗り越え、夕方にかかる時間になって少しずつお客さんが入り始めた。夕方の帰宅時間帯のピークまでは社員さんとの二人体制なので、あと少しの辛抱である。
ストック分のドーナツをトレイに乗せて、残り少なくなったショーケースに補充する。落とした目線の先、透明なショーケース越しに黒いワンピースが視界に入った。
顔を伏せたまま確認すると、白いフリルがあしらわれたゴシック調の黒ワンピースを着飾ったお客様がショーケースの前で佇んでいた。ふと、肩から下げられているクマのぬいぐるみ(の形をしたバッグ?)と目が合う。
(...あ、なんかこの服装は...危ういな)
長年の経験で培われたメンヘラセンサーが、ビンビンに反応を示す。こいつぁ、やべぇ。
とっさに全身のオーラを完全に断って気配を消した。たぶん強敵に遭遇したハンターの気持ちって、こんな感じなんだろうなぁ。
隣のディスプレイに移動して、素早くドーナツの補充を終える。注文で声をかけられる前に、さっさと裏に戻ってしまおう。
「あの、すみません...」
補充作業が終わるのを見計らったように、黒ワンピースのお客様が声をかけてきた。
『あぁ、間に合わなかった...』と心の中で肩を落としながら、気合を入れ直して営業スマイルを顔面に張り付ける。
「はい、お決まりで......恋衣?」
覚悟を決めて顔を上げると、そこには見慣れない服装の見慣れた顔が不安そうに僕を見つめていた。
オチがなくてもいい、人間だもの




