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X-it《エグジット》人をモノに変え、モノを人に変える、相反する力を巡る神々と人々の攻防  作者: 向愛 水哉
第2章 The Y-axis

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情実と穴埋めの人事・6

 これを つい『敗北』と捉えてしまうのは、内に秘めたる恋慕の故であると自覚する野木(のぎ)であるが、そもそも その道ならぬ恋は最初から、誰にも知られぬよう、ただ消え去る時を待つのみと、(おのれ)に強く課している野木でもある。


 遠く離れてしまえば、この無用の(おも)いに焼かれる時間も、少しは短く終るかもしれない――。


 いわば 恋情の余命宣告とも言うべきか、

いっそ ここで それを受けるのも悪くはない――。


 自嘲に近い笑いに頬が緩むのを自覚しつつ、それでも今は 尚 注意深く、この愛すべき可憐な少年の御身(おんみ)安泰(あんたい)であるよう、最良の選択肢を見定めてやらねばならない――その思いで、野木は再び前を向いた。


「…血の(つな)がりって言っても、真央(まお)ちゃんは 僕 少し苦手だったな…、」


 そんな野木の想いを知ってか知らずか、この場に居る、身内ではない者への配慮でもするように、アキラはポソっと、そんなことを(くち)にした。


「ああ、そうだっけ(んだっけ)な、でも ほら、(すばる)()憶えてるだろ(でっぺ)? あいつ、1浪はしたけど、去年念願のT北大に受かってな、いずれはナノテラス?とかを使った研究を始めるんだって、今は一生懸命大学通いだ。アキラをウチに住ませること(すませっこど)なるかも(なっかも)しれない(しぇね)って言ったら、良い話し相手が出来るって、喜んでたぞ(よろごんでだぞ)〜、」


「…昴お兄ちゃん、…そうなんだ。頑張って、行きたがってたところ、行ったんだね…、」


「――アキラだって、あれだよ、仙台に(せんでさ)()れば、高専2つ、ウチから通えるところに(かよえっとごさ)あるし(あっぺし)、お()の成績なら、狙ったところに(どごさ)必ず入れる(へれっ)()。この際 好き(すぎ)ところを(どごば)選べば良いんだ。だいたい お()は『片付ける』より何か『作る』ほうが大好きなんだろ(いいんだべ)? 曾祖父(ひいじい)ちゃんの会社のことは、もう この人達()任せてさ、お()仙台に(せんでさ)来て、自由に好きなこと(すぎなごど)したら(すたら)良いんじゃないか(いんでねぇが)?」


「…そんなこと…、考えたことも無かったな…、」


 どこか思わせぶりな一言(ひとこと)を、アキラは ただ、心底 戸惑っているように呟いた。


「――アキラくんが それを望むのであれば、私どもも それで構いませんよ――。弊社(へいしゃ)は商売柄、誰が欠けても現場は回せる布陣(ふじん)()いておりますからね、私どもに対する遠慮は無用に願います――。」


「――左様(さよう)でございますね。アキラくんが何方(どちら)に行かれましても、少なくとも筆頭株主として、配当を受け取る権利がございますから、(いささ)かではございますが、今後の暮らしに役立てられますよう、私どもも鋭意増収を目指して参りましょう。」


 ここぞとばかりに野木と内藤(ないとう)の2人は、最初 (ゆたか)氏に言われたことへの腹いせのように、代表抜きでも会社の通常業務遂行に不都合は無いこと、社長代行就任を願ったのは、むしろ良心的な配慮からなのだと、にこやかに分からせにかかった。


 しかし、これを聞いていたアキラが見せた、どこか寂しそうな表情に、野木の胸がチクリと痛む。


 野木としても、こんな風にアキラを突き放すような発言をするのは本意ではない――。


 更に言えば、先ほど名前を聞いただけの、見知らぬ『スバルお兄ちゃん』にさえ、湧き上がる嫉妬を抑え切れない自分なのだ。アキラの身の振り方を決める、重要な話し合いとはいえ、こんな駆け引きは野木にとり、やはり(ただ)切ないことでしかない。


 そもそも豊氏にしたところで、住む場所は さておき、最後はアキラくんの自由にさせるつもりでいるなら、何故(なぜ) 最初に決まっていた社長代行就任には あくまで反対するのか、そしてアキラくんも また、その反対を押し切れないのは何故(なぜ)なのか、野木の考えが そこに至ったところで、豊氏が こんなことを口にした。


ここまで お読みくださり、誠に ありがとうございます。

貴方様の貴重な1PVを賜れますこと、いつも光栄に思っております。

今回も、予約時点で『なろう』様先行の内容となっております。

引き続き、次回も お楽しみいただけましたら幸いです。

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