情実と穴埋めの人事・3
四郎丸豊氏は、東北最大の都市・M県S市で建設業を営む。
アキラの祖父・守とは、歳の離れた兄弟であった為、兄の守よりは、その息子・広に年齢が近い上、見た目の印象もアキラの父・広に似る、がっしり体型の五十路の大叔父である。
2男3女に恵まれた、アキラの曽祖父・久にとっては可愛い末息子であったが、跡取りの子や孫が戦死や病死で悉く先立った本家筋の財産を受け継ぐ為、高校卒業後、仙台の大伯父の家に養子として迎えられた豊氏は、アキラの父・広が8歳になるまで、共に東京の四郎丸家で育った仲でもある。
以前「近くに頼れる親戚も居ない」と語ったアキラであるが、それも無理からぬことで、東京の四郎丸家は、郷里から仕事を求めて上京した、曽祖父・久が その祖であり、そもそも ぽつんと離れた分家であった。養子に出された豊の他、3人いた大叔母は各々関東近県に嫁ぎ、祖父・守が唯一授かった子がアキラの父・広で、母や祖母・曾祖母に繋がる縁戚も、今は高齢であったり、都外に住んでいることから、なるほど確かに、目下 近くに頼れる親戚は居ないのである。
元々アキラの四郎丸家はS市――仙台に その源流があり、仙台に行けば、まだアキラが知らない親類縁者も少なくはないらしい。
今は亡き祖父・守が、家業を父・広に譲った後、懐かしい弟・豊の居る仙台に、幼いアキラを引き連れ出かけたことは 過去 何度か あったのだが、遠くの街で、見慣れぬ親戚に囲まれ、緊張と疲労の最中にあったアキラにとり、父・広に似た面影を宿し、アキラが旅を楽しめるよう、訪れる度、あれこれ気を配ってくれた大叔父・豊の優しさは、記憶に残る、有難いものだった。
それ故、父・広が連絡も寄越さず一晩帰らなかったことを、数ある遠くの親戚の中から、アキラが真っ先に選んで電話で相談したのが、この大叔父であったことも、畢竟 自然な成行きだったと言えよう。
果たして この報を聞いた豊氏は、たった一晩帰らなかっただけなのであるが、直ちに これが緊急事態であると即応した。
――何しろ広の親バカぶりは、親類縁者・一族郎党、余すところなく知れ渡っていることなのである――。
とりわけ豊には、少年期を共に育った広が、今や 子を持つ親となり、妻に先立たれて尚、目に入れても痛くないほどの可愛がりようで、子育てに傾注していることは、生前は兄・守から、今は時節の便りから、よくよく知らされていることだった。
――その広が、最愛の息子アキラに何も言わず、家に帰らないというのである。
――これは 一大事に違いない――。
豊は そう確信しつつも、アキラとの電話を終えると、まずは姉達や母の生家、兄嫁の実家など、主だった身内に 広の行方について情報を求め、電話をかけまくった。それと同時に今後の対応についても手短に相談し、いよいよ広の消息が掴めないと判明したところで、差し当たっての対応を自身が請け負い、新幹線と電車を乗り継いで、その日の夕方には東京の四郎丸家に到着したのであった。
豊の記憶する又甥アキラは、母親似の可愛い顔をした色白の小さな子で、思いがけないところで泣き出してしまうような、繊細で優しい幼子だった。
守の死後は、多忙にかまけて しばらく行き来も途絶えていたが、広の帰りを1人家で待つアキラが今、どんなに心細い思いをしているか、一刻も早く勇気付けてやりたい思いで駆け付けた豊であったが、そのアキラ、聞けば早くも広に代わり、社長代行になる話を引き受けたという。
――いや、ちょっと 待ってくれ――、
少し 思っていたのと違う事態に直面し、豊氏は、思わず『待った』をかけたのである。
(ちなみに四郎丸家に招かれていたトキオの『魂』は、この大叔父・豊氏の来訪を受け、ひとまず『依代』となる『実物大お母さんロボット』の中で、息を潜めてコトの成り行きを見守ることになった。)
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ここだけの話、今回は 私的に 初めてのケースでして、それというのも、『カクヨム』様で先行連載している本作が、予約投稿しております現時点で、『カクヨム』版を先行する内容をお届けする形になっているのです。アップされる19日段階で どうなっているか まだ分かりませんが、この後 お盆の帰省も控えていることから、ちょっと進行がキツくなっている状況でもあります。ひょっとすると、21日の更新に間に合わない事態も危ぶまれているところではありますが、引き続き、次回も 間に合うように頑張ります。




