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X-it《エグジット》人をモノに変え、モノを人に変える、相反する力を巡る神々と人々の攻防  作者: 向愛 水哉
第2章 The Y-axis

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顔認証を突破せよ・9

 建部(たけべ)の診療所から最寄りの駅まで、トキオは愛車のミニバイクを押し、アキラは当面の着替えや身の回り品を詰めたトキオのボストンバッグを抱え、2人並んで歩いた。


 駅に着いたところで二手(ふたて)に別れ、アキラは電車に乗り、トキオはバイクに乗って、それぞれ四郎丸家(しろうまるけ)を目指した――のだが……。


 先に帰り着いたのはアキラであり、荷物で手が(ふさ)がっていた為チェック出来なかったスマホをみたところ、トキオから留守電が入っており、〈少し遅れる。心配しないで〉という伝言が再生された。


 バイクで自由に走れるトキオが、何故(なぜ)遅れるのか? アキラには見当がつかなかったが、

言われた通り心配はしないよう、1人 食事や入浴を済ませた。


 実は この時、トキオは帰りの道のりを、ひたすら歩き続けていたのである。


 ――いざ、発進――、という時になって気づいてしまったのだが、『仮ボディ』を操りながら、更に『バイク』の運転をする――という、これは初めての、しかも想像するだに難しそうな、二重の操作になるのだ――。 


これを ぶっつけで公道で やってのける勇気が どうしても出なかったトキオは、ただ ひたすら愛車を押し歩き、アキラの待つ四郎丸家に辿(たど)りついたのは、夜の10時も回った頃だった。


 ようやく帰り着いたトキオを出迎えたアキラに事情を説明し、


「――試しに(またが)ってみたら、視界も これまでと何か違ったんだよ、それが無ければ乗ってみるのもアリだったかもしれないけどさ~、」


と、ロボットながら くたびれたような顔をして、トキオは玄関先に へたりこんだ。


 おそらく それは、5㎝プラスした身長が もたらしたものに違いない――。


――安全策を選び、余分な背丈を加えた結果、成功は(つか)の間に消え、余計な徒労(とろう)()いてしまった――。


――しかし 作戦上、目的としたモノは、(すべ)無事(ぶじ)手に入ったのも確かである――。


 アキラは思い立ち、


「――お疲れ様。ゆっくり休んで――、」


と言って、『依代(よりしろ)』になる小さなキーホルダーをトキオの元に そっと差し出した。


――(おお)いなる第一歩(だいいっぽ)と、忘れてはならない反省――


その2つを噛み締めて、2人は ひとしきり、 顔を見合わせ 心底(しんそこ)愉快に笑ったのだった。


◇      ◇       ◇


 さて、忘れてならない『免許証』の『写真』であるが、この翌日、アキラは早速 野木(のぎ)の元へ、これを見せる為 ()(さん)じた。


 家出人としての事情により、名字は(いつわ)ってあるというトキオからの注釈は了解し、手にした免許証を、()めつ(すが)めつ穴の開くほど眺めた野木は、大きな溜め息を1つつき、

――キ○タクというよりは、どちらかと言えば、志○淳氏に近いのではないですか?――という、どこか負け惜しみのような感想を、何食わぬ顔で述べたということである。


ここまでお読みくださり、誠に ありがとうございます。

貴方様の1PVに、いつも多大な お力添えを頂戴しております。

この物語の構想を始めたのは、志○淳氏が生まれて間もない頃でしたので、こういうオチを獲得出来た、その時の流れに感慨もひとしおだったりします。(最近は、目○連氏も、時折りキ○タク氏に見紛う筆者でありますが。)

引き続き、次回も お楽しみいただけましたら幸いです。

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