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X-it《エグジット》人をモノに変え、モノを人に変える、相反する力を巡る神々と人々の攻防  作者: 向愛 水哉
第2章 The Y-axis

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顔認証を突破せよ·2

 目指す『完成形』となるトキオの肖像写真が手に入り、本格的にロボット製作を開始するに当たり、アキラが最初にしたのは、ある友人に助力を求めることだった。


 その友人の名は、妹尾武蔵せのおむさし

―アキラにとって、数少ない友人の1人であり、アキラ同様、『作ること』を こよなく愛する同い年の15歳である。


 武蔵が作るのは、絵画をはじめフィギュアや立体アートといった美術系の作品で、2人が友達になったのも、小4の夏休み、廃材アートを作ろうと思い立った武蔵が、その材料集めの為、アキラを頼ったのが きっかけであった。


 ほどなく 共に片親の家庭で育っていることを知り、気の合う点も多かったことから、その夏休みが終わる頃までには、2人は すっかり仲良くなった。


 武蔵は小3の冬に父を病気で亡くし、栄養士として働く母と2歳下の弟1人の3人家族の中、男手の最年長として母を支える気概も備える少年である。


 そばかすのあるアキラに対し、武蔵は左頬に大きなホクロが2つあり、黒縁メガネをかけていて、教室の中では両者とも目立たぬことを望んでおり、クラスが一緒になった時は、いつも教室の一角で固まり、休み時間を過ごす2人となっている。


 好きこそものの上手なれで、美術の成績は常に良好な武蔵であるが、母1人の収入で やりくりする家計を思い、特に課外で専門的な教育を受けるでもなく、独学で興味の赴くまま、その筋の理論と技術を磨いて来た。その点はアキラと似るが、一番好きで得意な絵画に関しては、過去 学校代表で作品がコンクールに出され、見事 教育長賞を獲得した確固たる実績を有する。


 しかし 作品を見られ、評価されるのは嬉しいものの、自分自身に注目を向けられるのは どうにも苦手な武蔵であり、そこはアキラと似たり寄ったりのまさ類友るいともなのだ。


   ◇       ◇       ◇


――その武蔵を頼ったのは他でもない、彼が これまで絵を描く為につちかった、人物造形に関する深い知見と優れた技術を拝借はいしゃくする為である。


 ――ヒト型ロボットを作る―と決めた直後から、武蔵の力を借りれば、かなり高品質のものが出来上がる筈―という確信をアキラは抱いていたが、果たして これを製造するに至った事情について、何処どこまで彼に打ち明けるべきかは悩めるところであった。


 はたから見れば、この頃のアキラは、父が謎の失踪をげ、便宜上、その父の代役として、中学生ながら社長の座に就くという、波瀾万丈の渦中にいたのである。


 そんな自分から、――「身体を奪われた神様の為に、『魂』を動力として動くロボットを作るから協力してほしい」――などと真顔まがおで言われたら、流石さすが気心きごころの知れた友とはいえ、正気しょうきを疑ってくるのではないかとあやぶんだアキラは、考えた末、ひとまず架空の設定の元に武蔵の協力を取り付けた。


 アキラが『最後の一葉作戦』と名付けたソレは、【父の捜索願いを出しに行った時 知り合った、闘病中の老婦人(医師)の為、彼女の『推し』である地下アイドルに似せた等身大のフィギュア(電動式)を作り、彼女に会わせて元気づける】といういつわりであった。

 そして このことは、2人だけの秘密にしてほしいと、アキラは武蔵に持ちかけたのである。


 これを聞かされた武蔵は最初、――自分の父も行方不明で大変な時に、この友人は、なんと呑気のんきで人のい(しかも若干じゃっかんイミフな)ことを言い出すのか――と、なかあきれそうになったが、しかし こんな時だからこそ、この友は、自分の好きなモノ作りに没頭する時間を欲しているのかもしれないと思い直し、二つ返事で これを引き受けた。


 そもそも 等身大のフィギュアを作るというのは、武蔵にとっても初めての、魅力的な試みだったのである。


 材料も場所も、製作に必要なものはすべてアキラが用意し、加えて少額ながら工賃も払うというアキラの申し出に、武蔵は最早もはや、喜び勇んで腕をふるうのみであった。


 アキラと同い年である以上、この時 武蔵もまた、高校進学を控えた受験生であったが、2人は共に、運動よりは勉強を得意とする地味目じみめな成績上位組であり、しかも高校入学後はバイトにいそしむことを目論もくろんでいた武蔵の志望校は、アキラと同じく合格安全圏内の公立校であった。


 勿論、油断は大敵だが、それでも他のクラスメイトが塾通いや模擬試験に追われる中、2人は この条件下で、中三の冬の放課後の大部分を、大好きなモノ作りについやすことに夢中になり、結果として この時間が、互いを一番の親友として、より強固に結び付けたのだと言える。


 移動に使う時間を極力減らす為、『フィギュア作り』の場所としては、アキラ1人きりになった四郎丸家のリビングや、仮初かりそめにアキラのものとなった第1プラントの社長室が主に使われた。


 そこに第2プラントの『研究室』から、移動可能な機材を野木に頼んで運んでもらい、急拵きゅうごしらえの一時的いちじてきなものではあったが、その2か所に及ぶ『研究室兼工房』を、アキラは武蔵の為に提供した。これに武蔵は大いに感動し、内藤から社長教育の仕上げも受けねばならないアキラと連絡を取り合っては、足しげく ここに通い、『フィギュア作り』に邁進まいしんすることとなった。



ここまで お読みくださり、誠に ありがとうございます!

貴方様の1PVに、いつも励まされております。

引き続き、次回も お楽しみいただけましたら幸いです。

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