自称・神サマの主張・2
「――どうして お父さんの名前―!!?」
「――何故 社長のことを―!!?」
「―あ、やっぱり そうなんだ、―ほら 僕 言ってる通り『神』だから、ちょっと、色々分かっちゃうことはあるんだ。顔を見れば、その人の名前くらいは だいたい分かる。
―でも この『名前が分かる』能力に限っては、転生繰り返して『人』に馴染んで来た僕ならではの特技だからね、神社に行ってお参りする時は、心の中で自分の住所と名前を ちゃんと名乗らなきゃいけないのはホントだよ。でないと お社に鎮座してる神サマ達には分からないことだから―」
「――その豆知識は一旦脇に置いて下さい―!
――つまり君は、社長の顔を見たと…!?」
「―指輪が あそこに有ったからには、そうだったんだろうけど…、
―父さん やっぱり ここに来たんだ…!
――君の言う通りだよ、『四郎丸広』は僕の父さんで、僕達は父さんを追って ここまで来たんだ…。…父さんが、どうして ここに来たのか、――どんな様子だったか、分かるなら聞かせて―?」
デニムのカバーオールのポケットに仕舞っていた、GPS内蔵の指輪を取り出しながら、アキラは悲痛な面持ちでトキオに訴えた。
「――ヒロシさんね、…結構がっしり体型だけど、それより もっと背が高くて逞しそうな連中に、2人がかりで連れて来られて、両手は縛られてた。僕は分解されてる途中で、僕のこと、気の毒そうに見てくれた。
――その指輪…、ヒロシさんは奪われまいと必死だったけど、僕の実験に立ち会ってた背の高い 銀色の髪の男が、無理やり取って捨てちゃったんだ。―それで たぶん、その後 瑠璃愛と…
――僕の姉さんと一緒に、また どこかに連れて行かれたんだと思う―…。
…ごめん…、僕に分かるのは これくらいで…、」
「―妙ですね―。キミは『神』で、『色々分かることがある』という割には、肝心な2人の行方は分からないんですか―? それに、名前は どうしたんです? 顔を見れば分かるのでしょう? 貴方には―、」
野木は すかさず不可解に思った点を問い質す。
「―そこなんだ…、ヤツら、額に妙な札を貼ってて、僕の『力』が通じなかった。その札は、その後ヒロシさんと瑠璃愛にも貼られたみたいで、―だから 今も、2人の行方を感じ取ることが僕には出来なくて…。―ほんと ごめん―…!! 一番肝心なとこで、役に立てないなんて…、」
「…そんな…、辛いのは 君も同じじゃないか…、」
アキラは首を横に振り、トキオを慰めたが、片や野木は、疑惑の矛先を収めなかった。
「――疑わしい話ですね―。貴方は本当に『神』なんですか―?」
人気の無い、夜明け前の細い山道で、野木はサイドブレーキを引き、エンジンを切ってそこからトキオの追及に専心した。
「――貴方の『身体』が『機械』に変えられたという話は、確かに『神』でなければ成し得ない奇跡かもしれません。――ですが、現に 我々の目の前で『神』を名乗る貴方が見せる振る舞いは、現代科学の見地から、十分説明可能な事象に過ぎません。人工的に火の玉を作り出すことも、スマホから声を聞かせることも、今は無理なく出来ることです―そうは思いませんか? アキラくん―?」
不意に同意を求められたアキラは、戸惑いながらも自分の考えを主張する。
「―それは―…、野木さんは、この子の『魂』に直接 触れなかったから分からないんだよ、この子の『魂』は、本物だと思う―、」
「――ですが、今日 光通信や映像技術の進歩発展は目覚ましいものがありますからね、私やアキラくんが未だ知らないだけで、『魂』と見紛うような、進化を遂げた人工の火の玉が存在しても何ら不思議は有りませんよ―。
――その上で、私が最も疑わしいと感じたのは、社長について語った彼の話です。
それは大いに私達の関心を買い、私達の情に訴えるのに有効でした。
それ故に、巧妙過ぎる――出来過ぎた話とは思いませんか―?」
「―…何が言いたいの? 野木さん…、」
「―つまり彼は、社長を攫った連中の、『内通者』である可能性も有るのでは―?」
「―そんなこと―…!」
「――そうですね、そんな者であってほしくはありませんが…、
彼が本当に『神』であり、私達の心の裡を ある程度 見透かすことが出来るのであれば、或いは彼は、社長が攫われたこととは まるで無関係の存在で、たまたま自分が居た あの場所から 連れ出してもらう為に、私達の気を引くような、それらしい出任せを言っている可能性も また ある筈です。
――それらの疑いを差し挟む余地が有るということを、アキラくんにも ご理解いただきたく申し上げました。
――その上で、彼を どうするかについては、アキラくんの意志を尊重しますよ。
彼の語る言葉が、総て真実という可能性も また ゼロではありませんからね―、」
アキラに背を向け、フロントガラス越しに広がる暗い山道に目を向けたまま、野木は そう言った。
「――僕は、最初の自分の感覚を信じるよ―。――この子は連れて帰って助けます。
…野木さんも、直接 触ってみれば分かるよ、この子は きっと、悪い子じゃないもの、」
「―そうそう、直接 触れ合えば、もっと分かり合えることも あるんだよ~!
…なんか、疑い深いんだね、お兄さん。
―そういう疑いを平気で人に向ける人のほうこそ、
疑われるべき何某かを抱えてるとも聞くけど―?」
アキラの返答に力を得、トキオは そんな反論をする。
「――悪く思わないでください―。
社長の行方が分からなくなった今、この上 得体の知れない怪しい者を、その御子息に気安く近づけるわけにはいかないんです―。
――アキラくんが何と言おうと、私は申し上げた通り、貴方には疑いの目を向けて警戒と監視を怠らないことを どうか ご承知おきくださいね―?」
軽い笑いに紛らせて、野木は そんなことをトキオとアキラの前で宣言した。
「――参るなぁ…、僕は今、自分に出来る精一杯のことをしてるだけなのに、そんな風に疑われるなんて…、―じゃあ僕、これから お兄さんに信じてもらう為にも頑張るかぁ…!」
「―そうですね、差し当たり、『神』として 社長の行方を察知していただければ 大変助かります―、」
「―それは もちろん、僕だって、瑠璃愛と自分の身体を取り戻さなきゃだからね、
―まずは『感念力』の維持と増進をしないとだから、何か『依代』になるものを用意してもらえると助かるなぁ…、」
「―『カンネンリキ』っていうのは―?」
初めて聞く言葉の意味を、アキラは尋ねた。
「――僕が持ってる特別な『力』の1つだよ。修行とか、日光浴で強化できる『力』だけど、今の この状況じゃ、『身体』を使った修行は無理だからね、この『魂』を入れられる何かしらの『依代』に入って、日向ぼっこで高めるしかない感じ?」
「―その『ヨリシロ』って、どういう『モノ』が良いの?」
「―そうだなぁ、僕と『波長』が合う『モノ』なら何でも良いけど、真心こめて作られた、手作りの『モノ』なら だいたいイケるよ、『食べ物』以外でね―!
―キミの その指輪も 中々良さそうなんだけど、出来れば電波の干渉を受けない『モノ』が希望かな?
――この『スマホ』の中も、結構疲れる感じだからさ~、」
「―そうなんだ…、じゃあ、家に帰ったら何か探してみるね、僕の手作りのものなら結構あるから、」
「―ほんとに―? 助かる~!! なんかさ、キミが作った『モノ』なら、何でも『波長』が合いそうな気がするよ、」
ものづくりを こよなく愛するアキラを、トキオの この一言は大層喜ばせた。
こんな時だというのに微笑むアキラを ルームミラー越しに見て、野木は少しばかり毒づく。
「―まったく、本当に上手いこと取り入るものですよね。私には真似できませんよ、」
「―あれ~? もしかして、『羨ましい』って思ってる? 僕と『アキラくん』が急に仲良しになってるから―? ――たしかに お兄さん、面倒くさそうなキャラしてるもんねぇ、ガッチガチに理屈ばっかり並べてさ、もっとフツーに気楽にしてたら良いのに~!」
「―キミのほうこそ、『神』ってものは、もっと重みがあって有難いものだと思ってましたが、違うんですねぇ―、」
ここまで言うと、野木は振り向いて後部座席のアキラを鋭く見据え、
「―ほんとうに、連れて帰るんですか? そいつ―、」
彼にしては ぞんざいな言葉で、再度アキラに確認を求めた。
「―もちろん。―もう決めたことだから、助けるよ、この子を―、」
野木の眼光に たじろぎつつも、アキラは はっきり そう答えた。
「―…しょうがないですねぇ…、」
ため息まじりに そう言うと、野木は無表情で前を向き、エンジンを始動して、夜明けが近付く山道を、再び下り始めた。
◇ ◇ ◇
――父からの信任も厚い 若き傑物の野木と、
出会ったばかりで『神』を名乗る、謎の光の玉のトキオ――。
正直、アキラにも、どちらの言うことを より信ずるべきか未だ分からず、
今は ただ、自分が下した判断が、間違っていないことを祈るのみである。
そんな中、1つだけ、そんなアキラの胸の内で、激しく鳴り響く警鐘があった――。
――それは そう、今、目の前にいる この2人(?)は、決して仲良くはなれないほど、絶望的に相性が良くないのではないか―? という確信に近い予感であった。
ここまでお読みくださり、誠に ありがとうございます。
貴方様の1PVを頂戴できますこと、恐悦至極に存じます。
引き続き、次回も お楽しみいただけましたら幸いです。




