千文字の忖度
前回のあらすじ
二人目の主人公のファリアは千文字姫の呪いの解明のためホワイト邸を訪れる。
イザベラは時間に関する魔法を使ってるようだが――
オルスフェーンには様々なしきたりがある。
例えば、
『自分より高位の貴族が魔法を使っている時
みだりに指摘してはならない』とか。
もちろん、自分や関係者が
危害を加えられる可能性がある場合は別だが。
「何か考え込んでいるわね」
イザベラ様は首を傾げて下から覗き込んでくる。
ただでさえ美しいのに可愛い仕草をしないでほしい。
「貴女が何らかの魔法を使っていることを
指摘すべきか考えていました」
「もう指摘してるじゃない……そうね。
使っているわ。 ファリア・アルテイシア」
彼女は少しだけ眉間に皺を寄せ、申し訳なさそうな顔をした。
「試すような真似をしてごめんなさい。
そう言える貴女が必要なの」
至高の人形細工は思い出したように
室内に設置された応接セットの長椅子に優雅に腰掛けた。
傍らのテーブルには、既にティーセットとお菓子が設置されている。
向かいの長椅子に座ろうとしたら
頬を膨らませながらイザベラ様のすぐ隣をとんとん叩いたので、
恐縮しながら指示された通りに座る。
「よろしい」
ご機嫌に笑って見せたのだろうが、妖艶と言って差し支えなかった。
噂よりお茶目な人なのかもしれない。
「ホワイト家に伝わる秘伝の魔法――時を戻す、とは少し違うの」
四大公爵家にはそれぞれに伝わる強力な魔法がいくつか存在するという。
基本的には秘匿が義務づけられており、
明かして良いのは当主とそれに連なる血統の持ち主のみとなる。
「例えるなら刺繍がいいかしら。
私達は時を戻す度に、ほんの少し世界に影響を与えられるの。
白い布に、一本だけ刺繍の糸を通すみたいに」
イザベラ様の声は震えていた。
手ずから紅茶を淹れられ、差し出される。
「何回魔法を使ったのですか?」
視線が泳ぐ。
「秘密よ」
「つまり今回の私も使い捨てるのですね」
「違うわ!」
身を乗り出す彼女に合わせて、片手で自身を支える。
「貴女は忘れているだけ……同じ、ファリアだわ」
悪魔に乞い願う歌劇のワンシーンのようだった。
彼女以外の全てが少しずつ変わっていく、想像を絶する孤独。
贅沢三昧の生活は、どれほど彼女を救えているだろうか。
「お願い、この先何があっても――私の味方でいて」
彼女はとっくに壊れているように見えた。
「条件が未定義ではお答えできかねます」
不貞腐れて自分で淹れた紅茶を飲み干してしまった。
「ですが――呪いを解くまでの条件付きなら、いいですよ」
「一言一句同じことを言うのね」
いくつかの情報を交換し、夜は更けていった。
こういう真面目なまえがきのほうがいいのかしら~~~~~~~~~~?????
何もわからないのですわ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!




