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千文字悪役令嬢  作者: うたた寧々


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58/64

つかの間の休息

前回のあらすじ


謎の憲兵団に襲われ、ベルとファリアは命からがら逃走し、アリスフィアを頼りました

「で、どうするのよ」


「ベルが起きたら……時間遡行で、今回の調査自体なかったことにするしかないね」


「そうじゃなくて。 もうあんたは罠にハメられているの。 ……今回の危機を乗り越えたって、敵将の首をとらなきゃまた狙われるわよ」


 それは確かに正しい発言だった。さすが北端の防衛を担う武闘派貴族のアリスフィア。


「まあ、そこの眠り姫と出会う前まで戻っちゃえばわからないけど」


 アリスフィアは、クララの凶行も、自分の凶行も覚えていない。今が一番マシな歴史を辿っているということも。――私は首を横に振った。


「それは難しいみたい。イザベラ様は話してくれないけど――」


 公爵令嬢の位を少し借りた。こう言っておけばアリスフィアといえど追求はしづらくなる。


「せっかく敵さんが来てくださってるんだから、まずは全員ぶちのめしちゃったら?」


「ええ!? そんな、危ないんじゃない?」


 アリスフィアは呆れたようにため息をついた。


「この国であんたより強い奴なんていないわよ、多分」


 魔王の娘とはいえ、私は貴族の令嬢として育てられてきた。魔法が使えなかったので戦場に駆り出されることもなく、人を攻撃する決意が中々できなかったのだ。


「敵はイザベラ様を無力化することを真っ先に選んできた……次はいきなり石とかに閉じ込められちゃうかもね。あの方の母親みたいに」


 心がざわつく。


(確かに、今回は意識を失わせるだけだったからなんとかなったけど――)


 地下施設でなすすべもなく閉じ込められ、魔力リソースとして利用されていたリリィ・ホワイトが思い浮かんだ。


「わかった。次はまず殺してから考えるよ――貴女は賢いね、アリスフィア」


「褒めても何も出ないわよ」





 暫く治療し続けると、ベルが目を覚ました。


「……ここは」


「! ベル!」


「アリスフィア……匿ってくれたのね。ありがとう」


 アリスフィアは椅子に腰掛け本を読みながらひらひらを手を振る。


「ベル、時間遡行を……」


「そうね。 ……次は手加減はいらないわ。敵を全員殲滅して。証拠をぶんどってやるわよ」


 アリスフィアがあまりの武闘派っぷりにけらけら笑う。


「イザベラ様は()()()()()()なのね。 評価を改めるわ」


「あら嬉しいわ。 お礼に教えてあげる。 クララ・オードリー嬢はあなたが好きよ」


「ほぇっ」


 およそ侯爵令嬢らしくない間抜けな声が、理知の令嬢の口から漏れた。


「さっさと手籠めにしてしまいなさいな、面倒くさくなる前に」


「ちょ、ちょっと、詳しく! 詳しく教えてくださらないの!?」


 追いすがるアリスフィアを無視して、オーロラの姫様は指を鳴らした。パキンと小気味良い音と共に、あの路地裏に戻る。焦げた脚も綺麗さっぱり元通りだ。


「さっきの、本当なんですか……?」


「本当よ。 いつかのループで、トーマス……彼がアリスフィアにちょっかいを出したことがあってね」


 なんとクララはトーマスを惨殺してしまい、その場でアリスフィアに告白していたという。イザベラ様の時はトーマスを庇ったのに。


 アリスフィアへの気持ちを抑えなければならない絶望も、彼女の暴走に一役買っていたのだろう。


「情報だけは残しておいたから……あとはあの子が踏み出せるかにかかってるわね。それより、頼りにしてるわよ」


 水鎧の魔法で完全に雷光を遮断する真水の膜を展開する。光の屈折率を極限まで0に近くなるよう補助脳に自動計算させた。


「便利なものね」


 少し声はくぐもるが問題はない。


「行きましょう」


 次は絶対にベルに手出しさせない――背後の気配を探りながら、私たちは再び教会へ赴いた。

次回、血祭りですわ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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