つかの間の休息
前回のあらすじ
謎の憲兵団に襲われ、ベルとファリアは命からがら逃走し、アリスフィアを頼りました
「で、どうするのよ」
「ベルが起きたら……時間遡行で、今回の調査自体なかったことにするしかないね」
「そうじゃなくて。 もうあんたは罠にハメられているの。 ……今回の危機を乗り越えたって、敵将の首をとらなきゃまた狙われるわよ」
それは確かに正しい発言だった。さすが北端の防衛を担う武闘派貴族のアリスフィア。
「まあ、そこの眠り姫と出会う前まで戻っちゃえばわからないけど」
アリスフィアは、クララの凶行も、自分の凶行も覚えていない。今が一番マシな歴史を辿っているということも。――私は首を横に振った。
「それは難しいみたい。イザベラ様は話してくれないけど――」
公爵令嬢の位を少し借りた。こう言っておけばアリスフィアといえど追求はしづらくなる。
「せっかく敵さんが来てくださってるんだから、まずは全員ぶちのめしちゃったら?」
「ええ!? そんな、危ないんじゃない?」
アリスフィアは呆れたようにため息をついた。
「この国であんたより強い奴なんていないわよ、多分」
魔王の娘とはいえ、私は貴族の令嬢として育てられてきた。魔法が使えなかったので戦場に駆り出されることもなく、人を攻撃する決意が中々できなかったのだ。
「敵はイザベラ様を無力化することを真っ先に選んできた……次はいきなり石とかに閉じ込められちゃうかもね。あの方の母親みたいに」
心がざわつく。
(確かに、今回は意識を失わせるだけだったからなんとかなったけど――)
地下施設でなすすべもなく閉じ込められ、魔力リソースとして利用されていたリリィ・ホワイトが思い浮かんだ。
「わかった。次はまず殺してから考えるよ――貴女は賢いね、アリスフィア」
「褒めても何も出ないわよ」
◆
暫く治療し続けると、ベルが目を覚ました。
「……ここは」
「! ベル!」
「アリスフィア……匿ってくれたのね。ありがとう」
アリスフィアは椅子に腰掛け本を読みながらひらひらを手を振る。
「ベル、時間遡行を……」
「そうね。 ……次は手加減はいらないわ。敵を全員殲滅して。証拠をぶんどってやるわよ」
アリスフィアがあまりの武闘派っぷりにけらけら笑う。
「イザベラ様は意外とやる方なのね。 評価を改めるわ」
「あら嬉しいわ。 お礼に教えてあげる。 クララ・オードリー嬢はあなたが好きよ」
「ほぇっ」
およそ侯爵令嬢らしくない間抜けな声が、理知の令嬢の口から漏れた。
「さっさと手籠めにしてしまいなさいな、面倒くさくなる前に」
「ちょ、ちょっと、詳しく! 詳しく教えてくださらないの!?」
追いすがるアリスフィアを無視して、オーロラの姫様は指を鳴らした。パキンと小気味良い音と共に、あの路地裏に戻る。焦げた脚も綺麗さっぱり元通りだ。
「さっきの、本当なんですか……?」
「本当よ。 いつかのループで、トーマス……彼がアリスフィアにちょっかいを出したことがあってね」
なんとクララはトーマスを惨殺してしまい、その場でアリスフィアに告白していたという。イザベラ様の時はトーマスを庇ったのに。
アリスフィアへの気持ちを抑えなければならない絶望も、彼女の暴走に一役買っていたのだろう。
「情報だけは残しておいたから……あとはあの子が踏み出せるかにかかってるわね。それより、頼りにしてるわよ」
水鎧の魔法で完全に雷光を遮断する真水の膜を展開する。光の屈折率を極限まで0に近くなるよう補助脳に自動計算させた。
「便利なものね」
少し声はくぐもるが問題はない。
「行きましょう」
次は絶対にベルに手出しさせない――背後の気配を探りながら、私たちは再び教会へ赴いた。
次回、血祭りですわ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!




