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千文字悪役令嬢  作者: うたた寧々


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真夜中の逢瀬

前回のあらすじ


魔界って結構文明的に発展している国になってるみたいです

 魔界学習の第一回が終了し、廊下へ出ると、母と出くわした。ちょうど夫人達のお茶会から帰ってきたところのようだ。


 母は私の姿を一瞬目に止めた。


「やっぱり慣れないわね、その目は」


 苦笑して、すぐに立ち去ってしまった。


(お母様……娘を魔王に奪われたようなものだものね)


 このほんの小さなわだかまりはいつか解消されるのだろうか。それはわからなかったが、今は目の前のことに取り組むしかなかった。


 約束の刻限が近づいている。





(エドワードは呪いの主と通じている テトトラ司教、エル・テペリ教会 5……)


王妃ミネルヴァから託されたメモの内容を確かめるため、イザベラ様とともにエル・テペリ教会へ行く。


家族に話すべきかは正直少し悩んだが、巻き込みたくなかった。

父だって大層な秘密を抱えていたのだ、私もちょっとくらい隠し事をしたっていいだろう。


既に学園に通っている弟ルディに会えなかったのは残念だが。


エル・テペリ教会はアルテイシア邸から馬車で数十分ほどだが、空を飛べばあっという間だ。


今回、カテジナは同行できないと返事が来た。

ケーシィを探してこっそり外出したことで、ご両親にこってり絞られたらしい。

ほぼ学園から出ることを禁じられてしまったそうだ。


私が話をつけようかと伝えたが、「魔族のお姫様の力はもっと別の機会に頼らせてほしい」とのことだった。

カテジナは理由はわからないが魔族を嫌っていることは、なんとなく知っていた。

これ以上私に貸しを作りたくないだろうことも。


(そうか、ベルと二人きりかあ)


 少し浮き足だってしまった。これから死地に向かうかもしれないというのに、私はずいぶん自分の力とあの高潔な公爵令嬢におぼれているようだ。


 あの人は何か理由があって私を陥れてるかもしれない。スピキオの警告は確かに頭にあるはずなのに、それでもいいと思えてしまう。


 補助脳をいくつか展開し、夜の街の中をくるくると舞う。空を飛ぶ魔法はいくつか種類があるが、羽を生やすのは思った以上に大きく筋肉を作らなければならず疲れるし邪魔だった。ほうきに乗るのは簡単だが潜入ミッションには不便。今は超超高難易度魔法の重力や斥力、空気抵抗を利用した魔法が気に入っている。


 お忍びなので一応衣装はたいへんみすぼらしい平服なことだけが残念だ。


 認識阻害魔法、透明化魔法、防音魔法、あらゆる身を隠すための魔法を多数組み合わせても全く身体に負担を感じない。人間の頃からは考えられないほど圧倒的に自由に魔力を扱える。


 前もって打ち合わせた通り、教会付近の花屋と食料品店の間の薄暗い路地に彼女は立っていた。数本だけ月明かりに照らされるオーロラ色の絹糸。間違いない、ベルだ。


 脳裏に父とホワイト公爵のことが過ぎる。彼女は――あれだけ高貴で、国に全てを捧げ死力を尽くす彼女が、元は平民の、公爵になりかわった男の娘――。


 伝えてしまったら、今のベルはこわれてしまうのかもしれない。とりあえずは胸の内にしまっておくことにした。


 一呼吸置き、名前を呼ぶ。


「ベル」


「遅いわよ。 私を待たせるなんていい度胸ね」


「え、10分は早く来たつもりだけど……」


「次から30分前に来なさい」


 白い指先が私を指すので、思わず握ってしまった。寒かったのか、心細かったのか、ベルの指は異様に冷たい。


「ごめんね、次から一人で待たせたりしないから」


 ベルの冷えた手を両手で包み、熱魔法で少しあたためると、ベルは少し慌てた。


「馬鹿ね、冗談よ……透明化を頼めるかしら」


 ベルは生来から目立って当たり前だった人だ。透明化の概念は苦手だった。


「お任せあれ」


 一方私は――魔族のままなら苦手な部類の魔法だったろうが、商家あがりの男爵家の出で、ずっと壁の花として生きてきた。以前は魔力がうまく扱えなかったが、今ではお手の物だ。


 誰にも見つけられない透明な影となって、夜道を走る。


 私たちは、多分お互いしか目に入っていなかった。


 後ろから私たちの存在を嗅ぎつける者達に、気づけなかったのだ。

ちょっとだけ百合いちゃが描けて満足です!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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