帝王学
前回のあらすじ
お父様の告解を聞き終えました!
父の告解を聞き終え、私は寝室へと戻った。
「これから先、ファリア様には数々の試練が襲いかかってくるでしょう。 くれぐれも、軽率な真似はおやめくださいね」
「私の首が落ちても見過ごしていた従者がそれを言うの?」
私の部屋の扉の前で、スピキオは目をぱちくりさせた。
「ああ……貴女の覚醒を早めるには、いたしかたなかったのです」
「都合が良かった、の間違いでしょう」
(……私の知ってるスピキオはもう死んだのか)
戸惑うスピキオが、誰か別の存在のように見えた。ちょっと変わったところもあるけど、優しくていい子だと思っていたのに。
その夜はあまりよく眠れなかった。私はやっぱり、首を落とされ続けた頃の悪夢を見た。
◆
翌日から、スピキオによる魔界学(仮称)入門が始まった。
学園は簡単に休学を許された。そもそも魔王の血族が同じクラスにいることを怖がる生徒だらけだ、行ったところで授業にならなかったろう。
王家のパーティは2周間後。ベルとの約束は今週末。
今は束の間、座学でようやくのんびりした時間を過ごすことができた。
「何でお兄様もいるの?」
「スピキオから誘われたからだけど。 商人は魔族について詳しくて損はないしな」
「そう」
兄はピンクの瞳をこちらに向ける。
「それにしても、結構変わったな。 短い間に――」
まあね、と雑に返事をしながら本から視線は動かさなかった。
「ファリア、恋人でもできた?」
咳き込みそうになるのをこらえて、静かに、堂々と不届き者の兄を見やる。
「できるわけないでしょう。 私は魔王の娘だよ」
兄は朗らかだが飄々とした態度で、気づいたら人を深くまで見抜くところがある。
「そうかなー。 だって前のお前ならこんな前向きに勉強とかしなかったじゃん」
「失敬な。 それなりに勉強家ですぅー!」
ゴシップに関するウケの良いネタについては、の冠詞がつくが。
兄は腕組みをしてまだこちらを伺っている。 やりにくい人だ。
「あァ、イザベラ・ホワイト嬢ですね! やりますねえファリア様!」
スピキオが裏切った。 兄は目をまんまるにしてる。
「あっ、へぇ! あぁそういう! へぇー!」
兄は俗物だ。 絶対食いつくから話したくなかったのに。
「リリィ様に似て大変優秀な魔術師でいらっしゃいます。 魔界としても喜ばしい縁談でしょう。 ……ただ」
スピキオは少し眉をひそめた。
「……リリィ様もでしたが、どーうにもホワイト家の人間はいい匂いがしすぎるんですよねえ。 杞憂なら良いのですが」
私は苦手です、と言って、スピキオは元の座学に戻った。
この時の私は、まだイザベラ様のことを少しも理解できていなかった。
スピキオさん、利益になるのであれば人命より優先する魔族みたいですわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!




