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千文字悪役令嬢  作者: うたた寧々


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52/64

父の告解

前回のあらすじ


父が実はロードライト・ホワイトだと言ってきました。

今私の父は……養父は何と言ったろうか。


「は……?」


ロードライト・ホワイト。

それは国の要たるホワイト家当主の名だ。


「頭がおかしくなったの……?」


「そう思うのも無理はない――だが、本当だ」


父はソファに深く座り直した。


「ホワイト公とは友人だ、と嘘をついても良かったが……これ以上あなたを騙したくはない」


少し長くなるが、と前置きをして、父は語り始めた。





父はホワイト家の嫡子だった。

ホワイト家には他に跡継ぎがおらず、父への期待は重くのしかかっていた。


しかし父は商才はあれど、魔法の才能はさっぱりだった。

魔法は基本的に血統によって受け継がれていくが、稀に突然変異のように全く魔法が使えない者が表れる。

彼らは罵倒語にかけて「魔抜け」と呼ばれていた。


「何度も何度も血の滲むような努力をしたさ……でも指先に火を灯すことすらできないんだ」


よりによって公爵家の嫡子が魔抜けとバレては一大事だ。

そのため、魔法の才能がある者を側に仕えさせることとなった。

それがテイラー・アルテイシア。 先代ホワイト公がその才を認め、平民から引き立てた男だった。


「彼は優秀な男だったよ。 俺が失敗すると、全部巻き戻してなかったことにするんだ」


父は少し瞳を揺らして言った。


「やがて――先代ホワイト公は、俺よりテイラーを可愛がるようになった。 家宝の宝飾品を彼に与えたりしてね」


ずっとほしかった白い馬を先にテイラーに与えたり、

一番眺めの良い部屋をテイラーにあてがったり、

ずっと禁じられていた書斎への入室をテイラーだけ許可したり。


ある日、父はついに先代ホワイト公の扱いに耐えかね、病に伏せってしまう。

心配するテイラーが提案したのは――





「入れ替わり……? でもそんなこと、可能なの?」


「時間遡行魔法の一番恐ろしいところは何か知ってるかい?」


首を横に振る。

そもそも公爵家のほぼ秘伝に近い魔法のことなど、王族でもなければ詳しく聞ける機会はない。


「時間遡行によるあらゆる食い違いを、勝手になだらかに変化したように受け入れさせることだよ。 あの魔法の真の強みは、時間を巻き戻すだけではなく、現実を改変できる点にある」


「つまり、色んな場面で彼が息子だと信じ込ませた……?」


「特に()()()()()()()()()()()()()()()()は馴染みやすくてね……」


ひとつ小さな咳払いをする。

秘密を打ち明けた父はずいぶんと小さく見えた。


「俺は髪の色も目の色もあの男とは違った。 調べたら母方の遠縁の血筋だったみたいなんだがね。 テイラーは……染めたんだか魔法なんだか、ホワイト家らしい色の目と髪を持っていた。 身寄りもなかったしね。 全てが都合が良かった」


父は病気と偽り、社交界から姿を消した。

そして何事もなかったように、ロードライト・ホワイトと名乗るテイラー・アルテイシアが嫡子として成り代わった。


「それ……籍を偽るのは重罪だよね」


「そうだな。 お前はやろうと思えば俺も、ロードライトをも豚箱にぶち込める」


「っ……何で話した!? あまりにも……身勝手すぎる」


()()()()()()()()()()からだよファリア。 ……あいつは俺にはできないことをやろうとしている」


「ホワイト公がやろうとしていることって?」


「それはあなた相手でも言えない。 聞きたきゃ自分で聞くか、その足で突き止めるんだな。 自称ジャーナリストなんだろ?」


それに、と父は付け加える。


「俺はあいつと入れ替わって良かったと思っている。 家族も持てたし……自分の才能を活かせる稼業を見つけられた。 血に縛られる生き方は俺には合ってなかったんだ」


スピキオは何を考えているのかよくわからない。

特に驚いた様子はないので、事情ははじめから知ってたらしかった。


「お母様や……兄さんは知ってるの?」


「母さんだけは知ってる」


「何で……」


「俺は……あなたにとっての人質なんだ。 あなたが原因でオルスフェーンに何かあれば、多分俺は責任を取ることになる」


気づいたら泣いていた。

視界が涙で歪み、目が痛くて仕方なかった。


「だから、あなたが決断を迫られた時、こんなクソ親父さっさと死ねー! と思えるように話したんだが……」


父は恐る恐る、くしゃくしゃに私の頭を撫でた。


ホワイト公は、私が問題を起こした時の責任者の身代わりとして父を使ったのだ。

それはそれは適任だと思う。

さすが偽物とはいえ公爵様だ。


しかし父も自由を得るためにテイラーを利用したと言える。

それに、ホワイト家はアルテイシア家の重要取引先でもあった。

話を聞いて合点がいった。 ホワイト公は罪滅ぼしのためか、商売において融通を効かせてくれていたのだ。


私がこの気のいい家族を壊してまで嘘を告発するなど、できるはずもなかった。

死罪まではいかないけど流刑くらいはなりそうですわ~~~~~~~~

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