父の秘密
前回のあらすじ
お兄さんが帰ってきましたわ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
湯浴みをし、ナイトドレスに着替え、父の書斎へと向かう。
ノックをすると「入ってくれ」とお父様――テイラー・アルテイシアの声がした。
書斎ではスピキオもソファに座って待っていたようだ。
ぴしっと敬礼しているが、クッションがへこんでいる。
使用人だったら考えられないふるまいだ。おそらく彼は――
「ずいぶん楽に過ごしているねスピキオ。 あなたは一体誰?」
「名乗る栄誉を賜り光栄ですファリア様」
いつもの使用人服ではなく、魔界の正装だろう赤い燕尾服に、普段はしないキザな銀の細いフレームの片眼鏡。
くるくるの黒い髪とそばかすが可愛かった少年が、どこか知らない男性の貌をしている。
「私はスピキオ=アイナ=ロンダート。 魔界の宰相補佐を務めております。 オルスフェーン風に言うなら、爵位は侯爵に相当します」
「背が伸びたね。 それが本当の姿ってわけ?」
「護衛のためにお嬢様の評判に傷がついてはまずいですから、多少変装しておりました」
長年の友達を失った気持ちだが、それはまあ仕方ないことなんだろう。
「それで。 どういう理由でお父様はこんな爆弾を抱えるはめになったの?」
スピキオが何か発言しようとしたが、父が片手で制した。
「いい、俺から話したい……」
疑問はたくさんあった。何故人間に魔族の魂を移植する必要があったのか。何故時を止めたまま保管するか、魔界に返すのではだめだったのか。
そもそもホワイト公爵とアルテイシア男爵では身分が違いすぎる。一体どういうつながりがあるのか――。
「どこまで聞いたかは分からないが……お前は魔王、ディアボロ=ヘイズ=ヴァンシュタインの娘だ。
真の名は……ファリア=ヘイズ=ヴァンシュタインになる」
「何故、人間の赤子に私の魂を移植したの?」
「長くなるが、ディアボロ卿は、90年前、たまたまオルスフェーンへ家族で視察にいらしていたようだ。お前は……いや、あなたはまだ3歳、右も左も分からない歳だった」
「ホワイト公の話では、あの方の妻、リリィ嬢の功績により、魔界との摩擦はずいぶん減っていた。 それでも、おそらく魔族との外交を良く思わない人間が……あなたを王太子暗殺の犯人に仕立て上げようとした」
「!」
「今はリリィ嬢の機転でなかったことになっているが、あなたが渡した祝いの酒に毒物が混入されていたらしい」
スピキオがため息をつく。
「実に愚かしい」
「しかし敵は次に、直接貴女の命を狙おうとした。 おそらく正当防衛だとでっち上げでもするつもりだったのでしょう……しかも悪いことに、魔界でも人間との外交を良く思わない反人間派の魔族達の活動が活発になり、魔王も暴動の鎮圧に手を焼くことに……」
「…………」
「あなたはまだか弱く、しかし血統は本物。 色んな勢力があなたを欲しがり、利用したがり、あなたを傷つけたがった」
父はこの上なく神妙な顔をしてため息をついた。
「……一度完全に身を隠す必要があったのです。 魔王は1万年以上を生きると言われるし、90年などほんの誤差だ。 あなたを捨てたわけではない」
「それで、90年後の人間の体に隠したと」
「身許のはっきりした人間は、記録さえ残せばそう悪いことはできない――魔族よりもよほど信頼できると魔王様は理解していました」
スピキオが思い出すように語る。
「当初はこんなに長く預かる予定じゃなかったんだ。 ――ただ、問題が起こった。 魔王が眠り病にかかったんだ」
「眠り病……」
スピキオがすかさず解説を入れる。
「100年前くらいから魔族に稀に起こる病気でね。 一切体内でマナを生成できなくなり、眠るように動かなくなってしまう。 生きてはいるけど、今魔界は結構大変なんだよ。王弟殿が仕切ってくださってるけど……」
「そんな大変な役割を、どうしてお父様が?」
「…………」
父は深く、深く息を吐いた。
天を仰ぐように、祈るように、懺悔をするように次の言葉を紡ぐ。
「俺は、本当はテイラー・アルテイシアではない……ロードライト・ホワイトなんだ」
どういうことなんですの~~~~~~~~~~~!!!!!!!????????????




