噛み合わない会話
前回のあらすじ
ファリアとイザベラは軍事省へ赴くことになりました。
「だから、呪いを解いた方が皆さん嬉しいじゃないですか。 善意ですよ善意」
「それが理解できないと言っている。 魔族が善意なんか理解するわけがないだろう」
私とベルは軍事省が管理する施設の一つ、グリーンヒル邸へ来ていた。
目の前には事情聴取といえば聞こえはいいが、明らかにこちらを尋問してやろうという素振りの憲兵、アケローン・サルドヴァというらしい。階級は准将。短く切りそろえた黒髪のせいもあり年若く見えるが、中々の出世株なのだろう。
背後には有事の際の護衛や補佐官と思しき憲兵が20名ほど控えている。悪役令嬢のふりでしょっちゅう事情聴取をされてきたベルが「多くない?」とぼやいていたので、多分普段の数倍くらい立っているのだろう。
「何故そんなにも魔族を毛嫌いするのですか」
「毛嫌いとかではない。 我々がこれまで何度魔族と対話を試みたか。
君たちは自分に利益があることしか話を聞かない。
魔族の事情聴取には求める利益の必須記入欄があるくらいなんだ」
確かに、魔族にはそういう一面もある。自分に益のある話しかろくに聞かない。私がやった今回の解呪のような、ただの善意での自己犠牲など、到底理解が追いつかない魔族は多いだろう。
「じゃあ……王家からの褒章が目的でいいですよもう」
「そんな出るかどうかも分からないものは利益とは言わないんだ」
「どうしろっていうんですかぁ」
最初はどういう経緯で呪いを解いたか、実験まわりは大幅にカットして伝えていた。
特に時間遡行と魔力倍加のあたりは「そんな超級兵器みたいな真似をやすやすと」と頭を抱えていた。一定以上の威力の兵器を許可を得ず独断で制作する事は、オルスフェーンにおいては違法だ。でも誰も秘宝級の魔法薬の連続的な重複使用なんて珍事を想定していなかったのか、何も制限する法律がない状態だったようだ。
しかし先程からこのアケローン君との押し問答が続いている。最初は面白がっていたベルもいい加減同じような会話の繰り返しに飽きたのか、公爵令嬢なのにあくびを噛み殺しているのを隠さなくなった。
突然、退屈な尋問をノックの音が遮った。
「失礼します。 伝達部所属のミネス伍長です。 アケローン准将」
ミネスと名乗った青年はアケローンに何事か耳打ちをすると、アケローンは軽く舌打ちをした。
「終了だとさ。 ご足労かけましたねお二人とも」
アケローンが苛立たしげに両手を上げ、うんざりだといった口調で言い放つ。私だってうんざりなんだが。
「パーティまで待てないとさ……王妃様がお待ちだ。 迎賓室へ行きなさい。 ミネス、案内してやりなさい」
ぽかんとしてしまった。王妃が会いに来ている……?
「あら、あの万年引きこもり王妃が、珍しいこともあったものね」
ベルの酷い罵倒に反応する前に、私たちは廊下へと追いやられてしまった。
次回何気に王族初登場ですわ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!




